見出し画像

弱虫ペダル

※2023年6月にOFUSEにて配信されたコラムを編集し再掲したものです。


親愛なる友だちへ、ひねもです。


アプリで漫画を読むなんて、、、と思っていたけど使ってみたらかなり良い。

移動中や隙間時間にサッと読める。

コミックスで読むのはもちろん最高。

...だけど保管場所が必要だし、何冊も持ち歩かなきゃならないからね。。

アプリだと気にはなってたけど読んだことなかった漫画を手軽にに読める。

そうして数ヶ月前にハマったのが今更だけど”弱虫ペダル”なのです。

アニメ化を初め実写映画、さらには舞台にまでなった人気作品とは知っていたけど読んだことがなかった。


近年は様々なジャンルが出尽くしてることもあって、ニッチなところに焦点をあてた漫画も多い。

とはいえ自転車ですよ。

スポーツ漫画といえば野球やバスケやサッカーやテニス辺りが王道。

ドカベンやスラダンやキャプテン翼やテニプリとか。

乗り物漫画もほとんどが車やバイク。

イニシャルDとかブッコミの拓とか。



”自転車”の”レース”を題材にした漫画って。

…面白いのか?って思ってたわけです。



半信半疑で読み始めたらこれがとんでもなく面白かった。

主人公が自転車レースを全く知らないところから始まる。

なので、詳しくなくても楽しめる。


読んでいくごとに自転車への知識が増え”えっ!そうだったんだ!”の連続で驚かされるさことばかり。


”自転車”という乗り物は物心ついたときから誰でも身近にあったはず。

通学や買い物に使うママチャリとか。

我々に身近な自転車はこういう形。

しかし、その日常の“自転車”と“ロードバイク”は全くの別物。

ロードバイクは長距離を長時間、高速で走るためだけに存在している。

見た目からして違う。

サドルの高さもママチャリとは全く違う。

レース中のロードバイクは平均時速40kmとなんと原付バイクよりも早い。

下り坂だと時速70〜100km近くと車並みの速さになるらしい。

めちゃくちゃ速い!

そんなすごいマシンを使ってレースをするわけだけど

“自転車レース”

と言われてもいまいちピンとこない。



唯一知ってるのは“ツール・ド・フランス”くらい。

それも名前を知ってるだけ。

どういうルールや内容なのかは全然知らない。



漫画を読む前の僕の勝手なイメージの

”自転車レース”

は個人競技で、長距離と言ってもマラソンくらいの長さを走るのだろうなと。

それが読んでみたら全然違った。


ちなみに正しい呼び方は“ロードレース”である。

以下、驚いた点を説明していきたい。


まず”チーム戦”なのだ。

レースによってルールが異なるが4〜8人で1チームを作って戦うのだ。

ロードレースでは最初にゴールした選手が優勝となります。

そのように考えると個人競技のようにも思えますが、実はロードレースはチームスポーツなのです。

例えばステージレースでは4人〜8人の選手がチームとなって優勝を競います。

勝利を狙う「エース」とそのエースを支える「アシスト」で構成されます。

総合優勝を狙うにはエースの力が必要なのはもちろん、アシストの選手たちの能力も必要になってきます。

例えばエースの前を走って風よけとなりエースの体力を温存させる。

そのほかにも補給をチームに届ける、他のチームのペースを崩すなど、アシストの役割は実はとても重要なのです

https://spojoba.com/articles/398



しかも柔道や剣道の団体戦みたいに順番に戦うわけではない。

リレーみたいにバトンやタスキを繋ぐわけでもない。

よーいドン!でチーム全員で走り始めるのです。

そこがまず衝撃で。

テレビでこうした映像を見たことがあると思います。

わんさかいる選手たちは個人で走ってるわけではなく、実はチームで走ってるのです。

最初からチーム全員でスタートする。

しかし当たり前だけど最初にゴールするのはたった1人。

どのチームも”エース”と呼ばれるたった1人を誰よりも早くゴールに導くために走るのです。

それにビックリ。


各選手には役割があって

平地が速い“スプリンター”
山に強い“クライマー”
エースを守り導く“アシスト”
そしてゴールを狙う“エース”

がいる。

レースによって違いますが、ポイント毎に様々な賞がありスプリンターだったらスプリンター賞を目指す、クライマーだったら山岳賞を目指す。

だけれどもチーム戦なので状況によってはポイント毎の賞争いには参加せず、得意分野のフィールドだけどひたすらチームを引っ張るだけの場合もあるのです。

アシストは何百キロもエースを守り風除けになったりしながらひたすら走る。

エースは各選手に指示を出しながら最後の最後でゴールを勝ち取るために走るのです。

そうして総合優勝を目指す。


他のスポーツとはだいぶ雰囲気が違うのです。




例えば僕がお正月に見てる箱根駅伝の場合。

山に強い選手がいたら、山の区間に配置して走ってもらう。

リレー形式だから各区間を走るのは1人。

それぞれが得意分野の場所を走るわけです。


だけどロードレースはスタートからチーム全員で走る。

山道のスペシャリストであるクライマーも平坦な道を一緒に走らなければならない。

なので、それぞれが交代しながら前を走ってペースメーカーになったり、風除けになったり、励ましながら引っ張ったりと役割が目まぐるしく変わるわけです。

最後の最後にゴールを狙うエースもスタート地点から一緒に走ってるのです。

そこが特殊に感じる。


次に距離が凄い。

例えば、こないだの東京オリンピックのコースは

東京から富士スピードウェイまで。

その距離なんと244km!!

長距離過ぎ!

普通の人が自転車で走る距離って駅前までの通学通勤とか近所のスーパーとか。

遠出してもせいぜい2駅分くらいじゃないでしょうか。

常人の感覚だと”自転車で東京から富士山の近くまで行く”と言ったら正気の沙汰じゃないわけです。

もし、それを実際にやるとしたら途中で何泊かしながらとかでしょう。

それがたった1日で東京から静岡県まで!

しかも何百人とレースをしながら!



凄すぎ!



これが世界大会の“ツール・ド・フランス”だともっと凄くて、距離はなんと3500km前後。

日本に置き換えると北海道の端っこから沖縄の与那国島くらいまでの距離を走るらしい。

日程もなんと21日間とかなり長い。

途中には休日もある。

レースの真っ最中に休みの日があるって不思議だ。


他にもロードレースで驚いた部分は、自転車なので人間がエンジンとして漕いで進む。

そのためカロリーをすごく消費するので競技中に食事をする数少ないスポーツであるとか。

なんとレース中に10分に1回はドリンクを飲み20分に1回は食事をするらしいのです。

そして紳士のスポーツなので、食料や水分を敵と分け合ったりもする。

相手が落車したら待ったりもする。

カッコいいのです。


弱虫ペダルは高校生の部活なのでストーリーのメインはインターハイレース。

3日間かけてレースがおこなわれる。

1日目:江ノ島〜小田原〜芦ノ湖
2日目:芦ノ湖〜箱根峠〜沼津〜富士宮〜本栖湖
3日目:本栖湖〜河口湖〜籠坂峠〜須走口五合目

江ノ島から富士山まで。

何度も書いてしまうが、この長距離を最初から最後まで同じ人が走るのです。

なので、レース中の駆け引きがすごく面白い。


超長距離レースのため序盤で大きく引き離すとかはほぼ不可能。

ペース配分が重要なのだ。

だからといってゆっくり走って最後まで体力温存すればいいわけでもない。

ポイント毎や区間毎の賞があるので。

総合優勝を目指すには各日程のタイムも大事になってくる。

1日目に1位を獲っても油断はできないのだ。

最終日に先頭でゴールしなければいけないのです。



そして状況によってチームのメンバーを切り捨てなければならない。

チーム全員でゴールする必要はないのです。

誰か1人、つまりエースさえゴールすればチームの勝ちになるのだ。

なので最終日にどれだけ人数を残せるかも重要になってくる。

また見捨てるタイミングも。。

ゴールが山の上だったら、平坦道でスプリンターを見捨てるのだ。

スプリンターはそれをわかっていながら走る。

つまりその選手は初日にスタートした瞬間から自分はゴールまで辿り着けないって知ってるのです。



そこが自転車レースを知らなかった僕からしたら衝撃で。

個人競技で全員がゴールを目指して走ってるとばかり思っていた。

実際のレースはロケットの打ち上げみたいに、1人ずつ減っていき最後はアシストとエースの2人だけになる。

そのアシストもゴール直前でエースを送り出したら役目は終わりなのです。

たった1人をゴールに届けるためにチームで走るのです。



漫画では主人公の小野田坂道くんが自転車に無知なところから大会に参加する。

なので、レースに対する驚きや葛藤がたくさん描かれていて。

僕みたいな門外漢も共感しながら読み進められる。



メンバーの切り離しは自転車レースなら当たり前のこと。



なので自分のチームのエースがゴールした場合はそこから数十キロ離れた地点で自身は途中でリタイヤしゴールまで辿り着かなかった選手も連絡を聞いた瞬間にガッツポーズをするらしい。

自分は役目を果たしたのだと。



他の競技で例えるとサッカーで自分のチームが得点したら全員で集まって喜びを分かち合ってますよね。

あんな感じのイメージ。

実際にボールをネットに叩き込むのは1人だけど、そこに至る過程ではメンバー全員の力が必要。

ロードレースもそういった団体競技なのです。


また長距離レースなのでトラブルも付き物。

自転車という乗り物を使って走るので、タイヤがパンクしたりチェーンが外れたりフレームが折れたり。

不慮の事故があるのです。

また車やバイクと違ってエンジンは自分自身となるので怪我のリスクもある。

まさかのタイミングで捻挫したり肉離れになったりする可能性もある。

何日もかけてのレースだと体調管理が大事。

最終日まで走り切る必要がある。

エースの役割で頑張ってた人が最終日に体調を崩し走れないというトラブルもあるのです。

そうすると作戦変更し、アシストがエースになり途中で見捨てるはずだったスプリンターも最後まで引っ張る役目になったり。

またレースが進むとさらに脱落者が出たり。

目まぐるしく状況が入れ替わるわけです。

それをチームで対処しながら走る。

凄まじい頭脳戦なのです。



常に駆け引きがおこなわれている。

当たり前だけどレースはリードした方が有利。

敵チームは今だ!と思ったらどんな場面でも全力で引き離しにかかる。

しかし、今は離されてしまってもどこかで抜き返せば良いのだという考えもある。 

それが明日で100km後だとしても。

そこで追いつきさえすればいいのです。

だとしたら、そこで勝負に乗ってしまうのは無駄に体力を消耗されるだけかもしれない。

だが目の前で敵がグングン進んでるのを見るのは精神的にキツい。

そういった心理戦もあるわけです。

あえて勝負しかけて消耗させて敵を1人でも脱落させようとか。

勝負に乗るべきタイミングじゃないと判断してリードを許しすぎて何kmも先に行かれたら巻き返すのは難しいとか。

これをメンバーの体調や残りの日程や距離や自分の足や様々なことを考慮しながら走るのです。

身体も頭も心も全てをフルに使って走る。

ただ前に前に走る。

チーム一丸となって走る。

だけどゴールするのはたった1人。

すごくドラマチック。


レースのユニークな部分はわかったけど、舞台は道だけ。

身も蓋も無い言い方をしてしまうと

何もない田舎道や山の中をひたすら走るだけ

という。

そんな漫画が本当に面白いのか?と思ってたけど読み始めたら凄まじい駆け引きの連続で。

心理描写が素晴らしい。

各チーム、各選手の個性もしっかりあって。

たった1回のレースでコミックスだと9巻〜27巻とかなり長編なのですが全く飽きない。

距離でいうと100メートルくらいしか進まない回もあるのですが、ドキドキしっぱなし。

集英社ではないのですがまさに少年漫画の王道の”友情勝利努力”で。

あとは漫画だけど異次元超能力バトルではないのも僕はすごく好き。

各選手に必殺技はあるものの、基本的には普通の生身の人間が自転車を漕いでるだけ。

スーパーサイヤ人とか悪魔の実みたいな展開はない。

なのにめちゃくちゃ面白い。



作者の自転車愛も素晴らしい。

ストーリーを通して”自転車って楽しいね”ってずっと言ってるのだ。


レースだからもちろん勝たなきゃいけないんだけど、主人公の坂道くんは自転車に乗ってみんなで走れて楽しいなあってずっと思ってて。

そこが最高!!


以上、にわかではありますが弱虫ペダルを読んでロードバイク&ロードレースに興味を持ったお話しでした。

ブラザー、シスター、僕の推しは巻島先輩です。しょっ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?