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フードスコーレ・校長の話 No.2 フードロスの学校をふりかえる。

先日、食の教養を学んでいく場「foodskole(フードスコーレ)」をリリースしました。これまで約2年間やってきた「フードロスの学校」をリニューアルした形になります。

「フードロスの学校」とは何だったのか、どんなきっかけで始めたのか。これを読んでもらうことで、これからの「フードスコーレ」のこともわかりやすくなるかなと思い、書いておきたいと思います。

フードロスの学校について。

上のリンクは、当時のフードロスの学校について案内したページです。読んでいただけるとわかりますが、その名の通り「フードロス」をメインに学ぶ場です。2018年に開校して、東京世田谷にある東京農業大学の教室をメイン会場にして続けてきました。

ひとりひとりが「自前のフードロス論」を持つこと。これこそが、フードロスの学校の目指すところでした。この「自前のフードロス論」を持つという考えは、いまも変わっていなくて、食と環境を生活に取り入れていくときには、必要なことだと思っています。

自前のフードロス論
フードロスに対して、だれかの意見に「右にならえ」ではなく、知識と価値観をもって、じぶんで思考して表現してできるオリジナルの考え。

登壇するさまざまな専門家、研究者の話を聞いて、「フードロス」との距離を縮める。そうして、フードロスに関するじぶんのオリジナルな考えをつくっていく場でした。

「フードロスの学校」これまでの歩み
<第1期> 2018年
第1回/10月6日(土)
「木造建築×フードロス」網野禎昭(法政大学デザイン工学部 教授)
第2回/11月25日(日)
「生産現場×フードロス」舩木翔平(農家)
第3回/12月2日(日)
「里山文化×フードロス」宮林茂幸(東京農業大学地域環境科学部 教授)

<第2期>2019年
第1回/6月16日(日)
「フードロスを俯瞰する」上岡美保(東京農業大学国際食料情報学部教授)
第2回/7月28日(日)
「自治体、事業者、消費者のためのフードロスマネジメント」金藤正直(法政大学人間環境学部教授)
第3回/9月7日(土)
「木材やエネルギーから循環とは何かを考える」網野禎昭(法政大学デザイン工学部 教授)
第4回/10月5日(土)
「日本人の暮らしとフードロス」宮林茂幸(東京農業大学地域環境科学部 教授)
第5回/10月27日(日)
「ビジネスと幸福とフードロス」川越一磨(株式会社コークッキング 代表取締役CEO)
第6回/11月23日(日)
「自前のフードロス論を持つために」平井巧(株式会社honshoku 代表)、特別ゲスト:佐藤一成(株式会社良品計画 ソーシャルグッド事業部ローカルグッド担当)

見てもらうとわかるように、いろいろな立場で活躍されている方たちに来ていただき、たのしいお話をしていただきました。受講されたみなさんはここで、フードロスを改善していくような「答え」を教えてもらうわけではなく、いわば「クエスチョン」をたくさん持ち帰るわけです。すぐには役に立たず、いつ役に立つかはわからないけど、でも頭の引き出しの中にしまっておいて、いつかそれを引っ張り出せる。そんな「ヒント」を手に入れてもらうことを体験してもらいました。

まとめると、フードロスの学校で置いた学び方はこちらです。

・講師が「答え」を教えるのではなく、じぶんで見つける。
・自前のフードロス論をもつための「手段」を手にいれる。

フードロスの学校をはじめようと思ったきっかけ。

2013年に、料理を通してフードロスについて考える「サルベージ・パーティ」をスタート。フードロス関連の講演の依頼もいただくようになって。じぶんでフードロスについて調べる機会が増えてくると、あるとき、調べることに行き詰まりました。

「食べものを捨てるのはもったいない」という感情論だけで見られていたり、「100 か0か」の二項対立で話されていたり。これは良くないなぁ、と感じ始めたんです。白と黒だけじゃなくてグレーな選択肢も必要なんじゃないか。対立構造だとお互いが喧嘩するだけで、思考が発展しないんです。

できればフードロスの専門家ではなくて、一見関係なさそうな、でも何かの研究者やプロから話を聞いて、教養を身につけていくことをしたいなと思ったんです。そうすれば、フードロスとじぶんとの距離が測れるようになって、じぶんのスタンスが持てるようになるのでは。これはまさに「distance(距離)」の言葉そのものです。

こんな考えをいろんな人に話して、興味を持ってくれた「合同会社流域共創研究所だんどり」の杉野さんや矢野さん、ライターの地主さんたちと形にしていったのが、「フードロスの学校」です。

フードロスの学校で感じたこと。

「フードロスの学校」をやってきた2年間。いま思うと、やってよかったと思えることばかりです。じぶんは運営する側の立場ですが、「じぶんも受講者です」とはじめから宣言していました。じぶんが話を聞きたい人をゲストに呼んで、学びたいことをテーマにしていました。もちろん、いまこんな話が聞けると世の中の役に立ちそうだな、ということは大前提でしたけど。

いいことばかりではなくて、もうすこし掘り下げていかないとな、と思うようになったのは、「フードロスをどうにかすることは本当にすばらしいことなのか?」ということです。もちろんフードロスがないに越したことはないんだけど、何にも優先されることなのか、というとちょっと違うんじゃないか。フードロスだけにフォーカスするんじゃなくて、もっとぐわっと広げて、資源循環、農、水産、食文化、環境、経済、料理、消費、などをテーマにして食を学んでいく方が、食と環境を考えていくにはよさそうだぞ。そんな風に思って始めたのが、「フードロスの学校」のリニューアルです。

そうして「foodskole(フードスコーレ)」は、生まれました。

「自前のフードロス論をもつ」をはじめとした、フードロスの学校で大切にしていた考え方や物差しは、フードスコーレにも大切に引き継いでいます。

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