【台本】令和の精神——アキノリ将軍未満およびネオ幕府運動のバイブス

 現在、東京都知事選が混沌とした状況を呈しているとして話題になっている。一癖も二癖もある立候補者の乱立を、民主主義の退廃だと多数派は考えているだろうけども、僕はこのような認識に対し断固として否を唱える。真に守られるべき価値が一つまた一つと削ぎ落とされ失われゆくさなかにおける、純粋な民主主義のあけぼのに他ならないのだと、僕はこの動画を通して一億二千万の同胞に訴える。アキノリ将軍未満候補の、どうか自分に投票しないでくれという呼びかけは、極めて正当だと言ってもよいのではなかろうか。YouTubeチャンネル「平坂アーカイブス」を更新されている批評家の平坂純一氏は、フローベールやバルザック、マラルメ、プルーストといった名だたる文学者たちが普通選挙に反対していたことを指摘している。この意味を我々は真剣に考えて然るべきであろう。

 僕がアキノリ将軍未満に好感を持つ理由の第一は彼の人柄の良さである。サイバー兜なるものを被り、「バイブス」だの「音楽性」だのといったふざけた(笑)言葉を用いて政治を語り、美的センスと裏腹の軽薄さを演出しているけれど、それが仮面であることは、彼の活動を観察していればわかることだ。表面的な姿勢のうちに秘められている、志と誠実さに気づかされることだろう。我々の人生に意味などなく、だからこそ新たな虚構を生み出さなくてはならないという自身の哲学を、彼は身をもって体現しているのである。

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