母のロングコート
正月、実家を訪れていた。うちの実家はその造りや立地のせいか、全体がひどく冷える。宮崎はコートなしで過ごせる暖かい日が続いているというのに、実家に入った途端、上着なしでは過ごせないような寒さを感じ、母の上着を借りた。それは、私が幼い頃から母が着ていた茶色の薄手のコートで、当時、母に連れられて誰かと会うと、その裾に隠れてもじもじと人見知りしていたことや、その頃私が母に対して抱いていた気持ちを鮮やかに思い出させた。
ここから先は
1,864字
¥ 150
いただいたサポート費はよい文章を書くために使わせていただきます!