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今年の2曲目

今年の2曲目、中島みゆき詞“時刻表“、聴きました。

やる瀬ない、という感情に囚われる日があります。「思いを晴らすすべがない。切ない」「施すすべがない。どうしようもない」。辞書は、そう注釈します。

そういう感情に囚われて、今ならこうしてネットを通じて世の中とつながる人もあります。

40年前のこの歌は、「今夜じゅうに行ってこれる海はどこだろう」と駅の時刻表を見上げる人物の風景を歌います。

海を見ても、やる瀬なさが消えたりしない。また明日から、相変わらずの日常が続く。それでもいっとき、心は海を目指す。この歌は、都会人の諦観の歌です。


時刻表

街頭インタヴューに答えて 私やさしい人が好きよと
やさしくなれない女たちは答える
話しかけた若い司会者は またかとどこかで思いながら
ぞんざいに次の歩行者をつかまえる
街角にたたずむ ポルノショーの看板持ちは爪を見る

きのう午後9時30分に そこの交差点を渡ってた
男のアリバイを証明できるかい
あんなに目立ってた酔っぱらい 誰も顔は思い浮かばない
ただ そいつが迷惑だったことだけしか
たずね人の写真のポスターが 雨に打たれてゆれている

海を見たといっても テレビの中でだけ
今夜じゅうに行ってこれる海はどこだろう
人の流れの中で そっと時刻表を見上げる

満員電車で汗をかいて肩をぶつけてるサラリーマン
ため息をつくなら ほかでついてくれ
君の落としたため息なのか 僕がついたため息だったか
誰も電車の中 わからなくなるから
ほんの短い停電のように 淋しさが伝染する

誰が悪いのかを言いあてて どうすればいいかを書きたてて
評論家やカウンセラーは米を買う
迷える子羊は彼らほど賢い者はいないと思う
あとをついてさえ行けば なんとかなると思う
見えることとそれができることは 別ものだよと米を買う

田舎からの手紙は 文字がまた細くなった
今夜じゅうに行ってこれる海はどこだろう
人の流れの中でそっと 時刻表を見上げる
人の流れの中でそっと 時刻表を見上げる

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