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20240901 ポテンヒットのためのフルスイング

「どんなときでもバットを振り抜いているからこそ、野手の間を抜けてヒットになるんだ」みたいな台詞が野球漫画にあった。だからこそいつでも当てに行くスイングではなくて、思い切り振り抜く本気のフルスイングが大事、という高校野球的なメンタリティを感じさせる場面だった。

▼これが演劇だと「中途半端にしゅん巡して甘噛みするくらいならぜんぜん別のことを言え」ということになるだろうか。(「中途半端に甘噛みするくらいなら舌を噛みきって◯ね」くらいのことでもいい気がするが、それではあまりにも暴力的すぎる。台詞を噛むくらいなら◯ね、という演出家もいるけれども。)

▼台詞なんかどれだけ長いものでも間違えず、噛まずに言えるに越したことはないけれども、往々にして人は噛む生き物である。舞台を観ていて「ああ、みんなすごく噛んでるな」という上演もたまにある。誰かが噛むと他の誰かも噛む。一度噛むと上演中にその事について反省し始めるから、それに気を取られて次々と他のところでも噛む、という連鎖反応が起きたりするからライブは難しいなぁと思う。

▼台詞を噛む、というのとはすこし違うけれども、俳優が台詞をある一定以上の強さで喋ろうとするとあるときからすべての台詞がフッと「ガブガブガブ!」にしか聞こえなくなることがあって難儀した。俳優本人は頑張って台詞を言おうとしているものの、なんかもう全身全霊で強く言おうとしすぎているので「ガブガブガブ!!」にしか聞こえない。

▼台詞の文字や言葉の意味内容などではなくもう「ガブガブガブ!!」である。「それもうなに言ってんだかわかんねえよ!!」と怒られても仕方のない演技ではあるものの、そうまでしてその台詞を強く喋りたいと考えた俳優の熱意、みたいなものはたとえそれがあらぬ方向へ迸った熱情だとしても一定の価値を認められるのかしら、と思う。

▼どれだけ時間をかけてリハーサルをしていても、台本通りに喋りたい気持ちもやまやまでも、人間である以上台詞を間違えるときは間違える。今日これほどにまでにAIの技術が発達してくると、そうして間違えたり噛んだりすることが人間の生の表現であることを担保してくれるような側面があったりもする。たとえ間違ってどんな結果になるとしても、フルスイングで台詞を言い抜くことで浮かぶ瀬もあってくれ、と思ったりする。

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平泳ぎ本店/Hiraoyogi Co. 第8回公演
戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
※雨天決行
於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
https://g.co/kgs/Ksc4VNJ
【公演詳細】

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