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平野啓一郎|小説『マチネの終わりに』後編

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平野啓一郎のロングセラー恋愛小説『マチネの終わりに』全編公開!たった三度出会った人が、誰よりも深く愛した人だった―― 天才ギタリスト・蒔野聡史、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十… もっと読む
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#音楽

5月19日放送 TOKYO FM『LOVE CONNECTION』での、平野啓一郎のインタビュー内容が掲載…

5月19日に放送された、TOKYO FM『LOVE CONNECTION』内のコーナー「STARBUCKS MUSIC BARISTA 」…

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『マチネの終わりに』第六章(55)

 洋子は、音楽に、自分に代わって時間を費やしてもらいたくて、iPodをスピーカーに繋いで…

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『マチネの終わりに』第六章(66)

 自分はそして、いつまで、このバグダッドでの生活に適応してしまったままのからだを生き続け…

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『マチネの終わりに』第六章(67)

 伊王島のホテルまで車で行く道すがら、洋子の母は、運転しながら唐突にこう言った。 「リチ…

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『マチネの終わりに』第六章(68)

 必ずしも返事は期待していなかった。ただ、自分の人生を前に進めるためには、そうした手続き…

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『マチネの終わりに』第六章(69)

「いいの、今更どうこう言うつもりはないの。ただ、お母さんとそんな約束をしておきながら、出…

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『マチネの終わりに』第六章(70)

 洋子は、首を横に振って苦笑すると、母の目を見つめた。そして、 「わかってるから。――ありがとう。お母さんこそ、体に気をつけて。」  と言って席を立つと、覆い被さるようにして、座ったままの母を抱擁した。  母が小さくなった気がした。無意識だったが、子供の頃には、二人きりのアパートで、同じようにして、よく母から抱きしめられたのだった。  洋子は、予定を変更して、もう一泊、長崎の実家に留まることにした。  ジャリーラを慈しむ気持ちが、一種の責任感として、彼女の精神を保た

『マチネの終わりに』第六章(71)

 最後のメールを読み返して、彼女の心が、既に自分からは離れてしまっているのを感じた。  …

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『マチネの終わりに』第六章(72)

 長崎に彼女に会いに行くことも一度ならず考えた。実家の場所まではわからなかったが、宿泊予…

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『マチネの終わりに』第六章(73)/第七章(1)

 二週間経ったある日の午後、蒔野の許には、洋子から一通のメールが届いた。極短い文面で、リ…

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『マチネの終わりに』第七章(2)

 テレビやラジオでは、時折姿を見かけることがあり、特に重病を患っているということでもなさ…

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『マチネの終わりに』第七章(3)

 五人の審査員中、蒔野は最年少で、必ずしも発言が多かったわけではなかったが、彼のその指摘…

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『マチネの終わりに』第七章へ

こんにちは。 早いもので、3月に始まった『マチネの終わりに』の連載も、半年が過ぎました。…

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『マチネの終わりに』第七章(4)

「それで、何の香水なんだって彼女を振り返って、ふと前を向いたらさ、目の前をおじさんが一人、歩いてるんだよ。――その人だったんだよ! 匂いの元は。」  息を呑んで話に引き込まれていた一同は、ほとんど困惑したように失笑して顔を見合わせた。 「何の変哲もない、ものすごくリアリティのあるおじさんだったな、中肉中背の。髪は黒々としてるんだけど、てっぺんだけ禿げてて。改めて意識して嗅いでみると、やっぱり、その人なんだよ。妙にいい匂いで、見た目とのギャップが激しくて。何なのかな?」