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【じーじは見た!】 後編:カリスマ経営者に潜む危険性⁉

1998年初版の『カリスマ ~中内功とダイエーの「戦後」』(日経BP社 著者:佐野眞一)を書棚から取りだしてきて記事にしたてました。

日本経済の戦後復興と1985年のプラザ合意を頂点に30年に及ぶ経済停滞に見舞われている日本を考える上で重要な要素が隠れていると思いました。

本編は後編です。是非、前編中編を読まれてからお読みください。


✅カリスマ経営者の傲り⁉


佐野さんは、V革に対する中内さんのインタビューを次のように紹介しています。

中内”空位"の”V革”時代は結局、わずか三年で終わった。これは、ダイエーより早い82年、当時副社長の鈴木敏文の提唱で始まったイトーヨーカ堂の業務改革、いわゆる”業革”会議が、オーナーの伊藤雅俊を一度も出席させないまま、十七年後のいまも毎週一回続いていることと好対照をなしている。

中内は”V革”当時をふり返って、日経産業新聞のシリーズ「証言昭和産業史」(90年9月4日)の中で、河島さんを迎えて実施した荒療治はいまでも語り草となっていますが、という新聞記者の質問に次のように答えている。

「人員の削減だけはせずに、在庫を減らして商品回転率を上げようとしました。我々は人員削減だはやらない。持っとった土地などの不動産を処分して借金を返したわけですから、別にそんなむずかしいことではありませんでした。」

私はこの突き放したようないい方に”V革”は河島がいなくてもできたとでもいいたげな中内の傲りのようなものを感じた。

法人としてのダイエーを「わが家業」として息子の潤氏に継がせるために河島さんがカリスマ中内功にとって代わることを許さなかった「カリスマの傲り」は、経営を科学し、プロ経営者に法人を託したGAFAM創業者とは大きな差があると感じてしまいました。

✅終身雇用制度下でのカリスマ経営者の会社継承のむずかしさ⁉


時代は当時とは全然違いガバンスが効いていますので中内さんのように業績をV字回復させた方を簡単に左遷する傲慢なことができるとは思いません。

しかし「V革」という成功体験を会社で語れなくなるカリスマ経営者による独裁という危険性は、今の時代にも残っているのではないでしょうか?

中内は中途採用組という外様には、取締役という役職の高禄を与えたが、肝心な政務にあたらせなかった。そして譜代とでもいうべき大卒組には大きな役職を与えぬかわりに、権力を与え、自分の側近として重用した。(中略)

問題は大卒組が力を付け始めた”V革”後だった。中内は、ダイエーの再建役としてスカウトした河島博を総指揮官とする”V革”が成功するや、まだ三十一歳になったばかりの潤をダイエーの専務に大抜擢した。この当時、”V革”の戦士となった大卒組は、四十歳代の働き盛りだった。

このとき中内の心中には、力を付けた彼ら生え抜き組が、十歳も年下の潤の寝首をいずれ掻くかもしれないという恐怖心がよぎったか。思えばこのとき中内はまだ六十三歳だった。もしこのとき中内のなかに”人間不信”の気持ちが芽生えなかったら、彼の前には”勇退”という花道が広がっていたに違いない。

✅中内ダイエーを高く評価している⁉


佐野さんは、中内さんをこき下ろしているわけではありません。
高く評価しています。

中内さんをはじめとする戦後流通革命のリーダーの共通点として次の9つの要素を挙げています。

①強烈な自己実現の欲望の持ち主である。
②人一倍強い競争心。
③人並みはずれた努力家。
④他人や本や実践から学ぶ勉強熱心である。
⑤自己主張の強い自信家である。
⑥小成はもとより、どのような通俗的成功にも満足しない限りない革新性。
⑦人の配置と評価に対する深いこだわり。
⑧単なる雇用関係を超えた社員への教育的責任意識。
⑨商人としての美意識に反することへの激しい怒り。

よい品をどんどん安く売る、という明快で直截的な中内ダイエーのコンセプトは、貧しさからの脱出を希求していた高度成長期の消費者にとって確かに魅力的なものだった。
中内ダイエーは創業期においては、確かにメーカーに対して弱者の立場、劣位の地位に置かれていた。それが、一般消費者が中内ダイエーに対して声援をおくった最大の理由だった。

だが、中内ダイエーは組織が巨大化し、売上が増大化するにしたがって、いつしか大メーカーをしのぐまでの強者となった。問題なのは中内ダイエーが、そのことにあまりにも無自覚だったことである。(中略)

メーカーは悪者だ。市場を牛耳り消費者を苦しめているメーカーから、むしりとるのは当然だ。これが「わが安売り哲学」以来、中内ダイエーの背骨を流れる流通革命論の根本的命題だった。そこから「売ってやる」「仕入れてやる」という傲りに至るまでは、ほんの一歩の距離だった。

✅現代のカリスマ経営者たちは大丈夫⁉


GAFAMは上手に経営のプロに移行しましたが、日本のカリスマ経営者たちはどうなのでしょうか?

ファーストリテイリングの柳井さん、ソフトバンクの孫さん、楽天の三木谷さん、ニトリの似鳥さん、中内さんに負けず劣らずのカリスマ経営者たち。

戦後経済の復興期のカリスマたち本田宗一郎や松下幸之助、井深大らの人間臭さとは違い、ある種の賢さ、スマートさを感じる現在のカリスマたち。

最後に河島さんがV革を託されたときに見抜いた当時のダイエー社員の致命的な欠点の記述を書いてお終いにします。

ダイエーが創業からわずか15年で三越を抜いて小売業日本一の業績をあげたのも、それから三年後に一兆円の売上を達成するという神話的なスピード成長を遂げたのも、”カリスマ”中内の呼号する売上高至上主義と徹底した本部中央集権制があったためだった。(中略)
しかし、河島はそうした急成長の裏で進行していた重大な欠陥に入社早々気がついた。中内のカリスマ的経営に頼るあまり、社員の誰もが受け身一方となり、主体的に判断するという訓練が欠けたままになっているという致命的な欠陥だった。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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