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コミュニケーションの教科書 #1 人はコミュニケーションせずにはいられない


はじめに


One cannot not tocommunicate.
(人は他人とコミュニケートせずにいられない)


 2008年6月に発生した秋葉原連続殺人事件は多くの日本人に動揺を与えた事件でした。メディアを中心にいろいろ取りざたされ、原因についてもいろいろな意見が飛び交っています。そのひとつに携帯電話の掲示板サイトに独り言のような書き込みが多く、孤独感が募っていたのではないか等の意見も多く言われています。この事件については今後いろいろな観点から原因が追究されると思いますが、このような事件は2度と起こらないでほしいものです。 

 コミュニケーションを概念として説明することは非常に難しいことです。多くの専門家が定義を行っていますが、その内容は統一されていません。この言葉はビジネス界でも日常的によく用いられていますが、その認識が共通であるとはいえないことから始める必要があります。

 例えば、企業ではΓコミュニケーションが大事」とよく語られます。この場合の「コミュニケーション」もやや抽象的です。この場合「コミュニケーションを良くする」というと、報告をまめに行なうことと捉えられて、積極的に会話の「回数」を増やせぱ問題は解決すると考えてしまう企業が意外に少なくありません。従って「コミュニケーションスキル」を向上させるための研修をしていない企業では、直接応酬法のように「あなたの考えは正しくない」とストレートこ答えることで相手の感情を害し、結局、コミュニケーションが円滑に行なわれないという問題も起こっているのが現状です。

 世の中においておおよそコミュニケーションに属する行為は様々な階層(コミュニケーションレベルという)で行われています。ビジネスコミュニケーション分野では、「企業の活動とは、コミュニケーションの集合体である」と考える者もいます。また、コミュニケーション分野の研究は、領域が非常に広いことも挙げられます。

コミュニケーションの定義


 コミュニケーションの和訳には多くの意味があり、狭い範囲ではとらえどころがないのが実態です。辞書で引くと、多くの意味が出てきますが、結局どれのことを一言で指すのかいまいちわからないことが多いです。

伝達、交信、通信、連絡、情報、消息、意思疎通など

 これまで研究書や論文の中で用いられてきたコミュニケーションの定義だけでも126種類もあると言われます。そのひとつとして、アメリカの社会心理学者ボーローの定義を用いると、

 「コミュニケーションとは、ある人が、何らかの目的なり、意図を果たすために、それに関連する内面の様々な心の動きの一部を選択し、何らかの手段を通じて表現し、それを他者と共有しようとする過程である。その結果、関係者間で何らかの変化が生じることである。」


(1)目的なり、意図を果たすために

 コミュニケーションの本来の目的は、社会の一員として自分が「存在」し、その社会に「適応」するため、人間として「成長」し続けることです。
そのために以下の4点が重要になります。

  1.  個人的な安心を得ることを目的としている。

  2.  不満や緊張を和らげることを目的としている。

  3.  要求や期待を成就することを目的としている。

  4.  社会的承認を受けることを目的としている。


(2)内面の様々な心の動き

 上記の目的を達成するために、相手に伝える内容に関しては、そのときの「心」動きを「知」「情」「意」に分け伝えることです。

  1. 「知」とは知性(思考、判断、創造、記憶など)の働き指し、我々の持っている知識、価値観、信念、アイデアなどで産れた後で学習したものです。

  2. 「情」とは喜怒哀楽という「情動」と不快、心地よい、安心、緊張などの「気分」に分けられます。

  3. 「意」とは、生きようとする欲望である「意欲」と意欲に知性が加わつた「意思」「意図」「期待」になります。

例.
 ある従業員が急に休みを取りたいと管理職に申し出た。これは「知」と「意」の領域であるが、この時の自分の状況、管理職に対する個人的感情、周囲に対する気持ちなどのような「情」により、コミュニケーションは異なったものになります。

つまり、「知」と「意」の領域であっても「情」の影響力は絶大になるということです。

(3)何らかの手段を通して

 自分の気持ちや考えを伝えるには、声、文字、表情、動作といった身体の外ヘ表すものを手がかりにしなけれぱならないが、手段としては2つあります。

①言語によるもの(バーバル)

②非言語によるもの(ノンバーバル)

(4)共有する過程

 コミュニケーションの語源はラテン語のCommunicareという言葉です。この意味は「伝える」という意味ではなくて、「共有する」「共通する」つまり、人と人が分かりあえることで、自分の伝えたいことが相手に正確に伝わることで、共通理解の成立がコミュニケーションになるのです。

(5)関係の変化

 コミュニケーションによって、人間関係にはいろいろな変化が起こってきます。

  1. 断絶・離反:関係そのものを断ってしまう。

  2. 対立・平行:関係はあるが近づかない関係。

  3. 主従・依存:一方がもう一方を支配する。

  4. 協働・協力:対等な立場で物事を一緒に対処する。

  5. 共感・愛:相互に理解し受け入れ合う。

こちらは、当事者間のコミュニケーションが「共有的」であったか否かで、対立から協働に変わったり、共感から主従になったりする。その変化はかなり頻繁におこり、決して固定的なものではありません。

コミュニケーションの効果


(1)効果の原則

 コミュニケーションの効果を積極的に高めるには、次の原則を適用します。

  1. ライン・口スの原則
     コミュニケーションの効果は、その伝達経路の長さに反比例します。直接会って話すことが最もよく伝わります。

  2. 感情的アピールの原則
     感情に訴えるほうが理性に訴えるよりも意志を強く伝えることが出来る場合が多いです。人間は理性の動物ですが、それ以上に感情の動物です。

  3. 繰り返しの原則
     繰り返しによって伝わり方が良くなります。強調点は綴り返すのがベターです。

(2)AIDMAの原則

 人にアピールし、行動を起こさせたいときに、働きかけの手順があります。

A - Attention:まず注意を引きつける

I - Interest:「おもしろそうだ」と感じさせる

D - Desire:「してみたい」と感じさせる

M - Memory:記憶する、検討する

A - Action:行動に移らせる

 コミュニケーションの目的は、単に情報を伝えるだけでなく、意志(要望、期待)を伝え、そのとおりに相手を動かしたいというものです。この場合は「説得」「宣伝」となります。「説得」は重要なコミュニケーションです。

コミュニケーションのステップ



一般的なステップは以下の通りです。特に状況をどう読むかが重要です。

(1)伝達内容を整理し明確にする

  1. 伝えたい内容を明らかにする。

  2. 論理的に構成する。

  3. 5W2Hを活用する。


(2)表現力法、言葉づかい、用語に注意する

  1. 受け手の言葉、用語になっているか。

  2. 箇条書きにする。

  3. 強調点をハッキリさせる。

  4. 態度、表情、声、目線を役立たせる。


(3)伝達方法を考慮する

  1. 口頭、文章の選択。

  2. 図表などを使い視覚化する。

  3. 会議、対個人、回覧、メモの選択。


(4)相手が理解、納得するかどうか、状況の検討

  1. 受け手の立場、感情などの状況を考える。

  2. 受け手の環境、場所はそれでよいか。

  3. 受け手に受け入れる準備があるか。


(5)内容が正しく伝わったかどうか確認をする。

  1. メモを取らせる。

  2. 復唱してもらう。

  3. 理解できたかどうか質問して確かめる。


次回


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