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泣いたって始まらないのに14

 由美は言葉を選びながら、
「ふたりは何年付き合っているんだっけ」
「もう五年になるね~ まぁ色々ありますよ、ってかさぁ。 核心つきなよ、わたしたちの仲なんだから」
爽子は由美の空になったグラスにお酒を作りながら言った。
「じゃぁ質問。爽子は旬君が初めての人って言ってたよね。旬君の方は?」
「ひとり、ふたりは経験あるって言ってたかな? わたしだって旬の前にキスぐらいした人はいたけどね。でもねぇ、恋愛ごっこ的なものだったから。本当、恋愛経験値自体が低かったんだよ。ふたりともね。だからほぼお互い初心者だよ。アハハ。今でこそセックスについて色々話すようになったけどね。あっ、逆に話さなかったら、前には進めなかったよ」
「進めない?」
「そう、話してなかったら別れてたね。わたしは何もわからないマグロ女だったし、旬だって自分の事で必死なくせに、自分のやり方はわたしを満足させているって思いたいし、思わせたいし……いや思え的な感じだったから」
「爽子はそれを受け入れながら、ほんとの所どうだった?」
「わたしは、頭でっかちて言うか、初体験に期待? わからないなりにイメージがあってさ。由美だってあったでしょ?」
「そりゃ期待もするし、イメージ膨らますよ」
「だよね。でも実際はさ、何だこれ的なオチだったからね。由美の初体験は?」
由美は空をにらみながら、
「覚えてるのは信じられないほどの痛みと、翌日襲ってきた驚異の全身筋肉痛」
「はぁ?アハハハハ。おっとその話今度聞かせてよね。わたしも覚えてるのは、痛い痛い痛いの連呼だけ。旬はその声に焦りまくりでさ。結局その日は散々よ。それから逢えばするんだけど。これまた
酷かったよなぁ。わたしだって頑張りましたけど、だんだんセックスが嫌になってさ。それで喧嘩が始まる訳さ。こんなに旬が好きなのに……たかがセックスでって言ったら、旬が、あり得ないくらいの剣幕で怒るのよ。もうこんなに毎日喧嘩してるぐらいなら、別れた方が良いよって言ったの。だって辛かったからさ。旬を大嫌いになりたくなかったし」
爽子はそう話しながら、福岡で旬と愛し合った事を思い出していた。
「そしたら旬君はなんて?」
「えっ?あっ! 嫌だって泣いたんだよね。びっくりしたよ。大学生の男がさ。いつも俺様的な事ばかり言って居る奴がだよ」
「泣いた? 旬君が?」
「うん。でもわたし酷いよ。追い討ちかけたんだよ。旬はあっと言う間にいっちゃうとか、旬とのセックスには、何にも感じてないよとか。感じる暇ないとかね。本音言えばわからないと思わない? イクとか、感じるとかさぁ、経験ないんだから」
「それも言ったの?」
「言ったよ。別れるつもりだったから。普段は優しい俺様なのに、セックスになるとボケナス俺様になるってねそしたら、ふたりで勉強しようって言ってさ」
「勉強?」
「そう、だけどその前に、足りないもの見つけないとだめだなって思った。それがなにか良く判らないから。だから、まずはふたりでいる事を大切にしたいって言ったの。まぁ心のスキンシップだよね。触れるとか触れないとかは二の次。心が付いて行けてなかったのに、セックスに振り回されていたんだから」
「わかるんだけど、でもさお互い大好きで、何が足りなかった?具体的には?」 
爽子は笑いながら、
「由美は可愛いねぇ〜それがわかってたら苦労しないのさ」
「ある時旬がさ、募る想いをいっぱい感じたいし、感じさせたいって。セックスに嫌悪為ているわたしが、心から旬を求めるまでは、セックスしないって言うから。
ここからセックスの勉強が始まるんですよ。だって、私も枯れてるわけではないんだから、セックスの良さ?を知ることはができれば良いわけだし。勉強よりセックス勉強をしたから。フフフ」
 由美は驚きもしたし、感動もしていたが、敢えて意地悪な質問をした。
「凄いなぁ本当に凄い! でもさふたりなら別れても、モテるんだから、また好きな人できたんじゃない? なのになんでそこまで?」
爽子は由美をじっと見つめたまま、
「なんでだろうね。わからないんだよ。ただ旬もわたしも、その時思ったことは今も変わらいんだよ。お互いの隣はコヤツのものだって事。イヤー照れるわー   じゃ、いよいよわたしたちのセックスについて話すよ! 由美準備はいいか!」
爽子はウーロンハイを一気に飲んた。


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