新しい藪の中へ
私は20年ぐらい海外に目を向けて作品を作ってきました。それは私が作りたい作風が日本ではあまりウケないのと、ヨーロッパあたりで作られているアート系の映画が好きだからです。
さらに海外の映画祭を意識して作ってきたので、必然的に海外に目線を向けて作品を作ることになります。海外と言っても広いんですが、主にヨーロッパの映画祭に向けて作品を作ってきました。
とにかく、仕事ではない「作品」を作る時には100%海外を意識して作ってきました。もはやその思考の仕方がクセとして染み付いてしまったとも言えます。
海外を意識して作る時の大きな特徴としては、出来るだけ映像文法を駆使して、セリフに頼らない構成にすることと、海外の人にも分かる普遍性のあるテーマにすることです。この2つは特に意識して来ました。
私が完璧だと思っている理想形は、セリフがゼロで構成されている作品です。セリフ無しで、映像と音楽や音響で語らしめる作品こそ最高だなと思っています。
私は元々デザイナーでもあるので、実は映像の中に字幕が入るのが本当に嫌なんです。世の中の大多数のシネマトグラファーも、自分が撮った映像の上に大きなフォントで文字が乗ることが嫌だと思っているはずです。デリケートなカラーグレーディングをした映像の上に、白黒のパキッとした情報が入ってくる訳です。普通に考えたらあり得ないです。アートへの侮辱です。
ゼラチンシルバープリントで紙焼きした写真の上に、ユポ紙のシールで文字を貼るような感じですよ。写真家はペンタ67の角でシールを貼った人間を殴って殺すでしょう。そして、アートの法廷では無罪でしょう。
話は逸れましたが、アートとして完成させたいという欲求からも、セリフの無い作品が一番の理想形なんです。
そんなこんなで20年ほど作ってきましたが、ちょっと待てよと。
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