握手は右手で

左手の握手は手切れの意味だと
何かで聞いて以来自分の中では
意識してどちらの手かを決める

最後に私から彼に握手を求めると
彼は拒まずに私の手を握ったけど
それはまったく力の入っていない
疲れ果てたまるで生気のない手で

でも私はなぜか知っていた
私を憎んでいたら握手など
彼はせず無視するだろうと
私の手を握りはしたけれど
力が入っていない彼の手が
彼の難しさそのものだった

彼は私の手を握ったけれど
力を込めて握り返すほどの
余力は彼に残っていなくて
本人は認めなかっただろう
喪失から自分がダメージを
受けているなどということ

私は右手を差し出した
彼の右手を握ったから
手切れしたんじゃない
いつでも私はその手を
心からの愛情をこめて
握る用意はできている