散歩
目的地の定まらない散歩が苦手だった。
どこを目指したらいいのか、どの道を歩けばいいのか、見当がつかないと心もとなくなってしまう。そういう自分がつまらなく思えてしまっていた。仮に「ここまで行こう」と自分で設定できればいいのだけれど、それができない日はいつもすぐに引き返して自宅へ戻っていた。だけれど、だからこそ、散歩には憧れていた。
好きな本の著者プロフィールに「念入りな散歩」という言葉があるのを見て、それは一体どういう体験なんだろうと考えたりもした。念入りに散歩することができるその人とわたしには何か決定的な差があるのではないかと、思わずにはいられなかった。
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