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目的ありきの「考えるための読書」(『フォーカス・リーディング習得ハンドブック』読後録)

「速読」の本って、いっぱい出ています。
だからこれも「どれだけ速く本の内容を
自分の頭にコピーできるか」という
ノウハウを教えましょう本のひとつかな、と思って
読み始めました。

その本が、
『フォーカス・リーディング習得ハンドブック』でした。

「理論編」「鍛錬編」「実践編」の
三部構成の本書。
最初の「理論編」ですぐに出てきた、

読書をすればするほど、自分の頭で考えなくなる

の章を読んでハッとしました。

私たちは、本を通じて著者の思索の跡をなぞっただけで、
自分が何かを知った気になりがちです。
そのとき「自分の頭で考える」作業を忘れてしまうのです。(本文より引用)

まさに、私の今までの本の読みかたは
「答え」を探すための読書だった!と。

■自分で考えられるようになりたい

最近、飲食業の勤務が自宅待機となり、
私はサボっていたブログの記事書きを再開しようと
久しぶりにブログのライティングページを開きました。

しかし、「書きたいこと」が
何も浮かんできません。
せいぜい「眠い」とか「お腹すいた」とか。

勤務職はほぼマニュアルで、同僚はクセが強い人が多くて
私の仕事っぷりは「極力周りに合わせて無難に、
マニュアル通りで文句が出ないように」と
気を遣っていました。

勤務時間が長くて立ちっぱなしのため、
仕事が終わったらもうクタクタ。
コンビニで手近な甘いものを食べながら帰り、
帰宅してそこらへんのものを口に入れながら
洗濯物を畳んで風呂入って寝るルーティンの生活でした。

そんな勤務の日々が続くうちに、私はすっかり
自分の頭で考える能力を失っていました。

ニュースをみてブログのネタにしようとしても、
自分の意見がこれっぽっちも浮かんできません。
脳裏によぎるのは
「このニュースに対して、どう思うのが
正解なのだろう?」
世の中的「正解」を探す思考回路になっていました。


焦った私はそこで、自宅待機の時間を活かして
出来るだけ多くの本を読むことにしました。

自分の考えが浮かばないのは、ひとえに
自分のインプットが足りないからだ
とにかく「知識」や「考え方」を
集中的に詰め込んで、
そこから「自分の意見」を作れるようにしよう、と。

それで久々に本屋で本を買いあさり、
本を読み始めたのですが
「インプットしなきゃ」と力むあまり
読書スピードが遅々に。

これじゃダメだ、ということで
私は読書の前に「速読」ができるようになろう、と
思い立ちました。

それでネット検索して探し出したのが、

『フォーカス・リーディング習得ハンドブック』

「習得率98%の速読メソッド」と帯にあります。
ネット限定販売で書店に並ばない出版社の書籍だったので、
今まで本屋で見つけなかったわけです。

■速読はやはり「訓練」が要る


本書の始めの「理論編」で

読書をすればするほど、自分の頭で考えなくなる

の言葉を見つけてしまった私は、
自分で考えられるようになるために
読書でインプットするつもりだったのに、
じゃあ速読を覚えて大量に本を読んでもムダ?と
がっかりします。

しかし、「理論編」を読み進めるにつれ、

読書で大切なのは「本を読むこと」ではなく、
「本に書かれている情報を読み取る」ことですし、
「本を読んで目的を達成する」ことなのです。(本文より引用)。

という文章に当たります。

要は、速読が目的ではなく、
「速読で読み取った情報をもとに自分で考えて
意見を述べられるようになるのが目的」
にすればいいのね、と
胸を撫でおろし、
次の「鍛錬編」に進みました。


「鍛錬編」は、理論を離れて
ひたすら「速読のための目の使い方」を
繰り返し練習する章です。

実際にやってみると、思いのほか
視線が自分の思うとおりに動きません。
自分が普段どれだけ無意識に「見て」いるのか、と
思い知らされました。

正直、根気のいる訓練です。
本文中でも

読書は、基本的にスポーツと同じです。
ベースとなる能力がまずあって、
そこに技術を習得していくことでレベルアップがはかれます。(本文より)

とあり、
実に体育会系です。

視点を自由に操って本の文章を素早く読み取る
技術を習得することは
スポーツの基礎訓練と同じだ、とのことなので、
真面目に基礎訓練をしてみました。

ほんとに、騙されたと思って
本に載っている視点の訓練をしていたら、
なんとなく
本の文面の上をどのスピードで見ていくか
ある程度コントロール出来るようになりました!

■速く読めるようになったのですが…

ここで読書スピードが上がったのをいいことに、
本書の最後の「実践編」に読み進む前に
私は手持ちの戯曲(劇の台本)2本を
速読を使って読み進めました。

どちらもかなり長さのある戯曲でしたが
スピードを上げてそれぞれ2、3回通し読みし、
内容のメモを細かく取って
ブログにあらすじをまとめて書きました。
私はブログに戯曲のあらすじを
アップするつもりだったのです。

ですが、ふと
「小説や戯曲のあらすじって、ブログに載せていいんだっけ?」と
気が付いて調べたところ、
著作権侵害の恐れがあるため
人が書いた本や話のあらすじを
ブログ記事に載せてはいけないことが分かりました。
(本文に矛盾しない数行の解説や、
出典を明らかにしたごく部分的な引用のみに
使用は限られています。)

ここで、すでに1万文字近く書いた
ブログ記事の「戯曲のあらすじ部分」を
カットすることにしました。

すると、それ以上書き足す文章が
まったく浮かばなくなりました。

そういえば、それまでのブログ記事での
「本の紹介」も、
本文のポイントを抜き出して
箇条書きにしたものばかりでした。


読書スピードは上がりましたが、
「速く読んで早めに内容を知る」ところまでで
まだ止まっていたのです。

ここから自分の意見を見つけていかなければ
ブログ記事が全部おじゃんになります。
私はここで、まだ未読だった
「実践編」を読み進めました。

■読書は「目的ありき」

「実践編」の中で、私は

本から抜き出した言葉の賞味期限は、
それほど長くありません。(本文より引用)

という文章を見つけて、
この速読本の目的は
「より速くポイントになる言葉を見つけて集めること」ではなかった、と
思い至ります。

読書のゴールは、「理論編」で読んだ言葉のとおり
「本を読んで目的を達成すること」
私にとっての目的は
「自分の頭で考えた文章を書けるようになること」です。

目的ありきの読書、なので
まず「目的」を明確にしてから
本を読む必要があったのです。


本書の「理論編」には
目的から読書の価値を明確にするための
『TPO』の考え方が書かれています。

また、「実践編」にも
目的を達成するために何を学ぶかシュミレーションする『心技体の三角形』と
目的に沿って本を読むための『読書マネジメントの三角形』のイメージが
紹介されています。

読書はまず目的ありき。
速読は、目的に達するスピードを上げるための技術。

「実践編」では、速読での具体的な本の読み方も
数パターン載っています。
私はそれを参考にして、
例の戯曲の読書メモを見直してみました。

私はひたすら戯曲の内容をメモしていましたが、
「実践編」にあった言葉

もし、メモしなければならないことがあるとしたら、
それは本に書いてある言葉ではなく
読み解く過程で
自分が考えたこと。
あなた自身の意見です。(本文より引用)

を思い出し、
あらすじメモの横に
・調べておきたい時代背景
・登場人物の整理
・自分なりに考えた、ストーリーのテーマ
・自分がこの劇を観に行くなら、どこに注目するか?
など、
「自分で考えなければ出てこないこと」を
書き足していきました。

知らなかった背景をひたすらネットで検索してまとめ
脳を絞る思いで自分の意見をひねり出して、
ようやく「あらすじなし」の戯曲紹介を書き上げたとき、
私は「久しぶりに自分の文章が書けた!」と
嬉しくなりました。

■目的を忘れず、かつ速く読める


その後の読書で大きく変わったのは、
本を手に取ったら、ひとまず
速読で最初から最後までザっと下読みをする習慣
ついたことです。

その次に気になるところにふせんを貼りながら2度目の通し読み
これも「視点の動かしかた」を覚えたので
以前よりかなり速くチェックできるようになりました。

そして3度目は、ふせんを貼ったところだけ読みながら
「重要」と感じたところ以外のふせんを外しています。

その後、残ったふせんを外しながらメモに抜き書き
(この時点で本1冊あたり抜き書きは10項目以下になってます)、
その横に
「ここを抜き書きした理由」や
「ここを読んで実際にやってみた(みたい)こと」
「より調べたいこと」
「実生活に通じるテーマ」を
考えて書き込んでいます。

都合、本は4回読むことになりますが、
下読み・2度目が「速読」のおかげで速くなり
3度目・4度目は飛ばし読みなので
以前のように頭からウンウン読むよりも
速く読めるようになったくらいです。


一番良かったのは、本を読んだあとに
自分で考える習慣と時間が得られたことです。

「自分で考える脳」を持てるようになると、
日頃の生活での出来事やニュースも
一度事実を把握したあと
それに対して自分の意見を考え、
それをもとに何をするか決めるようになりました。

ブログ記事やSNSも、
以前の「抜き書き」に加えて
自分の考えや意見を添えて発信するようになったので、
「これは自分にしか発信できない内容だ」と
精査して書くように変わりました。

■「目的のある速読」の基礎的テキスト

私はもともと読書は好きでした。
それが社会人になって以降、読書時間が足りず
本が読めないことをずっと不満に思っていました。

同じ悩みは昔から世の中にあったようで、
多くの「速読本」が出回っています。
やがて「多読が成功者になる秘訣!
とにかく流し読み!飛ばし読み!」と
ネットで流れるようになるにつれて、
「本の字面を眺めてるだけで頭に入るわけがない。
『本を何冊読んだ』という数に自己満足してるのでは?」と
フーン、と斜めに見るようになりました。

ですが今回、「本当に本を読みたいけど
読書スピードそのものが亀さん並みの遅さ」という悩みで
やむを得ず手に取った速読メソッドの書籍が
この本で良かった!と思っています。

本を読むのは目的のための手段のひとつで
読書は目的ありき。
そして「速読」は、本を読むスピードを上げて
本を読んだあとに
目的に向けて「考える」時間をより確保する技術


それが「理論編」「鍛錬編」「実践編」で
順序立てて書かれている、
まさに「人生に必要な技術」の教科書だと思います。

読後すぐ、この書籍についてSNSで書いたとき、
著者の寺田昌嗣さんが
リツイートで返信をくださいました。

こちらこそありがとうございます!

この書籍は2019年初版発行なのですが、
来月には2021年バージョンが公開予定とのことです。
『フォーカス・リーディング』が
さらにバージョンアップされ続けているのですね!

バージョンアップも楽しみですが、
それに先駆けて現在の版を読んでおけば、
今すぐ生活・学びに役に立ちます。
書店に置かない出版社なのでネット通販ですが、
どうやら今ならキャンペーンでお安くなってるみたいです…(ボソッ)。

『フォーカス・リーディング習得ハンドブック』はこちらから。

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