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地域と関わる田舎暮らし

左右の指を交互に組み手のひらを体の外側に向けて、
ぐーっと上へ押し出すように腕を耳の横で伸ばしてみてください。

私の朝のルーティンなのですが、太陽のほうに体を向けて張り詰めた静けさの中で澄んだ空気を深く吸ってゆっくりと吐きます。
吐息は真っ白です。

さて、少しずつ手をほどきます。

腕も下ろして楽になったところで
2021年の日記を紐解いていくことにします。

適当なところで開くと
そこにはとても親切なおばあさんとの思い出を書いていました。

おばあさんの好きなごはん屋さんや温泉に連れて行ってくださり、ご家族やお孫さんにお会いできる機会もありました。
県外から夜行バスで帰ってきた時は、
バス停まで車で迎えに来ていただいたことも本当にありがたかったです。

ご近所なので、初めてお会いした日は空き家と空き地を活用するんですと挨拶に伺った時でした。
お話の中で、町内の組み(グループ)が違うことを教えてくれました。
「わたしは組みが違うもんでね」という方言も
おばあさんとの会話で知ったことです。

おばあさんの息子さんが作られた鉄パイプの立派な車庫があり、色々なお花を育てているお庭があるおうちでした。
お庭には、スイセンやアサガオ、マリーゴールドなど季節のお花が咲いていて、幸せの白い花もあるんだよとにこっと笑いながら楽しそうに話をしてくれました。

足がわるいのにいつも帰り際には、わざわざ外までお見送りを
してくれる優しさを今でも覚えています。

しばしばご自宅に招いてくださったので、軽食を食べておしゃべりしながら過ごしたことが懐かしいです。
いつも冷蔵庫には麦茶のペットボトルが入っていて必ず1本くれました。
インスタントラーメンや長野名物牛乳パン、おにぎりなど私の分も用意がありました。他にもとても大きなアジフライ、さくらんぼにキウイフルーツに。

「美味しいですね!」「そうだね、美味しいねぇ」と過ごす時間の中で
何を食べるかよりも、誰とどこで食べるかのほうが大切だと教えてもらった時間でした。

居間でおばあさんの昔話を聞いていると本当にあっという間で、泊まっていきなと泊まらせてもらったこともありました。

こんなに甘えていいのかなと申し訳なくなるほど、あたたかい心で包み込んでくださるおばあさんです。

線路を挟んだ向こう側に7月までお住まいでしたが今は遠くにお引越しをなさったので、もうご近所さんではなくなってしまいました。

田舎でなければ、短い期間でご近所さんとこんなにたくさん関われることはないでしょう。

田舎には昔から変わらないよさが無限にあって、その一つは「人」なのではないかと思います。

地方創生とは、その地域に住み地元住人のひとたちと関わることなのではないかとも思いました。
それは、おばあさんとのお話の中で田舎のご高齢者が困っていることは町の美化活動に参加できないことだと感じたからです。

この町が好きだけれど、思うように体が動かせず除草や清掃活動などができないことが心の負担にもなっている気がしました。

若い世代が田舎に来ることを喜んでくれたのは、その地域の活動に当然出てくれると思っていたからなのかもしれません。

出不足金を支払えば参加しなくても問題はないですが、働き世代は仕事で出れず、おじいさんおばあさんになれば身体が不自由で動けない方もいるので、田舎に住んで関わってくれるひとが増えることは必要だと考えます。

地域によって人柄は違いますが、農ある暮らしが根付いている辰野町でひととお話すると物腰が柔らかくなれます。

今年は自治会の共同作業に関われなかったので、来年は参加させていただく予定です。

おばあさんの好物のブルーベリーと、おばあさんが好きな色のお洋服しか
お礼として渡せなかったので、来年はいただいたたくさんのご厚意をおばあさんが住んでいたこの町に返していきます。

それでは、2022年も引き続きHinataboccoをよろしくお願いいたします。

@furuka.mera

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