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喫茶店

昭和な雰囲気の喫茶店に行きたいと急に思ったので、早速探してみた。
すると意外と近所にあった。

昔は喫茶店巡りが趣味だった。
名曲喫茶やジャズ喫茶など、雰囲気のある喫茶店に事欠かなかった。
一杯のホットコーヒーで、静かに読書をする。
あっという間に3時間が経ち、腰が痛くなって外に出ると、もう夕方だった。
いろんな喫茶店があり、登山客の集まる喫茶店やクラシックが好きな客。ロックがかかるロック喫茶まであって楽しい時代だった。
あの頃は、今のようにチェーン店が少なく個人店が多くを占めていたっけ。

そんな事をふと思い出して、そうだレトロな昭和テイストの喫茶店に行こうと思い立ったのだ。

バイクに乗って近くの駐車スペースに停め歩いて行くと、なんと満席だった。
へぇ…人気あるんだな昭和テイストはと感嘆した。
 
さてと、二軒目に向かうとするか。
またバイクに乗り目的地の近くに停めた。
しかし此処は座席が6席しか無く、常連と思わしき人が占めていた。
此処もダメか。

結局、いつものドトールになってしまった。
そのドトールもいつになく混んでいた。
いつものと言うか、好きな席は埋まっていた。仕方なく奥の席に今日は座ることにした。

店内を見回すと、あれ、いつもの常連が今日は居ないな。
こんな事もあるんだなと意外に思いながらアイスコーヒーを含んだ。

さて今日は何の本を読むか。
バックを漁る。
あ、一冊しか入っていない。しかも太宰治。
んん…今日は太宰な気分ではないんだよな。

溜息をついて、仕方がないのでKindleで事件物を読む事にした。
ドトールはWi-Fiが使えるので良い。
その意味で好きな場所である。

スマホで読書をすると、邪魔なのかネット環境である。
読書をしながらでも、直ぐにニュース記事などを見る事ができる環境なこと。時にはTwitter、時にはInstagram、時にはTikTok。
これじゃ読書とは言わないねと思った。

あまり集中出来ずにKindleで読み進めるのだが、二、三十ページ程読んだ所で、ふとそれまでの内容を思い起こそうとしたら、何も覚えていない事に愕然とした。
これだからネット読書は嫌いなんだ。
やはり読書と言うのは、紙で読まないといけない。
紙のページを指で触りながら、その感触やら質量感を感じながらしっかりと1ページを繰る。それが読書と言うものだと私は思う。
 
だから、私の自宅には本が山積みになっている。先日、何とかしようと思い立ちBOOKOFFに数十冊を持ち込んだ。30分程して呼ばれカウンターに行くと合計買取額は880円ですが宜しいでしょうか?と聞かれた。
嫌だと言っても仕方がないので承諾したが、結構な文学小説であるのに値段など無いに等しい。その事に日本の未来を悲しんだのだった。 

日本人はトルストイやゲーテなど、もはや読まないんだな。太宰治も夏目漱石すらも、もう読まれていない事に焦燥感すら覚えた。

人間の心の成長はある意味無限であると思っている。
その糧となるのが、こう言った文学なのだ。
古典は読みにくかったりするが、それでも得るものは多大にある。
芸術も然りで、例えば絵画は宗教画からダヴィンチ、ミケランジェロ、ゴッホやマチスと言った様に彼らはその世界で極めた人間達だ。そんな芸術家から得るものが無いなど、絶対に無いと思うのである。
よく世間で言われるが、自分は絵に興味が無いとか、クラシック音楽は分からないとか。
そうでは無い。そう言う事ではないのだ。

つまり君達の学びが足らないと言うこと。
更に言えば、成長期にそれらを教える教師の責任だとも言える。

文学、絵画、音楽、建築など、誰でもどれでもいい。好きな物が一つでもあったら、その人物の事をもっと知るべきだ。そうする事によって彼の影響を受けた更に昔の巨匠に出会うからである。そうやってどこかで自分が何にピンポイントで共感を得たのかを知る事になる。知ると感銘を受ける。
それが人間の成長である。  

そうやって私は生きて来たのだが、こんな事を書くと相当の爺様だと思うだろうが、まだ中年である。  

この世のデザインは、素晴らしいと思う事がある。
例えば自動車。
フランスのシトロエンと言う車があるが、デザインがとてもユニーク。外装や内装、そして構造までユニークである。
ふと一世代前のシトロエンはどんなデザインだったのかと思いを馳せると、どんどんシトロエンの不思議な事が見えて来る。そしていつか、嗚呼なるほどそう言う事だっのかとなる筈である。
それが人間の成長と言うものである。

喫茶店を探しながら、こんな事を書いているのもどうかと思うが、にしてもなのである。

さてさて、何故に私の近所の昭和レトロな喫茶店がこうも混んでいるのか、それがまったく解明されていないのだが、それに感じては想像よりも客に直接聞くのが手っ取り早い。がしかしそれは奇行なことだと自覚もしているのである。

アーメン

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