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御室の神事

 今回もお越しいただきありがとうございます。
 最近の定形となってしまいましたが、2023年5月15日月曜日からの個展作品のご紹介です。
 展示と作品詳細は文末に掲載しておりますので、そちらもご覧ください。

 後戸の萩組ノ座に坐す少女。強く気高くかつ可憐に後戸の生命を司ります。
 菊から生まれた少女は仏様の光背のように牡丹と紫陽花を背後に展開し、漆黒の空間で存在感を放っています。

萩組ノ座

 萩組ノ座とは私の地元である諏訪の諏訪大社の神事に登場する神官(大祝)が座す場所のことです。御室神事では年末から元旦の間に竪穴式住居のような一段地面を掘った室にて行われるようです。そこでは蛇に見立てた縄の身体を用いた儀式が執り行われたようですが詳細は分かっていません。
 この冬の寒い時期に室に籠るという神事は、昨年の個展でテーマにしました。春の花が咲き乱れる生命の誕生の時期に向けてエネルギーを蓄える大切な期間として冬を捉え、冬のように静かな後戸の空間に佇む少女像を描きました。
 本作の少女も同様に御室に籠もった大祝のように人々がより栄え、安寧が続くことを願っているのです。

苦労した構図

 さて、本作はだいぶ苦労した作品です。その分絵の具の厚みも増し少女の表情も何層も重なった絵の具の層のよう深いものになったと思います。
 何が一番大変だったかというと、腕を広げた少女のシルエットです。ただ広げているだけでは単純に意味が分かりません。また、構図としても画面の流れを遮ってしまい絵の動きが窮屈になってしまいます。その点を解決するために、バラの雨を降らせました。お花が降るのは後戸のエネルギーに満ちた雰囲気を表出ためというのがありますが、それ以上に画面の構成をよりかっこよくするための装置だったりします。

 私にとって作品を作ることでいちばん重要なのは画面構成です。どれだけ心地の良い流れを生み出せるかという事です。このことを最優先してモチーフも選定しています。ですから、作品の持つ意味は作品が完成してから見えてきます。正直なところもともと表したい意味のあるものであれば、絵じゃなくても文章で良いと思ってしまうのです。今回の個展の他の作品でもこの世界の残余を表現したいと述べました。そのためには、思考によらずもっと感覚的というか直感的なものが非常に重要になってきます。感覚的というと至極適当な響きにも聞こえてしまうものですが、人間もひとつの構造を持って生じた世界の構成要素です。そこから生じるものはたとえ現在科学的に解明されていないものだとしても十分に信頼できるものだと思うのです。

 というわけで、このように作品を解説する一方で、なにか言葉によらない、あるいは言葉を含めてもですが、言葉にならない何かを感じていただけると嬉しです。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。
  それでは今後の記事も宜しくお願い致します。

【作品情報】

タイトル:御室で平らかなる世界を祈る少女 (後戸 _a_ 萩組ノ座)
サイズ:M10 号(530*333mm)
技法:パネルに油彩
価格:330,000 円(300,000 円 + 税)

【展示情報】

『平林孝央個展 “世界”の繭』

会期:2023.5.15(月)〜21(日) ※会期中無休
時間:11:00〜19:00  ※最終日は16:00まで
会場: 銀座月光荘・画室Ⅰ 〒104-0061東京都中央区銀座8-7-2 地下1階


購入など作品に関するお問い合わせは下記画廊までお願い致します。
◆ギャラリーサイト(すみれ画廊)
http://gallerysumire.squarespace.com/jp/shop/takahiro-hirabayashi2023

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