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円安で製造業の国内回帰が加速するか!?

安川電機が新工場を国内に新設

産業用機器の安川電機が新工場を国内に新設するというニュースがありました。

1990年代以降、日本の製造業は中国を中心とした海外展開を進めてきました。
私の地元でも大手家電メーカーが工場を閉鎖し、地域経済に大きな影を落とした時期がありました。企業としては海外展開をすることでより収益性を高めることができたわけですが、多くの雇用を抱える製造業の海外展開は日本経済を全体を考えると悪影響も大きいです。
しかしここ数年、製造業の国内工場新設のニュースを目にする機会が増えてきました。

アイリスオーヤマも一部製品の生産拠点を中国から日本に回帰させることが決まっていますし、ルネサスエレクトロニクスも2014年に閉鎖した甲府工場の生産を2024年から再開すると発表しています。


国内回帰の要因①内外コスト差の縮小

最近は円安が進んだことで、製造業の国内回帰が進んでいるような印象がありますが、円安局面になる前からその動きは出てきていました。
国内回帰の要因はいくつかありますが、まず一つは国内と海外の生産コストの差が近づいてきたことです。かつては中国・東南アジアの人件費は日本と比較してはるかに低く、メリットが大きかったのですが近年では日本の人件費が伸び悩むなか、海外の人件費はドンドン上がっています。さらにスマートファクトリー化・製造業のDX化が進み、かつてと比べて圧倒的に少ない人数で運営が可能です。省人化が進んだことで、一人当たりの人件費の差も全体のコストに与える影響が少なくなりました。更に地産地消を進めることで物流費の削減にも繋がります。
前述のアイリスオーヤマでは、中国から国内に生産を移すことで約2割のコスト削減を見込んでいます。

国内回帰の要因②サプライチェーンの強靭化

もう一つ大きな要因はサプライチェーンの強靭化です。2010年代後半の米中貿易摩擦、2020年に始まった新型コロナウイルスのパンデミック、2022年のロシアによるウクライナ侵攻などこの5年ほどで起きた出来事で日本企業のサプライチェーンの脆弱性が露呈しました。
現在も出荷制限が続いている医薬品がありますが、理由の一つはロックダウンで海外からの原薬が入ってこないことがあります。後発薬の原材料の海外依存度は60%と高く経済安全保障の観点からも結構リスクが高いですね。
サプライチェーンの脆弱性を解決させるために、政府も「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を出して国内生産を支援しています。


課題は国内産業集積の衰退

このように製造業の国内回帰が注目されていますが、現実的にはそんなに簡単ではない部分もあります。例えば現在の日本では中国のような産業集積の厚みはありません。長年の製造業の海外展開により、国内では人材・技術・インフラが大きく衰退しています。かつて、製造業のお客様で中国工場の業務を一部国内に戻そうとした際、その製品のメッキを国内で同じ品質でできる企業を見つけることができませんでした。
日本の製造業の技術は世界的最高と言われていたのはとうの昔のことであり、中国でやっていたことをそのまま国内で出来るという状況ではありません。

24年ぶりの円安は製造業の国内回帰の好機

モノ作りは日本経済の強みの原点とも言えるものだと思います。物価も賃金も上がらず、相対的に日本の経済はドンドン弱くなっており“安いニッポン”と日本経済新聞に特集を組まれるほどの国になってしまいました。
しかし、多くの国を見てきたなかで改めて日本ほどサービス水準が高く、作業が正確で、衛生的で、モラルの高い国はないと思います。この日本人の気質を持ってすれば再びモノ作り大国ニッポンの復活ができるのではないでしょうか。
現在は24年ぶりとも言われる円安水準です。以前と比べてデメリットも注目されていますが、これを好機と捉え日本の製造業復活のきっかけになって欲しいものです。


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