東京都同情塔
九段理江さんの東京都同情塔を読んだ
あらすじ
感想メモ
一度読んで、SF的だと思った。
書評でエンタメ的な要素と言っていたのはこの面だろうか
表題の塔は、とてもきれいな刑務所であり言葉を奪うことで犯罪者を無害化する、行き過ぎた監視社会を象徴する存在だ。
平和的なディストピアにおいて、言論統制は必須だよね
対して主人公の建築家の女性は言葉に強いこだわりを持っている。
「シンパシータワートウキョウ」の名前が気に食わないし、「AIBuild」には
「この文盲」なんて罵倒しているくらいだ。(この罵倒というかニヒルなのは読んでて気持ちがいい)
息苦しいことこの上ないはず。
毎日のトレーニングで体形を維持し続けるくらいにストイックな一方で、深夜の新宿御苑に侵入してみたりするシーンは、社会から逸脱したい気持ちが溢れていると思う
そんな彼女が塔を建てることを決意したのが青年のネーミングセンスだった
「何、君は今そんなの思いついちゃうわけ?」
青年の影響はあまりにも大きい。
そう、SF的に読んでしまったけど、文芸的にまだ追えていない気がする。アンビルドのテーマを読むには何か足りてない
…もう一回読みます
感想外の感想
さて、この小説の舞台は建築されなかったものが建築された世界だった。
そして、主人公の印象的な言葉として(二回も出てくる)ドローイングと建築は全く違うもので、建築しかしたくないとも述べていた
この主人公は作者ではないが、いくつか作者の言葉を代弁させているらしい。
インタビューで生成AIの使い方を聞かれた際に触れていた。
(生成AIに自分の存在を問わせる件は実際にやったとしか思えない。やりたいよね)
それを踏まえて、「塔」という名前を付けて発売されているこの本は、作者が建てた建築のはずだ
作者は未来にこの塔がどう使われると見えていたんだろうか。
作者が眺める中で、一読者として出たり入ったりすることしかできない