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togetterで拙著『ウクライナ・ファンブック』関連ツイートのまとめを作った理由

2021年年末、ロシア連邦がウクライナ国内外(国境沿いと被占領下ウクライナ領クリミア・ドンバス)に軍を集結させ、ウクライナや西側諸国を威圧しながら、NATO側に最後通牒かのようにNATO東方不拡大(ウクライナ非加盟)の法的保証などの到底受け入れられない要求を提示しており、すわ対ウクライナ再侵攻あるかと国際社会がいろめき立っています。これを受け、現在、世界中で様々なメディアや専門家が色々な見方・予想を伝えており、それは日本語情報空間も例外ではありません。

その中で、今私が思い出しているのは、2014年にロシアがウクライナ南部クリミアを武力で占領し、同国東部ドンバスに軍事介入した時の日本の報道・言論の状況です。当時も、現在同様、ロシアのメディアが偽情報を大規模に拡散し、真偽検証(ファクトチェック)のないままにその内容を伝える報道機関や「ロシア専門家」が多く見られました。加えて、日本では、ウクライナ一般に関する知識が広範囲で不足しており、それにより露宇情勢の背景を考える際に誤解が生じやすくなり、ロシア発の偽情報・印象操作を見破れない場面も多くあったと記憶しています。

現在2021年の日本語情報空間を見ると、私は、日本の報道機関や専門家は2014年時点よりロシア発の情報をかなり警戒しながら見るようになったと思っています。これは、過去7、8年の間に、様々な分析、専門家や団体の取り組み(例えばEUvs偽情報ベリングキャット)や優れた分析(今年読んだ本では元日経新聞記者の古川英治著『破壊戦』が面白かったです)などを通じて、ロシア発偽情報の問題点、メカニズム、その傾向が解明されてきたことが大きな理由ではないかと思います。これは間違いなく良い傾向でしょう。

同時に、私は、日本におけるウクライナ一般に関する知識の不足は2014年時点とさほど変わっていないように思っています。例えば、今日も引き続き、「ウクライナは、西部が親欧米のウクライナ語・ギリシャカトリック世界、東部が親露のロシア語・正教世界」「西はもともとポーランド領、東やクリミアはもともとロシア領」「ウクライナはレーニンが作った/1991年に誕生した若い/人工的な国」などといった、ロシアによるウクライナという国の存在やウクライナ情勢を軽視させることを目的とした、誤りだらけかつ極端に単純化されたプロパガンダ的ナラティブの拡散が続いており、それを日本の一部の「ロシア専門家」がそのまま日本語で広めている場面が頻繁に見られます。そして、その結果、8年目に入っているロシア・ウクライナ紛争(クリミア占領、ドンバス紛争)の詳細についても、誤解が散見される状況が続いています。

しかし、ウクライナの実態はロシア発単純化ナラティブよりはるかに複雑です。このロシア・ナラティブに対して適切な疑問を抱き、現在のロシア・ウクライナ紛争を正しく理解できるようになるには、その前提となるウクライナに対する適切な知識を持つことが重要だと私は思っています。私は、2020年2月に出版した『ウクライナ・ファンブック』(パブリブ)を執筆していた時に、単にウクライナのことを知ってもらいたい、という思い以外に、そのような問題意識も持っていました。特に、同書後半の言語、民族、宗教、文化、歴史関連のページは、前述の「誤りだらけのロシア・ナラティブ」の問題点を理解する一助になると自負しております。

そこで、今回、『ウクライナ・ファンブック』をまだ読んだことのない方向けに、本著がどのような本かを改めて紹介するために、ツイッターのツイートを誰でもまとめられるサイトtogetterを使って、関連ツイートをまとめてみました。前述の問題点を直接説明するまとめではないのですが、『ウクライナ・ファンブック』がどのような本かを理解する助けにはなると思います。

私は、現在のロシア・ウクライナ武力紛争の理解には、ロシアを理解するだけでなく、ウクライナを理解することも同様に重要だと思っています。日本にてウクライナに関心を持つ方がさらに増え、日本語空間におけるロシア発偽情報への耐性が強まることを期待しています。以下togetterへのリンクです。

平野高志著『ウクライナ・ファンブック』(パブリブ)関連ツイートまとめ

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