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随筆【四】

今日は穏やかな1日の始まりだった。
朝から荒んだ気持ちで過ごすことも多い私だが、今日は気候も穏やかで時間にもゆとりがありゆったりとした気分で通勤をすることが出来た。

恥ずかしながらスマートフォンの通信制限がかかっていることもあり、通勤電車の中ではなんとはなしに車窓から外の景色を眺めることが出来たのも穏やかな気持ちでいるのに良かったのだろう。
そうして私は電車に揺られていた。

今日は良い一日になりそうな予感と共に景色を眺めていた。
既に動き始めていたであろう工場地帯は特別な景色ではなかったが、その景色を眺めていると不思議と心が落ち着いた。

そんな何でもない景色を眺めていると、途中に恐らく工場を建設中の工事現場が見えてきた。
それはそこまでに流れていった景色と何ら変わりのない日常の景色だった。

だがその景色を見て私はふと思った。
私はこの工場が建つ頃にはどうなっているのだろうかと。

悲観している訳ではない。事実それで暗澹たる思いを抱いたということもない。
だがじんわりと、その思いは私の心に広がっていった。

つまらない言葉で言えば先の事など誰にもわからない。それは良い意味でも悪い意味でも。
その事実は私の心に温かく薄暗い感情を抱かせたのだ。

もしかしたら今より辛い状況になっているかもしれない。
もしかしたら今より幸せな状況になっているかもしれない。

いや、私の心はそんな単純な思いだけではなかった。未来、それだけではなく今と過去の色々なことがない交ぜになって私の心は満たされていた。

その工事現場の景色は車窓からすぐに過ぎていった。
私は車窓を眺めていて良かったと思った。

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