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鳥の劇場で見た「イワンのばか」の感想。

鳥の劇場で演劇「イワンのばか」を見た。
タイトルは知っていたけど、原作を読んだことはなかった。
話の概要も知らないまま足を運んだ。

感想

一幕はコミカルでテンポもよく楽しく見ていた。休憩時間にスキップなんてしてしまったけど ( 私が )、二幕になってシリアスさが顔を出す。

ひどい仕打ちに、老婆の『どうして…』というセリフが虚しく響く。
一幕の楽しい雰囲気との落差で、悲惨さが一層強くなる。

みんな「イワンはばかだ」と口を揃えていたけど、最初から最後までイワンの言動は一貫していた。はっきりノーという場面もあり、意志の強さもみえた。ただ何も知らない、考えのない者とは思えなかった。その凄さをじわじわと感じる。

「祈り」が一つ大事なアクトだった。
さいきん 移植版の Mother 2 をプレイして、それを思い出した。
あと、さいきん、喪に服すことがあり、「祈り」に近い何かがわかった気がする。信仰心というのはよく分からないままだけど、一連の流れを行うことで「整理をする」ということなのかもしれないと思った。その行動で何かが得られるわけではなく、自分の心を整理するためのきっかけというか、時間や作法なのかもしれない。

戦争の描写もあり、且つロシア文学作品ということもあり、どうしてもウクライナの軍事侵攻が脳裏にチラついた。

『何者でもない大統領が、戦争をすることで偉大な大統領になるのだ』
うろ覚えのセリフ

アフタートークで、この時期にこの作品の上演に至ったのは偶然だったこと、「イワンのばか」の初演は 2017 年で、きっかけは 3.11 があったことなどを聞き、もっと長い時間軸でいろんなことが頭を巡った。

イワンの生活は「手と脚と背中を使って働くこと」「必要としていれば何者とも支え合う。けど、ご飯を食べられるのは手がゴツゴツしている人」という揺るぎない主張に、現代の「生き方」みたいものを考えさせられる。

大きな衝撃だったはずなのに、不思議なことに日本人は 3.11 のことを忘れてしまっているんじゃないか。 
アフタートーク

9.11、3.11、コロナ、そして 2022年のウクライナの軍事侵攻。
頭では何度も考える。このままではいけないと。

後半の印象が強く、暗めの感想になってしまったけど、全体を通して笑いの場面が多く、役者さんと客席の一体感もあって楽しかった。
舞台美術の転換と光の演出で、場面場面で雰囲気がガラッと変わる。いくつも空間があるようで、世界にグッと惹き込まれた。
毎年、この時期の演目は親子で楽しめるよう組まれているらしいので、ぜひお子さんにも見てほしい。



因果応報、公正世界仮説、などという言葉があるけど、良いことにも悪いことにも、理由はないことが多いのかもしれないと思った。
あったとしても、自分の中に沸く『どうして』をキレイに解消できることは少ない気がする。

現実に対してどう行動するか。事実をどう積み重ねるか。ただそれだけなのかもしれないと、思った。

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