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AIが変える未来の仕事

2013年に英国オックスフォード大学が「未来の雇用(The Future of Employment)」を公表し、日本国内でも雑誌で取り上げられるなど大きな注目を浴びた。

それから10年たって社会は変わっただろうか?

自動運転車も実証が進み、将来は運転手がいらなくなるのではという話も実感をもって語られるようになった。チャットボットや自動音声技術、翻訳、画像作成など、続々と革新的な技術が出てきている。

2045年にAIが人間並みの能力を持つシンギュラリティが実現するのではないかといわれているが、画像を自動で生成するStable Diffusion、対話型で情報を提供してくれるChatGPT、高い精度で翻訳してくれるDeepLの出現で、部分的には既に人の能力を大きく上回るところもある。

そうした中、AIによって雇用が失われるのではないかという話をたまに聞く。しかし、まとまった整理も展望もなく、漠然と将来大丈夫かなと不安を持っている人も多い。

先週から朝日新聞で連載が始まった「わたしが日本を出た理由」のような国内外の雇用環境変化もインパクトがあるが、それは別にして、AIが雇用に与える影響ってどのようなものなのだろうか。

米国が欧州と共同で作成し2022年12月5日に公表した「THE IMPACT OF ARTIFICIAL INTELLIGENCE ON THE FUTURE OF WORKFORCES IN THE EUROPEAN UNION AND THE UNITED STATES OF AMERICA」が最近の各種調査結果をうまく整理していて秀逸である。

ルーチンワークだけでなく、もっと複雑なミドルレンジの仕事もAIに変わられるリスクがあるとか、でも新しい職業も出てくるよと整理されている。医療研究所の技術者、化学エンジニア、発電所の運転員、製造における検査や品質に関する仕事等が影響を受けやすいとされている。また、職業の変化よりもタスクに注目し、仕事の中身も変わるとともに、ワークスペースの改革や転職が進むことにも言及している。
ユースケースとして人材採用や倉庫業が紹介されていて、人材管理にスキルやオープンバッチのようなLER(Learning and Employment Records)が使われる可能性があることや、倉庫やロジスティックスでは生産性の高いアルゴリズムを使った管理が導入される可能性があることなどを示している。具体的な変化のイメージもつかみやすい。

50ページを超えるドキュメントだが、最近読んだレポートの中で、かなり面白いものである。

「未来の雇用」は順位だけが注目されたが、実は、あの分析には米国労働省が支援しているO’netというサイトのデータが使われている。各職種のスキル定義があるので、各スキルにAIが与える影響を数値化し総合評価点を計算している。

今回のレポートの中でも基礎データの重要性に触れるところが節々に出てくる。新しい職業の発見には雇用統計のデータが使えるのではないかというのは面白い、その他職業を見ていると、そこに新しい職業のヒントがあるようだ。特許データを使ったり様々な取り組みが行われている。

余芸でAIや人材も担当しているが、やっぱり、データって大事だなと思わせるレポートであった。


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