掌編小説「人類の課題」
一.
ある人は提案しました。
「こうするのは如何でしょう」
独裁者は言いました。
「この国の首を刎ねよ」
ある人は捕まる前に
他国へ亡命しました。
二.
ある人は亡命先で意見を述べました。
「こうするのは如何ですか」
代表者は丁寧に答えてくれました。
「そうしたいのは山々なんだがね」
「なかなか変えられないんだよ」
補佐役が言葉を付け加えます。
「大衆がパニックを起こす」
「仕事を無くす人が出てくる」
ある人は山へ引きこもってしまいました。
のちにその人は仙人と呼ばれたそうです。
三.
個人なら合理的手段を選べるが、人が集まり組織が形成されると既存のルールを変更する事は非常に難しくなる。「当たり前」の事が出来なくなってしまう。
この「当たり前」を実行できる組織のリーダーが時代の寵児として世界を席巻していった。日本だと戦国三英傑が有名だろう。組織を統率することは誰にでもできることではない。血筋や才能だけではどうにもならない。多くの人の心を掴まなければ変化は決して生まれない。
独裁者は自由にルールを作ったり変えたりすることが出来る。しかし独裁者は過ちに気づけない。チェック機能が働かないので間違った方向へ突き進んでしまう。身近な例だとワンマン社長がまさにそうだ。時代に愛された人は莫大な富を得るが、成功体験が足を引っ張り、時代の変化についていけず、最後は没落してしまう。奢れる者は久しからず、とはよく言ったものである。
当たり前をどうすれば実行できるのか。人は何度も同じ過ちを繰り返している。集団生活を営む人間たちの「永遠の課題」である。
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