起業の科学を読んでみて

1.この本を手に取ったきっかけ

新卒で入社し半年ほど働いたが、性格的にサラリーマンが向いていないことに気付き、自分で事業を起こしていきたいと思い起業の教科書としてこの本を手に取った。当時は読んでも訳がわからず断念したが、そこから1年たった今なら読めるだろうともう一度読んでみることにした。

2.内容要約

成功に至るプロセスを理解する

この本が目指すゴールはPMF(プロダクト・マーケット・フィット=顧客が熱狂的に欲しがるものを作れる状態)を達成することに置いている。
PMFを達成する手順は以下の4ステップである
①アイデアがスタートアップとして本当にふさわしいかを検証する。
②スタートアップが抱える課題と顧客が抱える課題が一致するかを確認する(CPF=カスタマー・プロブレム・フィット)。
③どういう機能や仕様の解決策を実現すれば顧客が快適だ、便利だと喜ぶかをプロトタイプ(試作品)を作って磨き上げていく(PSF=プロブレム・ソリューション・フィット)。
④①〜③で検証してきた課題仮説、解決策の仮説を試せる最小限の機能を持った製品を販売し、市場の反応を調べて改善するサイクルを繰り返す(MVP=ミニマム・バイアブル・プロダクト)。テスト製品で顧客の反応を探りながら顧客のフィードバックを受けながら(MVP)、PMFに少しずつ近づいていく。「この製品がなければ困る」と考える熱烈なファンが市場で増えてきたら、PMF達成。

アイデアを検証する

良いアイデアとは何か
新規事業を起こす時にまずやることはアイデアの巻き込み(ポッと浮かんだアイデアをいろいろな角度から修正していくことである。
顧客にヒアリングする前にまずは自分たちなりに必死で考え、議論を交わす。そして「ビジネスモデルの原型とも言うべき「最善の仮説」を立てる。この一連の工程をアイディエーション(ideation)と言う。
いろいろなアイデアがあるが、大事なことは課題の質にフォーカスしたアイデアかどうかである。
儲かるかどうか」「自分たちの技術が活用できるかどうか」といった話は一旦置いておいて、「世の中のどんな課題を解決するのか」。そこから議論をスタートさせることが最重要である。
ビジネスアイデアが「課題ありき」ではなく、「解決策ありき」「製品ありき」「技術ありき」になっているケースが本当に多い。
「良い解決策」=「良いアイデア」では決してない。
優れたビジネスアイデアを見つける筋道は「課題の質を上げてから、解決策の質を上げる」という筋道しかないのだ。
そして課題の質を高めるのに、課題が自分ごとになっているかどうかはかなり大切だ。
自分や周りの人が抱えている課題を解決することは、第三者が抱えている課題よりも熱量や本気度が高く、ユーザーの痛みを深く理解できる。
事業を起こす道のりは想像以上に辛く、計画を否定されたり資金がどんどん減っていったり凹むことの多い毎日の中で、そんな状況でも前進するためには自分ごとの課題でなくては仲間を巻き込み、困難に耐える強さは生まれないだろう。
また成功する人は、他の人が知らない秘密を知っている。
人と同じことをしない、他の人が目をかけないようなポイントに注目してアイデアを掘り下げ、まだ誰も言語化できていない秘密を見つけられるかどうかが成功の鍵を握っている。専門性と独自の視点を磨けば、「良いアイデアの秘密」が見えてくる。
しかし、「誰が聞いても良いアイデア=反対する人がいないアイデア」は他に同じことを考えている人が絶対にいるだろう。誰が聞いても良いアイデアは競合過多であり、そうなってしまうと経営資源の豊富な大企業が圧倒的に有利で、人もお金もないスタートアップに勝ち目はない。「一見悪いように見えるが、実は良いアイデア」こそがスタートアップの王道である。ハードなことをする方が実は近道で、簡単な道を選ぶことは結果として遠回りになる。
現代はインターネットやSNSの影響で市場全体の変化が非常に早くなり、イノベーションが頻繁に起きるようになっている。その結果、製品やサービスの「旬」が短くなり、「二番煎じの製品」の商品を作っても追いつけないケースが増えた。早い者勝ちが圧倒的に有利な状況がどんどん増えている。
市場の勝者になるためには誰よりも先にPMFを達成しなければならず、より一層普通の人では考えつかないアイデアで勝負することが重要である。

スタートアップのメタ法則を理解
スタートアップとスモールビジネスの違いを以下に示す。
スタートアップ・・・成長曲線はJカーブ、そもそも市場が存在するかわからないところからスタート、なおかつそこでNo.1を目指す。
お金を出すのはVCやエンジェル(個人投資家)、株価が爆発的に高くなる可能性を秘めたスタートアップにのみ投資する
既存の市場や常識を覆すような破壊的イノベーション
スモールビジネス・・・成長曲線は直線、既に存在する市場で戦う、規模を大きくすることよりも事業の採算性重視
お金を出すのは銀行などの金融機関、確実性を感じられる企業にのみ投資する
既存市場に対して「改良」を加えていく持続的イノベーション
以上を見てもらえれば分かるとおり、スタートアップとスモールビジネスは求められるスキルが全く違うし、「自称・起業家」の大半はスタートアップではなくスモールビジネスの経営者だ。
また、スタートアップと一般企業に努めるサラリーマンでも求められるものに大きな違いがある。
一般企業
まあまあ好かれる商品が好まれる
報告書作りにこだわる
何か問題が起きた時は、犯人探しに躍起になる
スタートアップ
市場で圧倒的シェアを取れる商品
「報告書でまとめられそうにないふわふわした情報」を積極的に探して、メンバーと共有し、とことん議論する
犯人探しではなく、失敗原因を究明し、組織として学びを深めていく
このように大きな違いがあり、会社員でこれからスタートアップの世界に飛び込もうと考えている人は会社員の常識を捨てるべき必要もあるだろう。
会社員の多くは忙しいと言いながら取り組むべき難題を脇に置き、価値を生み出さない仕事に時間を費やしていると言われていて、会社員であればそれでも給料は入るが、スタートアップではそのような余裕はなく、本当にやるべきこと、価値を生み出す仕事に専念して初めて結果がでるのだ。
ビジネスパーソンにとって人脈は大きな武器になるが、人脈を広げることが気付けば仕事になっている人が多い。起業家が第一に会いにいくべきは「顧客」であり、第二に「自分と一緒にスタートアップに参画してくれそうな仲間」である。このことを念頭において人脈作りをしていくべきだ。

アイデアの検証
現代はIT技術が進化し、開発のハードルが下がったが、すぐに競争が激しくなっている。今取り組むべきものをここぞというタイミングを見つけたら素早く動くことが重要である。タイミングが命だ。
最適なタイミングを見極める一つの考え方として、製品の進化が止まっている領域を探してみる方法がある。
そこには進化が止まっている原因が必ずあり、市場を注意深く観察すれば、ユーザーが既存の製品に不満を持ちつつも、仕方なく使っている領域が見つかるものだ。例えば、普段使っているExcelは20年間ほとんど進化をしていないが、いまだに市場を独占している。実際にはグーグルのスプレッドシートの方がブラウザ上で使えて、複数の人が同時に編集できるなど遥かに使い勝手が良い面があるのに大企業がExcelを使っているため、Excelユーザーが圧倒的に多い。そうした進化が止まっている市場に風穴を開ける製品が作れるならスタートアップにも正気はある。
はたして自分のアイデアは市場を再定義できるか?」。そう繰り返し、自分に問いかけることで常識にとらわれないアイデアに辿りつけるかもしれない。例えば、電動車椅子を開発するWHILLは80年ぶりに車椅子を再定義した。スマホによる遠隔操作、インホイールモーター(車輪自体へのモーターの組み込み)、軽量バッテリーなどの最新技術を活用して、車椅子の在り方を一気にアップデートした。ユーザーの利便性を劇的に高めたのである。
「市場を再定義できるか」という着眼点をもつと、その市場が辿ってきた歴史と未来について自然と考えるようになる。結果的に課題の質を上げることにも繋がる。
注意すべきなのが、現時点で市場が求めるものを分析しても遅いということ。「今この瞬間」ではなく、5年・10年先を見据えて「今後、需要に対して供給が圧倒的に足りなくなるものはどこか?」「次に起きるパラダイムシフトは何か?」を考える必要がある。世の中の流れを読み、今どの場所にいるのが最も有利なのかを適切に察知する能力が必要である。1990年代前半のインターネット黎明期にインターネットに目をつけた人が世界を席巻したように、今黎明期のものに目をつければ10年、20年後に世界を席巻できるかもしれない。未来に生き、欠けているものを作ろう。
10年後の社会を予測するための手助けになるのがPEST分析である。
①Politics政治 市場の枠組み・規制に影響するもの
②Economy経済 バリューチェーンに影響するもの
③Society社会 需要構造に影響するもの
④Technology技術 競争ステージに影響するもの
それぞれの領域で情報を集めて、将来、それがどう変わっていくのか自分なりの仮説を立てる。3日間をこのPEST分析に割くだけでも、そこにビジネスチャンスがあって、どこに地雷があるか見えてくるはずだ。PEST分析は全体を見るチャンスである。PEST分析の中でも政治や法律にまつわる領域は、ビジネスの前提がひっくり変える影響力があり、特に長年規制で守られてきた領域が規制緩和で解放されるタイミングはスタートアップにとって大きなチャンスである。規制に守られている企業はユーザーの利便性など何も考えていないからだ。

プランAの策定
ここで今の段階でベストと言われる仮説、プランAを作る。
いわゆるたたき台なので、時間を割いてまとめる必要はない。
プランAを整理する際に、最も効果的だと考える手法が「リーンキャンバス」である。スタートアップにとって重要でない項目を省略したもので、スタートアップにとって重要な顧客、課題、製品にフォーカスできるように設計されている。シンプルなため誰でもすぐに理解し、10分もあれば書けるだろう。事業計画書の作成に2ヶ月も費やすくらいなら、10分で書けるリーンキャンバスを何百回も書きこむほうが遥かに効果的である。
リーンキャンバスで最も重要なのは「課題」と、その課題を抱えている「顧客セグメント」である。
1 課題(課題仮設)
あなたのスタートアップが解決しようと考えている課題仮説を書き込む。顧客との対話を通じて検証するものなので正解・不正解の議論で時間を取られすぎないようにする。
2顧客セグメント
誰の課題を解決するかを特定する。
ここでのコツはアーリーアダプター(情報感度が高くて普段から課題に対する代替案を積極的に探している人)を狙えているかどうかで、アイデアを正しい方向に軌道修正できるかどうかはこうした層のフィードバックにかかっている。「50代女性」といったざっくりしたのもではなく、より具体的で臨場感があるペルソナを考えることがポイント。
3 独自の価値提案
課題に対して自社製品がどういった独自の価値観を提供するかを書く。「製品の最大の売りは何か?」ということ。

①〜③がアイデアの土台
④から実現のための具体的な施策の仮説を立てていく。

4 ソリューション
課題の具体的な解決方法を書き出す
5 チャネル
顧客との接点を持つ経路を考える。この段階では「どうやれば顧客と直接対話できる機会が増えるか」を考えるといい
6 収益の流れ
どんな収益モデルになるかを考える
7コスト構造
顧客獲得費用、流通費用、サーバーの管理費用、人件費など、製品を市場に出すまでにかかるお金をまとめておく。
8 主要指標
スタートアップがPMFに到達するために計測を続けるべき指標(KPI)を想定する。
9 圧倒的な優位性
競合に対して、製品以外の領域で圧倒的に優位なポイントを書き出す。
誰がどんな課題を解決するのか?これはスタートアップの土台になるので、初期の段階で徹底的に検討を重ねよう。
「課題」と「顧客セグメント」に価値提案を加えた3つの基本項目が少しでも変わると、残りの6つの項目はガラッと変わる可能性がある

課題の質を上げる

課題仮説の構築
このステップではカスタマーの課題と起業家のアイデアが合致した状態CPFの達成を目指していく。
プランAで立てたものは「想像の産物」に過ぎないので、次の工程としては想像の産物(カスタマー)がそうした課題(痛み)を本当に抱えているのかどうか実際に検証していく。
課題検証がいかに重要かはデータとして表れており、PMFを達成したスタートアップの8割はプロジェクトの初期段階で「課題の発見と検証」に集中している。一方で失敗したスタートアップの74%が、同じ段階で「プロダクト(製品)の検証」に時間を割いている。課題の検証を十分にせずにいきなりものづくりをはじめてしまっているのである。
ものづくりができるスキルは素晴らしいが、そのスキルを無駄にしてはいけない。無駄遣いしないためには「自分達が作りたいからその製品を作る」という呪縛から抜け出さないといけない。確証バイアスがかかってしまい、人は無意識のうちに「自分の考えが正しいことを証明する情報」ばかりに注意を向けてしまう。最初の仮説は反証されるものと覚悟して挑もう。
課題を検証するときに最初に行うことはペルソナの想定である。本質をついた課題に辿りつくためには、「誰のどんな痛みを、どう解消するか」が大事だが、その「誰」という部分を浮き彫りにしなければならない。
・年齢、名前、職業、性別、趣味、生活スタイル、現在の居住地、出身地など。
・日々の出来事にどういう印象を持ち、どういう性格の人か
・何を課題(不満、不便、不安)に感じているか。
・何を達成したいのか
・本音(インサイト)は何か。

あらゆる要素を考え、ペルソナを設定しなければならない。非常に頭を使うが、一度書き上げて満足してはいけない。顧客からフィードバックを得るためにペルソナもどんどん修正していき、より臨場感があるものに仕上げていくことが大事だ。
ペルソナを使う3つの目的は以下である。
①製品を設計していくときに出てくる発想を「課題ありき」「人間ありき」によせるため
人間の泥臭い部分、言い換えればコンピューターでは予測が難しそうな部分を理解しようと努めない限り、いくらデータと睨めっこしたところで答えは見えてきません。
②ユーザーのイメージを具体的にすることで、失敗するスタートアップにありがちな「万人に好かれる商品」を作ろうとする落とし穴を回避するため
③チーム内で顧客に対するイメージを共有するため。
もし創業メンバーが3人いたとしたら、それぞれの経験や認識の違いによってイメージするお客様のイメージがバラバラになるため、すり合わせが必要になる。顧客のイメージが絞られているほど、検証と修正が早く進むので大事なことである。
ペルソナの心理状態をさらに深堀するときに有効な方法として、エンパシーマップ(共感マップ)と呼ばれるものがある。
・何を考え、感じているか?どういったことを心配しているか?何を望んでいるか?
・何を聞いているか?周囲の友人、上司やインフルエンサーは何といっているか?
・どんな痛みを感じているか?(恐れ、障害、フラストレーション)
・何を得たいのか?欲しいもの、必要なもの、成功指標は何か?

こうした点を細かく想定していくことで、ペルソナの心の機微を細かく書き出し、メンバーがペルソナに対してより強い共感を持つことができる。
ペルソナを設定する時の落とし穴があり、起業家が期待する顧客の姿を、ペルソナに演じさせてしまう」ことがよくある。
この失敗を防ぐ方法がカスタマー・ジャーニーである。
(カスタマー・ジャーニー=ある条件下で自分が想定したペルソナが実際にとりそうな「具体的な行動」と「その時の心情」を実際に書き出していく方法)
起業家にとって顧客目線でその人の物語をありありと語れることは必須である。カスタマージャーニーの手順を以下に示す。
①ペルソナの確認
②文脈を決める
③ペルソナの目標を考える
④大まかな行動のステップを書き出す
⑤詳細な行動を書き出す
⑥行動の裏にある思考を書き出す
⑦タッチポイント(接点)を書き出す
⑧感情を書き出す
⑨現状の課題点を書き出す
チームでカスタマー・ジャーニーを作りこんでいくときのコツを整理する
・付箋やカードを使う
・まずは単語ベースで付箋に短く書き出す
・フィードバックをもらう
・定期的に更新する
・万能ではないことを認識する
・カスタマーの感情面に集中する
カスタマー・ジャーニーを作ることでペルソナの姿がより生き生きと浮かび上がり「見落とし」が減る。

前提条件の洗い出し
ジャベリンボード
というツールを使い、「確認したい相手」「確認したい問題」「確認する手段」をセットにして考え、重要度の高いセットから検証作業を進めていく。ジャベリンボードを埋める作業はメンバー同士で意見を出し合うブレインストーミングから始まる
ブレストする内容は4つあり、必ず順番にブレストしていこう。
①カスタマーは誰か?
②課題は何か?
③ソリューションは何か?
④最も不確定な前提条件は何か?

そして最後にカスタマー、課題、ソリューション、前提条件の検証方法と検証基準を考える

課題から前提の検証
リーンキャンバス、ペルソナ、エンパシーマップ、カスタマー・ジャーニーの作成を通して想定顧客とその人が抱える課題を磨き込み、ジャベリンボードで確認すべき前提条件が何かを整理した。
このステップではユーザーとの対話を通じて、課題や前提条件が正しいのかをインタビューにより確認していく。
この段階で行うインタビューは、「課題」に対する意見を聞くことが目的なので、「プロブレムインタビュー」という。
鋭い意見をくれるインタビュー相手は起業家にとって宝のような存在でそういうインタビュー相手を見つけることが大切だ。
流行に敏感で、自ら進んで情報収集と購買判断ができ、なおかつ他の消費者層への影響が大きい消費者のことをエバンジェリストカスタマーという。
しかしエバンジェリストカスタマーは圧倒的に数が少ないので積極的に探す必要がある。
エバンジェリストカスタマーを探す方法は以下である
・知り合いから紹介してもらう
・SNSで呼びかける
・スポットコンサルティングで探してみる
・関連するカンファレンスや展示会に参加する
・関係する業界の人が知り合いにいたら、ランチをご馳走して話を聞く

特におすすめなのはスカイプなどを使って様々な分野の専門家に直接相談できるスポットコンサルティングである。有名なのはビザスクである

ソリューションの検証

UXブループリントを作成する
顧客の姿がはっきりとイメージでき、なおかつその人が抱えている痛みが存在することがわかったら、次は解決策を磨き込む
STEP2では「想定カスタマーと起業家の課題が合致する状態を目指したが、STEP3では「想定する課題と想定する解決策が合致する状態を目指す。
解決策を磨き込んでいくときに使う手法がソフトウエア開発でよく使われる「プロトタイプカンバンボード」である。
プロトタイプカンバンボードで進歩を可視化する方法は3つあり、
①コミュニケーションが活性化する
②検証のタイミングがわかる
③ボトルネックがわかる

プロジェクトを早く進める行為は、実行を妨げる障害を速やかに取り除いていくこと。その点、カンバンボードがあれば、メンバー全員のタスクを共有できるのでボトルネックが発生すれば、すぐにわかる。
プロトタイプカンバンボードの流れとして
バックログ(積み残し)→仕掛かり中→完了→検証となる
バックログ(積み残し)
①課題を設定する
検証が十分できているカスタマーの痛みを選んで付箋に書き、カンバンボードの左端の項目に貼り付ける。
②解決案を考える
想定している解決策を「バックログフィーチャー」欄に貼り付ける
③ソリューションインタビューで機能を絞る
仕掛かり中
①プロト案を出す
試作品の手前にあたるプロトの段階でアイデアを絞り込む必要は一切ない
②ペーパープロトをつくる
ペーパープロト=設計図を実際の画面比率などに即した形で清書したもの
③ツールプロトを作る
ペーパープロトをいくつか作り、良さそうな案が固まってきたら、プロダクトの動きをある程度再現できるツールプロトを作る
ツールプロト作成のポイントは
・直感的に使えるか
・機能の優先順位は明確か
・デザインに一貫性はあるか
・可逆性は担保されているか
検証
プロトタイプができたら、実際のユーザーに手に取ってもらい、「使いやすさ」「コンテンツのわかりやすさ」「目的を達成するまでの快適度」を聞き出すプロダクトインタビューを実施する。
プロトタイプに触れた人の反応が悪ければ、痛みに対する解決案を再度考え直す。

人が欲しがるものを作る

MVPを構築する
アイデアを磨き、課題の仮説を検証し、解決策の仮説を検証するという、一連の下準備を通して多くのことを学んできた。この学びを元にいよいよ最初の製品を作る。
日本語で「実用上最小限の製品」を意味するMVPは、単に機能が少ないという意味ではなく、あくまでもユーザーが感動するような、ライバルにない価値提案を実際に試せる製品で、なおかつ機能が最小限に絞られていることがポイントだ。とある有名な起業家の支援プログラムでは起業家たちに「作る前に売れ」ということがしきりに言われる。「人がお金を出したがるくらい、製品のコンセプトを徹底的に磨け」ということだ。
無料の試作品はプロトタイプであってMVPではない。無料で配布してしまうと「世間の人はあなたの製品にお金を払うだけの価値を感じるのか」という、PMF達成に向けて1番しなくてはいけない検証ができない。少額でも価格がついていれば売れる・売れないというわかりやすい指標で世の中の需要が確認できる。MVPとは製品に対してお金を払いたいと思うだけの魅力がある最小限の製品であるべきなのだ。
MVPにはタイプが6種類ある
①ランディングページMVP
②オーディエンス開発型MVP
③コンシェルジュMVP
④動画MVP
⑤ピースミールMVP
⑥ツールMVP
MVPではソフト作成に手間や費用がかかる部分はアナログで処理していい
いずれの型であれ、事前に課題と解決策を検証できていることが重要になる。
MVP投入後を学びを最大化するためにスプリントキャンバスとスプリントカンバンボードを使う
事前にMVPごとの「学習目標」を明確にして市場に投入し、反応を見て学びを得ることをスプリントという。
スプリントが一回終わると必ず何かしらの学びが得られ、その結果を踏まえて2回目3回目のスプリントを回し、さらに学びを積み重ねていくことがPMFを達成する王道パターンである。
スプリントキャンバスで学んだことを整理し
スプリントカンバンボードで進歩を管理する
MVPを市場に出す
スプリントを回す段階になってもユーザーの声は集め続けよう。
スタートアップがPMFを達成するためにやることは「製品を作ること」と「カスタマーと話すこと」の二つのみだ。
MVPの評価を測定
いざMVPを投入してもカスタマーの反応を上手く分析する術を知らないために正しい軌道修正が出来ず、資金切れを起こしてしまうスタートアップが多く存在する。
スタートアップにとって絶対的な指標は製品がカスタマーに愛されているかどうかだ。判断基準が主観的なものであるが、主観的なものだからこそカスタマーとの深い対話が必要で、なおかつそれを単なる思い込みで終わらせないように数字でも確認する必要がある。
定量分析の指標としてAARRR指標というものがある。
獲得
利用開始
継続利用
紹介
購入
この5段階の数字を実数で計測するとともに、次の段階へ推移する人の比率を計算すると製品の改善効果がわかりやすくなる。
定量的な指標で、特に注意したいのが「継続利用率」。顧客の離脱がないか。
新たなスプリントを回す
2回目のスプリントを実行しよう。1回目と2回目以降でやることは同じだが、異なる点は反応を分析するときにそれまでのスプリントで行った定量分析の結果と比較して、数値的な改善が見られるかどうか確認することだ。
スプリントはPMFを達成するまでつづけ、判断基準は以下のポイントである。
・高い継続利用率(定着率)を保てているか?
・ユーザー獲得から収益化までの流れは確立しているか?(投資家などに言葉でロジカルに説明できるか?)
・リーンキャンバスすべての内容が成立しているか?
実際に製品を使っているユーザーに対して「この製品がなくなったらどう思うか?」と説明して40%を超えたらその製品は今後も継続的に顧客を獲得できるだろう。
UXを改善する
機能がある程度満たされたら、ユーザーが熱中するようなUXを作りこむ方がユーザー定着につながりやすい局面がある。
ピボットする
なかなかPMFを達成する糸口が見つからない場合はピボットを検討する必要がある
・いくらスプリントを回してもユーザー定着率が伸びない
・ユーザー定着率は伸びているが、今の成長ペースでは市場で支配的なポジションを取れない。
・受けている投資の5〜10倍の利益を生み出せる見通しが立たない


3.感想

1周読み終えるのに膨大な知識が入ってきて、頭に入り切らないなと感じたが、何か目標を掲げてそれを達成するためにやるべきことがたくさん書いてあったので、起業を志している人だけでなく、成長意欲がある人、野心がある人、賢くなりたい人、知的好奇心がある人にもおすすめの一冊である。
特にここに書いている内容をチームで共有して取り組むととてつもない結果が出るだろうと思う。


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