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20240324 いつか降る雪の中で

▼さて、参加していた公演が無事に終わって(雨には降られたものの)そのまま撤収作業に雪崩込み、作業が終わってから銭湯に行ったり買い出しをして夜食をつくったり翌日の朝ごはんの準備などをして、今は横浜・日ノ出町の佐藤信さんの劇場に宿泊してこの記事を書いている。

▼東京で演劇をやっていても、同じ座組の人と寝食を共にするような機会はほとんどない。良くも悪くも東京では終電でみんな自分の家に帰ることができるから、一緒に食事なんかは行く機会があったとしても一緒に泊まったり銭湯へ行ったり、食事をつくったりするような機会はあまりない。

▼自分の劇団でも泊まり込みで公演や稽古をしたことは数えるほどしかない。かつて赤羽にあった十色庵というアトリエで泊まり込みで稽古をしたことがあって、稽古が終わり銭湯から帰ってきた夜中に夜食でインスタントラーメンをつくってみんなで食べた。スタジオジブリでアニメーションの製作が佳境を迎えた時にスタッフの方が総出で夜通し作業を進めるとき、宮崎駿さんがつくったラーメンを真似てつくったラーメンの味を、そのときの稽古そのものよりもよく覚えていたりする。

▼もともとずっと自分で野外劇をやってみたいと思っていたから、直前の時期にこうして野外劇の現場を経験することができたのは運がよかった。昨年の夏にも一本野外劇に挑戦する機会があり、今回の現場と合わせると次の5月の公演で合計3本の野外劇に参加することになる。野外劇と一口にいっても季節と場所がちがえばぜんぜん別物で、雨が降ったり雷が鳴ったり、暑かったり寒かったりで宮沢賢治ではないけれどもひとりの俳優としてはいつもオロオロしてばかりである。

▼と同時に、俳優としてこれまで一生懸命いろいろ勉強をして研鑽を積んできたのはこういう日々のためなのかもなという気持も、ちょっと大げさだけれどあったりする。何のために鍛えて、何のために学んできたのか。劇場を出て、街の中や森の中、あるいは雨や雷鳴のなかにこそ演劇を展開するためだったのではないか(誰に頼まれて、という気もしないではないが)。劇場という安全な箱庭の中だけではなく、ままならない自然の中に立ってことばを届けるためにもしかしたらこれまで演劇をやってきたのではないか。そうしていつか、降りしきる真っ白な雪の中で野外劇を私たちは、きっとやるのだろうなと思う。

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