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風雨

風雨にさらされて、町角の看板がすすけていました。朱色なのか、本来は注意を引く色で強調されていた文字の方が一層退色して、もう読めなくなっています。

色素とか、人間の感覚器の仕組みは、表現者の意図とは別にある、と知りました。

同じ光景を、駅でも目にします。「次の電車をご利用ください」、「いつもJ Rをご利用いただき」、「この電車は○○には停まりません」。

上り方向の男の声と、下り方向の女の声と、駅員の怒号とメロディーが押しのけ合い、打ち消し合って、注意と感謝、その他もろもろが素通りして行きます。

それら全てがシンと黙り込んだホームを夢想します。きっとみんな、何の故障もなく、互いに注意を払い、少し機嫌良く電車を迎え入れる。そう確信できます。


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