マスクの世界

世界がマスクで満ちる前にも
常用している人はいたけれど
マスクが苦手な私はほとんど
着けていることはなかったわ

私がマスクをしていたなら
それはガードを作っていたい日
周囲との間に一枚壁が欲しい日
私にとってマスクはそういうものだったの

世界がマスクで満ちてからは
当然のようにつけているけれど
マスクが苦手な私はできれば
外していたいと思っているわ

世界がマスクで満ちてからあとに
出会った人もいくらかいるけれど
顔が半分隠れた状態のままでは
見極められないこともあると思うの

マスクの世界で出会った私たちはきっと
きっと私はあなたのほんとうを知らない
きっとあなたは私のほんとうを知らない
それはつまり
まだ知らなくていいってことなのかしら
いつか知る日がくるってことなのかしら

マスクがあろうがなかろうが
あなたと私はお互いを
十分に知りえなかったかもしれないけれど
あなたと私はお互いに
特別にはならなかったかもしれないけれど
それでもマスクの世界で出会ったから
今のところはそのせいにしておいて

あなたはまだ私のほんとうを知らない
私はまだあなたのほんとうを知らない
このマスクの世界で出会った私たちは
距離感を掴むまでに少し時間がかかりそう