コミュニケーションの教科書 #11 コミュニケーションの障害への改善
コミュニケーションの障害
「知」の領域のコミュニケーションは、コンピューターが行っていることにあまり変わりありません。人間的なコミュニケーションとは「情」「意」を重視し、それらをを出来るだけ素直に表現する(話す)真摯に受け止める(聴く)ことです。
しかし実際には様々なコミュニケーションの障害があり、言うや易く行なうは難しいものです。この障害を克服するために、コミュニケーシヨン・トレーニングが不可欠になってきます。
(※1.知・情・意の領域のコミュニケーションについてはコチラを参照)
(※2.様々なコミュニケーションの障害についてはコチラを参照)
上手くいかない自己の表現タイプ
コミュニケーションにおいて、人間の自己表現は大別して二つのタイプに分けられます。一つは支配的・攻撃的な自己表現をするタイプであり、もう一つは従属的・服従的な自己表現です。
支配的-攻撃的タイプ
社員Aさんはこのタイプで、上司Bさんから明日までに書類を作成するように指示された。
Aさん:
「そりゃ無理ですよ。ごらんの通り、前の書類作成がまだ継続中で、手一杯ですよ。これは前からわかっていたことで、何でもとっ早く誰かに頼まなかったんですか。あなたの責任ですよ。」
こういわれたBは屈辱感をもち、Aさんに対し「上司に対して失礼だ。もう2度と頼まない」と怒りを感じることもある。怒りを感じないまでも感謝や安心感などからは程遠い感情を持ちます。
このタイプの人は自分の主張はハッキリ言うが、相手の言い分や気持ちをほとんど考慮しなぃで、押し付ける形を取ります。また勝ち負けにこだわり、その場の主導権を握り相手を支配したがる傾向を持ちます。しかし、一見強そうに見えるが、内面では防御的で人の批判や反応を気にし、必要以上に強がることも多いのが特徴です。
服従的-消極的なタイプ
社員Cさんはこのタイプで、上司Bさんから明日までに書類を作成するように指示された。
Cさん:
「うーん、明日までですか・・・ちょっと、今は・・・困ったな・・・誰かいませんか・・・うーん。弱ったな・・・」
このタイプの人は、自分の言いたいことを言わなかったり、曖昧に言ったりするので、一見相手に同調しているようではありますが、内心は単に自信がなく、相手に悪く思われたくない気持ちが強いです。ズルズル引き受けて、やってあげたのに感謝の気持ちがないなどと、相手に対し、恨みがましい感情を持ったり、ノーと言えなかった自分に嫌悪感を持ちやすいのが特徴です。
上手くいく自己の表現タイプ
上手くいく自己主張のタイプはアサーティブタイプ(爽やかな自己主張)です。アサーティブは「自他尊重の自己表現」と言われ、基本的発想は以下のようなものがあります。
人間一人一人はそれぞれが対等な価値を持ち尊重されるべき存在である。
人を支配したり操ったりするのではなく、また人に支配され、操られるのではなく相手の正当な権利を阻害せずに自分の正直で率直な気持ち(情と意)を表現する権利を持つ。
両者の言い分を十分に考慮して、お互いに納得のいく解決策を創造する。
上司Bさん:
「Aさん、あなたが今抱えている仕事は沢山あることは分かっているのですが、この仕事は早急に行う必要があるのです。私が今の仕事をお手伝いをするのはどうでしょうか?それで空いた時間をこの仕事にまわしてもらえますか?この仕事は、あなたが良く知っている会社の書類ですから早く仕上げられますよね」
ここでの上司の言い方は、
事態の客観的な説明
→「この仕事は早急にしないといけない」
感情体験の率直な表現
→「手伝うよ、この仕事はあなたの方が速く処理できる」
事態を解決するための提案と協議
→「今の仕事の手伝いをすることで、空いた時間をこの仕事にまわす」
の3段論法になります。
これは第1段階で、相手の事情を理解したこと、自分の事情を客観的「知」に相手に伝えることです。第2段階は、それによって起こる自分の感情を相手に伝え、分かってもらうこと。第3段階は、可能な限り双方にとってマイナスや不平等、不快な結果にならないようにしたいという「意」の自己表現です。
アサーティブな言い方のトレーニング
人間のコミュニケーションのやり方は、
非主張的(自分の欲求をさておいて、相手に従う)
攻撃的(相手を思いやらず、自分の欲求を通す)
アサーション(自分の思っていることを相手に分りやすく伝える。それと同時に相手のことも理解しようと、きちんと話を聴く。いい意味での妥協点を探す)
の3つに分類されます。アサーティブな表現は、きちんとした練習を繰り返し行うことが必須ですが、その下にある自分の価値観、人生観、人間観に気づくことが第一歩です。他者も自分と同じ価値・権利があると考えないことです。
「人を一段下に見下す」
「人から見れば何でもないことも自分には大きな問題に見える」
「悪いことは全て自分のせいだと思う」
「物事を、強者:弱者 正しい:正しくない 好き:嫌い 上:下 という二分法でしか見られない」
「自分には出来ない、無理とまず考える」
などという見方を、自分が基本的に持っているかもしれないと考えてみることが大切です。そして、そのような偏った見方を、自分が持っていることに気づくことがアサーションの第一歩なのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?