ステマ規制Special②/ステマ規制のシンプルにここが知りたい!を解説する


Special①の前回は過去話題になったステマ騒動についてまとめたnoteを書きました▼


Special②では、ステマ規制の概要と行政側から出されている運用基準の解説をしていきます。


◤このnoteでわかること◢

なぜステマを規制するの?
だれが処分対象になるの?
・どのような表示が
ステマなの?


シンプルに、「ここが知りたい」というところを解説します。

※例によって、細かい例外については触れていません。
また、言い回しも正しさよりも伝わりやすさを重視しています。
全体像としてイメージを掴むために読むものとし個別のケースごとの判断は調べる・専門家を頼る等してください。




ステマを規制する法律

ステマ(ステルスマーケティング)=
一般消費者が事業者の表示であることを判断することが困難である表示

ステマに当たる広告表示を規制するのは景品表示法(以下景表法)という法律です。景表法が規制するのは「景品」と「表示」です。

景表法が規制する3つの不当表示

ステマは表示のことなので、黄色の表示規制の範囲に属します。表示の規制にも3つの種類があります。

(1)品質に対して表示を偽る優良誤認表示
例:エビデンスなく、体感温度がマイナス5度になるインナーと表示する

(2)取引条件に対して表示を偽る有利誤認表示
例:いつ買っても同じ値段なのに、今だけお得!!のように表示する

(3)その他内閣総理大臣が指定したもの
商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあるものとして内閣総理大臣が指定し、告示したもの(=指定告示と呼ばれます)
例:無果汁の清涼飲料水等についての表示・おとり広告

ステマは、(3)の表示に属します。
ステマ規制=景表法上の不当表示の中で、優良誤認でも有利誤認でもない、指定告示された不当表示として規制されます。

優良誤認とステマ規制の違いは何?

そもそも表示の定義が異なります。

(1)優良誤認(2)有利誤認
→誤認される表示

(3)指定告示
→誤認されるおそれがある表示

不当表示という消費者の買い物にとって良くない表示の中でも、(1)(2)は誤認される表示であるのに対し、(3)はあくまで誤認されるかもしれない表示です。

表示の定義に違いがあるがゆえに、違反の罰則にも違いがあります。

(1)優良誤認(2)有利誤認に対する罰則
→措置命令プラス(一定条件下での)課徴金納付命令

(3)指定告示に対する罰則
→措置命令

(1)(2)は課徴金の対象となりますが、(3)は措置命令のみです。


指定告示は不当表示の松竹梅における「梅」


令和4年度に出された措置命令のうち、75%は優良誤認表示に対するものでした。一方の指定告示は5%、処分として力を入れているのは優良誤認のように見えます。ただ今後の景表法改正では確定手続の導入が決まっているため、よりスムーズに処分を行うことが可能になります。

一般消費者によるステマ警察も出てくることが予想されますし、処分されるか否かに関わらず、ステマをしないように努めるのが事業者に求められる対応かと思います。


なぜステマを規制するの?

例えば優良誤認広告の場合、エビデンスに乏しい病気の治癒効果を訴求する広告に騙されて健康食品を購入した場合に、医療機関の受診の機会を損なうなど合理的な選択ができないことが消費者にとって不利益になります。
会社にとっては、適切な競争ができず不公平です。

一方で、PRであることを隠して広告し、そうとは知らずに商品を購入することは消費者に何か不利益があるのでしょうか?


ある表示に対して広告と書かれていれば、それを見た消費者は当然にその表示を広告として捉えます。

「広告だからある程度スゴそうに見せてるよね~」
とフィルターをかけて表示を見ることができます。


フィルター越しの判断


一方で、広告であることが隠されている場合には、誇張や誇大が含まれることを想定せずに表示を見ます。

「忖度抜きに凄いっぽい・・・!」
と思わされ、合理的な選択ができないかもしれません。
自主的かつ合理的な選択ができないことは消費者にとって不利益になるため規制するというのがステマ規制の趣旨です。

VS表現の自由

消費者にとって不利益になる表示を規制する一方で、事業者側は規制されるばかりなのでしょうか?

憲法では表現と自由が保障されており、事業者側にも自由に表現活動を行う自由があるはずです。これについて運用基準では事業者の表示であることが明瞭であるor社会通念上明らかであるものについては対象外としています。

運用基準より▼

・CMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合。

・社会的な立場・職業等(例えば観光大使)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合。

事業者の表示であることが明瞭であるor社会通念上明らかであるものの例



だれが処分対象になるの?

景表法が対象とする「事業者(=広告主)」がステマ規制の処分対象となります。これについては(1)優良誤認(2)有利誤認の場合でも(3)指定告示の場合も違いはありません。

事業者が規制対象なので、例えばインフルエンサーのような第三者は処分対象ではありません。

処分の対象ではないものの、社会的にイメージダウンが避けられないインフルエンサー


処分対象にはならないものの、ステマ騒動で炎上するときに矢面に立つのはインフルエンサーです。
指示によるものとはいえステマをした事実により信頼を損なうことは免れないでしょう。

処分対象でないとしてもステマ規制をしっかり把握し巻き込まれないようにするのが大切だと思います。


どのような表示がステマなの?

どのような表示がステマにあたるのか?ということについては今年3月28日に発表された運用基準によって定められています。

ステマの要件

まず確認したいのが、ステマの要件です。


① 事業者の表示であること
② 事業者の表示であることを判別することが困難であること



単純にステマ該当性をフローにするとこうです

事業者ってどこまで?困難ってどんな状況?

要件①事業者の表示

事業者の表示に該当するパターンは2つあります。

(A)事業者自らが行う表示・・・なりすまし型
(B)事業者が第三者をして行わせる表示・・・利益提供型

(A)は事業者であるにもかかわらず、そうでない第三者かのように装っておこなう表示です。

(B)は代表的な例としてインフルエンサーに商品の紹介などを依頼して、おこなわせる表示です。


(A)なりすまし型のPOINT
・「事業者」には事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示も含まれる。
◤一社員のSNSアカウントであっても規制対象になる場合がある◢

 例:販売や開発に係る役員、管理職、担当チームの一員等


(B)利益提供型のPOINT
・内容の決定について事業者が関与していない表示は対象外
◤基本的には、内容の指示がなければ対象外◢

例:ECサイトに出店する事業者の商品を購入する第三者が、自主的な意思でECサイトのレビュー機能を通じて、商品レビューを行う場合

※第三者と事業者の関係性によっては対象になる場合もあるので、一律OKではないことにはご留意ください!


・金銭の報酬が発生してなくても対象になる
無料でサービスを受けた・商品を提供してもらったで場合も対象となる◢

金銭的な報酬があることは、ステマの要件ではありません。
商品提供やエステのサービスを受けるなどでも対象になります。


要件②事業者の表示であることを判別することが困難であること

①の事業者の表示に該当する場合、次の要件である②の事業者の表示であることを判別することが困難かどうかの判断はどのようにするのかというと…

一般消費者目線で、事業者の表示であることが明瞭となっているか?第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断することになります。

事業者の表示であることを隠している場合は、当然明瞭になっているとは言えませんがこの他にも不明瞭な方法で事業者の表示であることを記載している例として以下の例のようなものがあります。


よ~~~~く見ないとわかりません


ステマの具体例

具体例として運用基準に載っている例を解説します。

具体的なNG事例:ステマに当たる場合

・事業者が第三者に依頼して、#PRと付けさせずにSNSに自らの商品などを紹介する表示をさせる
→事業者の表示だが、事業者の表示であることが明瞭ではなく、判別するのは困難なのでステマになる可能性がある


・事業者が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、 自らの競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、 低い評価を表示させる
→事業者の表示だが、他の事業者(第三者)に依頼し表示させており、事業者の表示と判別するのは困難なのでステマになる可能性がある



具体的なOK事例:ステマに当たらない場合


・放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示をする
→事業者の表示であることが明らかなのでステマではない

・事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示をする
→事業者の表示であることが明らかなのでステマではない

・「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」等のワードで表示をする
→不明瞭な方法による表示でなければ、事業者の表示であることが判別できるのでステマではない

・ 「A社から商品の提供を受けて投稿している」等の文で表示をする
→不明瞭な方法による表示でなければ、事業者の表示であることが判別できるのでステマではない



まとめ

運用基準ではステマの例示がされているものの、すべてが明らかになっているとも言いづらく、より実務的にどのように気を付けていけばいいのかを検討するときには業界ガイドラインが参考になります。

WOMJガイドライン
WOMマーケティング協議会から出されているガイドラインです。

※WOMマーケティング協議会は、クチコミマーケティング業界の健全なる育成と啓発をミッションとして活動する民間団体です。


最後に、ステマ規制の基となる景表法についてもっと知りたい方におすすめのnoteを置いておきます。

景表法の基本や違反の罰則について書いてあるnote▼


品質のウソ、優良誤認表示を理解するためのnote▼

取引条件のウソ、有利誤認表示を理解するためのnote▼


措置命令事例について書いてあるnote▼


消費者からの注目度も高いステマ規制、規制開始は10月1日からですが、規制対象となる投稿などは10月1日以前のものでも対象です。

早めの対策を要します。
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対応のための相談がしたい方は、こちらまで・・・!

ひらさこ


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