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図解!原価計算基準三七~三九【販売費および一般管理費要素の分類基準他】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準三七より『第五節 販売費および一般管理費の計算』に入っていき、基準三九まで続きます。まず基準三七の規定を見てみます。

基準三七 販売費および一般管理費要素の分類基準

販売費および一般管理費の要素を分類する基準は、次のようである。
(一)  形態別分類
販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、給料、賃金、消耗品費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、租税公課、運賃、保管料、旅費交通費、通信費、広告料等にこれを分類する。
(二)  機能別分類
販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、広告宣伝費、出荷運送費、倉庫費、掛売集金費、販売調査費、販売事務費、企画費、技術研究費、経理費、重役室費等にこれを分類する。
この分類にさいしては、当該機能について発生したことが直接的に認識される要素を、は握して集計する。たとえば広告宣伝費には、広告宣伝係員の給料、賞与手当、見本費、広告設備減価償却費、新聞雑誌広告料、その他の広告料、通信費等が集計される。
(三)  直接費と間接費
販売費および一般管理費の要素は、販売品種等の区別に関連して、これを直接費と間接費とに分類する。
(四)  固定費と変動費
(五)  管理可能費と管理不能費

三七 販売費および一般管理費要素の分類基準

 今まで、製品の製造にかかった費用である「製造原価」を中心に見てきましたが、製品の販売にかかった費用である「販売費」、会社全体の管理活動にかかった費用である「一般管理費」も原価に含まれ、全て合わせたものを「総原価」と呼ばれます。
 そこで基準三七では「販売費・一般管理費」について見ていきましょう。下図①のうち右側黄色部分をご参照ください。なお全部原価計算と直接原価計算の固定費調整のお話は別途行います。

図①:右側黄色部分の「販売費・一般管理費」について見ていきましょう。

 そして基準三七では「販売費・一般管理費」の分類基準を規定していますが、基準『八 製造原価要素の分類基準』と同様になります。

(一)  形態別分類

 形態別分類とは、原価を見た目や種類によって分類する基準の事です。物量を貨幣価値に置き換えて会計帳簿に反映させることで、会社の状態と成果が可視化されます。

図②:形態別分類とは、原価を見た目や種類によって分類する基準の事です。

(二)  機能別分類

 機能別分類とは、原価が経営上のどのような機能(働き)のために消費されたか、あるいは原価が経営上どのような役割で消費されたのか、という観点による分類です。ちなみに機能とは、ある物が本来備えている働き、全体を構成する個々の部分が果たしている固有の役割のことです。ざっくり説明しますといわば「会社上の部門や組織」ということになります。

図③:原価が会社組織上、どのような機能や役割で消費されたのか探求することも重要です。

(三)  製品との関連における分類(直接費と間接費)

 販売費および一般管理費の要素は、販売品種等の区別に関連して、これを直接費と間接費とに分類します。

(四)  操業度との関連における分類(固定費と変動費)

 操業度との関連における分類とは、原価要素を操業度との関係で変動費と固定費に分類する方法です。操業度とは、生産設備、従業員数、販売体制など経営をおこなう能力を一定としたとき、その利用度のことです。操業度の基準として、機械時間、生産量、直接作業時間、販売数量、売上高などが用いられます。
 ここで、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素のことで、また固定費とは、操業度の増減にかかわらず大きく変化しない原価要素のことです。下図④では設備部門を具体例に「操業度との関連における分類」をイラスト図解してみました。

図④:設備部門の視点で「操業度との関連における分類」をイラスト図解してみました。

(五)  原価の管理可能性に基づく分類(管理可能費と管理不能費)

 原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生を管理者が管理しうるかどうかにより、管理可能費と管理不能費に分類することで、この分類は予算管理や価格交渉と密接に関係します。
 部長や課長といった原価部門責任者には、与えられた仕事を行ううえでの責任と権限が与えられますが、仕事を達成するにはお金がかかります。この支出金額につき科目別に使える上限が予算によって決められているということです。社外にも、価格交渉の点で同様のことが言えます。意外にも下図⑦のように設備費が価格交渉されるケースが多いので、原価の管理可能性に基づく分類が重要になってきたりします。

図⑤:発注者によって設備費が管理され、価格交渉の材料になったります。

 特に上図⑤は、近年の「値上げ価格交渉」にも大きく関わってきますので、関係者の方は「原価計算基準なんて古臭い!」と吐き捨てずに、きちんと向き合っていただきたいなぁ~と感じています。

基準三八 販売費および一般管理費の計算

 こちらも基準『一〇 費目別計算における原価要素の分類』と同様の規定になります。

販売費および一般管理費は、原則として、形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、さらに必要に応じ機能別分類を加味して分類し、一定期間の発生額を計算する。その計算は、製造原価の費目別計算に準ずる。

三八 販売費および一般管理費の計算

基準三九 販売費および一般管理費

 そして基準三九では、業種が限られますが「技術研究費」について規定しています。

新製品又は新技術の開拓等の費用であって企業全般に関するものは、必要ある場合には、販売費および一般管理費と区別し別個の項目として記載することができる。

三九 技術研究費

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>


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