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チームワークの大切さ(記憶に残っている撮影エピソード15 「dancyu」編集部)

 僕が仕事で大事にしていることはふたつあります。ひとつは被写体と向き合い、その日のベストを撮影する事。もうひとつはチームワークを大切にする事です。雑誌やウェブの仕事は、現場を仕切る編集者さんがいて、インタビューをするライターさんがいて、写真を撮るカメラマンである僕がいる。舞台のビジュアル撮影などになるとこれにアートディレクターさんや舞台の制作進行の担当者さんが加わります。これが広告の撮影になると広告代理店のクリエイティブチームや営業チーム、制作会社のスタッフが加わるので登場人物は一気に増えます。また、写真集や海外での長期撮影になると、被写体の方、被写体のヘアメイクさんやスタイリストさんやマネージャーさんとも距離が近くなるのでチームワークが必要になって来ます。

 現場の空気は、その場にいる人たちの想いやその人自身の雰囲気で作られます。その仕事に対してなんの想いもない人がいたり、何かの理由でイライラしている人が現場にいると現場の空気は淀んでしまいます。みんな自然と「あの人はどうして元気がないんだろう。やる気がないのかな?見るからにイライラしているなあ。」と気になります。そういう空気は被写体にも伝わります。だから被写体に影響しそうなネガティブな要素があればいろんな方法を使って、出来るだけそれを無くすように心掛けています。逆に自分自身が落ち込んでいて元気がない時もあります。機嫌良く現場に行ったのに理不尽な扱いをされて急にイライラしちゃうこともあります。そういう時こそどれだけ自分をコントロールして気持ちの良い現場の雰囲気をつくれるか。これは本当に難しくて、たくさんの失敗を重ねながらいまだ学んでいることです。

 またチームワークでいうと、インタビューより撮影が先にある場合は撮影で被写体のテンションを上げて、そのまま被写体が気持ちよくインタビューに臨めるように心掛けています。人の心の変化は本当にほんのすこしの事で良くもなるし悪くもなります。それがうまくいけば写真も文章も良くなるので、結果自分たちの仕事がより多くの人をハッピーに出来ると信じています。

 2014年に「pen」という雑誌で「dancyu」編集部の撮影現場に潜入!という撮影がありました。僕が「pen」のカメラマンとして、「dancyu」編集部の編集者さんやカメラマンさん、料理家の方の仕事風景を撮りに行くという内容でした。撮影現場の料理スタジオに行くと、すでにdanchu編集部のスタッフのみなさんはテキパキと働いていました。「ソーセージのおいしい焼き方 大実験」という企画で、油はひく?ひくなら何油?ソーセージに切り目は入れる?入れない?など78パターンもの組み合わせを試し、それを丁寧に撮影していくという内容でした。考えるだけでも大変なこの企画をチームdanchuのみなさんはとても和やかに良い雰囲気でそれぞれがやるべきことをしていました。ミシュラン三つ星のレストランの撮影や取材ならまだしも、市販のソーセージの焼き方にここまでの情熱を捧げることが出来る凄さ。「dancyu」という人気雑誌の秘密を見た気がしました。仕事を超えている何かがここの現場にはありました。

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自分自身の仕事を振り返ると、大変な現場であればあるほどチームワークで乗り切って最高の仕事を共有出来た仲間とは、別の現場で偶然会ってもお互い会えたことに嬉しくなって自然と笑顔になります。「あの時は大変だったけど、楽しかったよね〜。」と言葉は交わさなくてもその笑顔だけで共有出来ます。仕事はお金を稼ぐという目的が第一にありますが、それだけじゃなくて人生の良い思い出と良い仕事仲間を作れる最高の場所でもあると思います。僕はフリーランスのカメラマンだからこそ、仕事現場での一期一会の出会いをこれからも大切にしていきたいです。


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