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泣いたって始まらないのに7

「河田君にとってセックスって何?どんな意味あるの?」
大和は一瞬絶句した。
由美があまりにも平然と言い放つその言葉には、由美の怒り悲しみを感じて、喉が詰まってしまったのだ。
 大和は、ゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。
「セックスですか……僕も男?いや
男女は関係ないな。命あるものは
それぞれのやり方で、子孫を残す為の行為をします。それが本能です。ただ人間はそれ以外の楽しみ方を覚えてしまい、その中で僕も笹山さんも、その男性も生きています。それが現実。僕は、お互い合意して、肉体関係を持った事もあります。が、やっぱり好きな人とのセックスは幸せになれます。深く愛することが出来たと思える。それはきっと、誰でもがそう…感じるのでないでしょうか?」
確かにそうだ。
大和は間違ってはいないけど、そんなに簡単に……綺麗にまとめられては辛すぎるんだよ。
男と女の違いなのか? 
「じゃぁ……感じるってどういうこと事だと思う? 男性は抱いてる女性をちゃんと感じさせているの? それ知りたい。河田君には酷かな……でもね、それでも男性がどう思って女性を抱いてるか知りたい。」
大和は、自分でこの答えを出せるのか? 大した経験もない自分が……何を言えるのか。
それでも、由美の気持に答えたい! 言葉を探しては見ても、
判らないのだった。
「ごめんね……イヤな先輩だね。
私、その人から言われたり言葉が
どうしても理解出来ないの。
愛してる人に抱かれるって、とてもとても幸せ。正直私はイクとか感じてるとか判らないよ。大した経験もない訳だしね。そう言うのって……だんだん判るものだと思っていたんだけどね、どうやらそうでは無かったらしいの。私は不感症だと言われた。下手な演技が気持ち悪いともね。もう~絶句……だよね。そして、別れ話。自分には面戸見切れないから別れる。だいたい君は俺を愛してはいないんだよとまで言われたの。頑張るから……なんとか頑張るからって縋ったけどね。頑張るもんじゃないからな……って笑われた。彼は、そうやって私を締め出したのよ。為れでもなお、お願い愛してって……プライドなんて無かった。笑うよね」言葉と裏腹に、涙を拭っている由美の姿を見ていられなくて、大和は思わず下を向いてしまった。

「痛いよね、本当恥ずかしい……
こんな話、みっともないけど。
でも、その時は縋りたかった!
何を言っても駄目だったけど。
何一つ受け入れては貰えなかった。お互いの人生を考えたら、別れることが最善だって。
最善って何?誰のための最善? 必ずお前にも心から愛するひとが現れるから安心しろよってさ。
本当言われ放題。単に別れたかっただけなのに。だったらそこまて言わなくたって……ああ~身も心も不感症の私だから、そこまで言ったんだね」
大和は相づちさえ打てないでいた。
あまりの勢いに押されたのと、
いい加減に判った風な事は言いたくなかったのだ。
「もうねぇ、男性が怖くて怖くて仕方ないの。誰かを好きになって、また土足で心を踏まれたら、女性やめるしかなくなる。あれから恋愛部門崩壊しちゃったんだ。おかしいいと思うけどね。
弱いと思うし、情けないとも思うけど、どうにもならない。だから河田君の気持ちには答えられないの。ごめんなさい。こんな話し……長々しちゃって疲れたよね。本当痛すぎるでしょ、私」
由美は無理矢理笑おうとしたが
頰は強張るだけだった。

 大和は由美を見つめながらしっかりとした口調で、
「思い出したくない事や、口に出すのも辛い事を話させてしまってすみませんでした。でも聞かせて頂いた事に感謝しています。有難うございました。そしてあらためて告白させてください。笹山さんが好きです。大好きです。僕の事見てください。傍にいさせてください。お願いします!」
大和の真っ直ぐな想いも、今の由美には絵空事に思えて、何も言えなかった。
信じられない。それだけだった。




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