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とある田舎の図書館が、全国ニュースに載った日

私が高校生の時、富山県の話です。

田舎の図書館が、日本一小さい村の小さな図書館が、ある日、突如全国のニュースにのりました。

越中舟橋駅という、図書館と駅が一体となっていて、小さい喫茶店も横にあって、こじんまりとした、でも田舎の割にオシャレじゃんな駅です。時間帯によっては、無人駅です。
パークアンドライド?とかで駅に車を停めて、富山市街地へ仕事に行くことを推進していました。

えー、私はさらにど田舎の無人駅木造駅舎から、電柱まで木でできた古い駅から、富山街中の高校に通わせてもらっていましたので、だからというわけではありませんが、途中で通るキレイな越中舟橋駅は羨まし…ゴホンゴホン。

間違えました。わたしの僻みではなく図書館の話です。


とっっってもいい図書館です。
小学校とかの頃から親に連れてもらい、家族で本を借りに来ていました。明るくて、絵本も読みやすくて、職員さんが優しくて、駐車場がある。電車でも来れる。温泉も近くにあったような。

高校は電車で通っていたので、途中駅の越中舟橋駅で降りて、舟橋図書館で自習したり、本を読んだりよく利用していたんです。
二階の閲覧席もキレイで、居心地も良くて、良いところです。壁際の1〜2人席が壁を向いていて、集中できるので特に気に入っていました。

そんなある日、音楽を聴きながらいつも通り、そのお気に入りの席で宿題を解いていました。比較的空いている日でした。
あー疲れたなー
と席を立ってふらふら外を見てみると、パトカーが何台も停まってる。どうしたんだろ…と思い、一階に降りると職員の方々もなんだかバタバタドタバタ。
まぁ大したことなさそうだったので、また続きの宿題をして暗くなったら帰りました。


その日の夜だったでしょうか、次の日だったでしょうか。

「おい。舟橋図書館にカモシカ来たらしいぞ」と父が言うんですね。
「んなわけないじゃん。私居たけどふつうだったよ」と思春期私はめんどくさそうに返すんですね。なわけあるかいって。カモシカが図書館に来るなんて、おとぎ話の世界じゃないですか。

http://www.asahi.com/eco/TKY200902200056.html
ニュースを見てびっくり!
父が言ったことは本当だったんです!

カモシカは、真昼間、親子連れもいる中、普通に正面自動ドアをウィーンと開けて入ってきたそうです。土足禁止だったと思うので、カモシカさんは土足だったでしょうからそれはよくないですね。
暴れることもなくお縄となりました。

私はその場に居たのに、まったく気づかなかった。鈍感すぎる!全国放送に載るくらいすごいことだったのに!ワイドショーだかで有名な方が「いや〜和みますね〜」「カモシカも本を読みたかったんでしょうか」なんておっしゃったとか。
とても悔しい思いをしました。今でも悔しいです。とても悔しいです。

近年、舟橋村では、子供の割合が増えているようで、働きやすく、子育てしやすく、とても良い街づくりをされている村だと思います。

だがしかし、全国ニュースに載るのはカモシッカ!!

全国ニュースに載らなくても、子供に家族に優しい街づくり!!


地域おこし、街づくりって、話題性があるかが我々一般人からは見えがちですが、実際には違うんだよなーと思います。

カモシカが話題作りになり、村に若い人が来る「きっかけ」にはなったかもしれません。
でも、一番は、その村がどんなビジョンをもっているのか、住民や役場が一体となって取り組んでいるのか、どんな施策がありどんな層が住み良いのか、どんな仕事がしやすいのか、という『魅力』が無ければいけません。

何かきっかけがあれば、その『魅力』が浮き出てくる。でも根本的には地道にコツコツが不可欠です。


農業も、同じで、よく話題になるもの、例えば珍しい野菜とか、芸能人が食べたとか、面白い人がいるとか、ありますが、「消費される一過性のものになってはいけない」と強く思います。
話題性も魅力の一つとしながらも、地味だけど当たり前に食べ物や暮らしを作る、そんな農業のあり方が最大の『魅力』なんじゃないかな、と。

だから、私は農家であることが誇りです。


さて、絵本「かもしか図書館」が数限定で作られたそうです。村の予算がつかなくて、延び延びになり数量限定という、田舎らしくて好ましいですね。購入は出来ませんが、舟橋図書館に行けば読めると思います。
とうとう、実話が童話になっちゃいました。一度捕まえられたカモシカさんは、山に帰されて今でも元気に暮らしてましたとさ。(たぶん)

おしまい。

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