バレンタインの行方

去年のバレンタインはなんだか
ちょっとごちゃごちゃしていた
楽しめたところもあったけれど
感情をぶつけたケースもあって

いつもの目の下にクマを作っている彼には
目元を温める使い切りアイマスクをあげた
バレンタイン当日に会うから用意していた
そんな行事もあったけどもう薄れてない?
と以前彼が言っていたので渡そうと思って
いいのー?とは言いつつも特に抵抗もせず
初めて使うなあと言って受け取ってくれた

イメージがコーヒー店のマスターな彼には
「ちょっといい」レトルトのカレーにした
家事をするらしいので選んだコンセプトは
「夕飯作るの面倒だなーってときのため」
ものをやりとりする関係ではないんだから
と彼は相当受け取るのを拒んだけれど最終
今回だけと渋りながらも受け取ってくれた

いつも直接会うことのない彼に用意しても
結局渡さないで終わるけど気が向いたから
チョコレートよりも違うものがいいと常々
言っていたので晩酌を欠かさない彼に合う
フリーズドライのしじみのお味噌汁にして
あらゆるメーカーのものを買い揃えてみた
職場でも手軽に昼食どき食べられるように

いつも会えないからもちろんバレンタインも
それどころか1カ月ほどたってからようやく
わたしがたまたま近くまで行く機会があって
意外にも会えるか会えないかと話が出てきた
ただ会えない要素があとから小出しになって
わたしは失恋したかのような気持ちになって
彼に怒ってはない悲しいだけと感情をぶつけ
バレンタインだと彼に写真を送っていた品も
心が痛むからもう処分すると言ったのだった

実際には処分したというか正しくは
食べ物を粗末にはできない気持ちと
悲しさのやり場をどこかに求めたら
よく行くカフェの店員さんが浮かび
半ば押し付けになってしまったけど
引き受けてもらうことになったのだ
失恋してきてと言うとあーと一声で
さすがに断り切れなかったのだろう

いつも直接会うことのない彼とは結局今でも
ずるずるというか絶妙な距離が保たれていて
失恋したと気持ちのやり場にした店員さんは
異動やらでもう会えなくなってしまっている

バレンタインがどうなるか分からない状態では
用意しないと決めたつもりでいたのに去年から
クリスマスプレゼントになればと思って手元に
用意してしまったものがそのままで眠っている
これは去年の救いになった店員さんに向けてだ
クリスマスを通り越してバレンタインもたぶん
どこまでこれを持ち越すことにするんだろうと
踏ん切りのつかないまま後生大事に持っている