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マイメロディ派VSクロミ派

もしかしたら禁断のテーマなのかも知れない。

世の中ではかねてよりきのこの山派とたけのこの里派による「きのこたけのこ戦争」が度々起こっており、また他にもそば派とうどん派による戦いや、古くはビートルズ派とローリングストーンズ派による戦いなどもよく論じられてきた。

ちなみに僕はきのこたけのこで言えばきのこ派、そばうどんで言えばうどん派、ビートルズストーンズで言えばストーンズ派である。まあきのこたけのこに関しては味というか持つ時にきのこの方がチョコの部分に手がつかずに済むからだが。

このように世の中では様々なジャンルにおいて拮抗した2大勢力による派閥争いが日夜行われている。

そんな中でサンリオはと言えば、“みんななかよく”という理念を掲げているにも関わらず、ファンの間でよく比較され論争の的になる2大勢力が存在する。


マイメロディ派とクロミ派である。


これは2005年にアニメ『おねがいマイメロディ』でクロミ様というキャラクターが登場し人気が爆発してから、対照的な個性を持ったライバル関係としてよく論じられてきたテーマである。しかもそれがきのこたけのこのように皆が面白半分で乗っかっているようなギャグ的なノリではなく、少々シビアな空気漂うテーマでもあるのだ。

事の発端はやはり『おねがいマイメロディ』である。このアニメの狂ったノリは時にひどくバイオレンスであったりサイコパスであったりするので、マイメロディ嬢とクロミ様の攻防の中でも明らかに“やりすぎ”感漂うシーンがよく見受けられるのだ。
そして基本的には多くの人がマイメロディ嬢の度を超えた天然っぷりとたまに見せる黒さに引き、それに振り回されることの多いクロミ様に対して同情の気持ちを抱くパターンが多いように思う。ただそれは元々正統派の可愛いキャラクターとしてキャリアを歩んできたマイメロディ嬢と、悪役として登場したクロミ様のイメージとのギャップから来る印象だと思う。冷静に見ればクロミ様もマイメロディ嬢に対してまあまあのことはしている。

勿論上記の攻防は全てギャグとして描かれているのだが、それを割とシリアスに受け止めてしまう人というのが一定数いて、その一定数の人達によるどちらかが好きでどちらかは嫌いという感情が上のような派閥を生み、VS構造に発展してしまうということなのだろう。事実僕も過去にサンリオファンの人に「クロミちゃんが好きってことはマイメロちゃんは嫌いなんですか?」という極端な質問をされたことがあるくらいだ。
まあ実際そういう人が出てきてしまうのも仕方がないくらいのダイナミックな表現をしているのが『おねがい』であり、反面それこそが未だに語り継がれる要素の一つにもなっているのだが。

そしてこの人気対決、基本的には常にマイメロディ嬢に軍配が上がっている。そもそもの知名度の差も大きいだろうが、毎年のキャラクター大賞では常に上位を保つクロミ様でもマイメロディ嬢は毎度その更に上をいっているのだ。

では僕自身は一体どっち派なのかと言うと、note含め僕のSNSを日頃見てくれている人はわかることだと思う。


どっちも派である。


テメークロミ派だろ嘘つけこの貧血野郎と思うかも知れないが、マイメロディ派かクロミ派かと聞かれたら僕はそう答える。

勿論一番好きなのはクロミ様である。だが「クロミ派」ではない。やはりこの「派」という言葉を使ってしまうとどうにも強い思想を感じさせ、まるでマイメロディ嬢のことは嫌いかのようなニュアンスに聞こえてしまう。僕はクロミ様が一番好きだがマイメロディ嬢も好きなのだ。

実際僕以外にもどっちも派は多く、その中でも僕と同じく『おねがい』を見た上でどっちも好きだという人もまた多い。

やはりあれほどダイナミックに攻防を繰り広げたこの二人とはいえ、上で書いた通りある程度お互い様であること。それ以上にスタッフの愛を同じくらい注がれていたように思えたこと。何より根っこの部分ではお互い友達として想い合っていること。そのあたりを理解しているとマイメロディ嬢を嫌いにはちょっとなれない。
ただまあキャラクターとしてのあの露骨なまでのあざとさは賛否両論分かれて当然だとは思うが(勿論僕はギャグとして面白く見れた)。

しかし何よりも僕にとって二人共が好きである大きな理由は、やはりお互いがお互いを強く引き立て合う存在であるということだ。

主役キャラとして明るいピンク色を基調としたマイメロディ嬢に対し、悪役として黒を基調としたクロミ様。のんびりとマイペースなマイメロディ嬢に対しサバサバとしたクロミ様。光と闇のように対照的な二人。そんなお互いにないものを持っている二人だからこそより強く引き立て合っていると思うのである。
サンリオキャラは数いれど、これほどお互いの魅力を引き立たせているコンビは他にいない。1足す1が3にも4にもなっている。だからこそ僕は一番好きなクロミ様の魅力をこれほど引き立たせてくれているマイメロディ嬢も好きなのだ(普通に単体としても好きだけどね)。


ところで少し話は変わるが、遥か時代を遡り1960年代、若者の間ではビートルズ派とローリングストーンズ派で分かれていた。

ビートルズとストーンズ、どちらもロックを語る上で絶対に外せないレジェンド中のレジェンドである。

人気の拮抗したこの2大ロックバンドはそれぞれタイプの異なった個性を待ちながらも、ライバルでありお互い評価もし合う奇妙な距離感を保っていた。

そして僕は個人的にこの2大バンドの持つ個性と関係性は『おねがい』でのマイメロディ嬢とクロミ様に大きく共通するものを感じている。

まず世間一般的なイメージではビートルズは正統派の優等生、ストーンズは破天荒な不良といったイメージを持たれている。教科書にも載るほどのキャッチーな楽曲を生み出してきたビートルズと、ドラッグなどでスキャンダラスなイメージの強いストーンズというのが外面的な印象だからである。これはそのまま表面上のマイメロディ嬢とクロミ様のイメージと共通する(クロミ様はドラッグなどやらんがな)。
しかしその音楽性を覗いてみると、ビートルズに関しては一部のキャッチーな楽曲がある一方で、現代の多様化が進むロックのあらゆるジャンルの源流はビートルズにあると言われるほど前衛的で狂ったことを当時からやっており、対してストーンズはと言うとあくまで古典(ロックの源流であるブルース)に忠実な音楽をひたすらに展開していた。そう考えると世間一般的なビートルズ=真面目でストーンズ=不良というイメージは実は逆で、音楽的にはビートルズの方が不良でストーンズの方が真面目というのが実情なのである。
『おねがい』でも始めは正義の味方ポジションのマイメロディ嬢と悪役のクロミ様という構図だが、見ていくと実はぶっ飛んでいるのはマイメロディ嬢でクロミ様の方が常識人という本質が見えてくる(あくまで『おねがい』での話)。
そしてことあるごとに比較されては常にビートルズ、マイメロディ嬢に一歩上を行かれていたストーンズとクロミ様は境遇までも似通っている。

ちなみに僕はストーンズ派だが、やはりビートルズも好きである。


話を戻すが、そもそもなぜ今このテーマを扱おうと思ったのかと言うと、昨今『おねがい』に対する注目度が再び上がってきているように思えたからだ。しかも今はコロナウイルスのこともあり自宅で過ごさなければいけない人も多く、僕も前の記事で勧めたこともあり『おねがい』の視聴者がまた増えたとしたら、初めて観る人達の中でもしかしたら新たにマイメロディ派VSクロミ派の構図が出来上がってしまうかも知れないとちょっと思ったというのがある。勿論皆がギャグのノリでやれるようなら全然いいと思うが。


サンリオ史に残る名作『おねがいマイメロディ』は、細かいことを気にせず全体のダイナミックな狂いっぷりを楽しむのが一番である。

気が向いたらお願い致します。サンリオ資金にさせていただきます。