103 / ひろゆき似のネカフェ店員
仕事、というか人生の満足度においては “嘘でもいいから前に進んでいる感覚” というのを持つのが重要らしい。
売れないアーティストは、毎日自分の歌をSNSに投稿することで、自分は少しずつ理想のステージへ近づいている、やるべきことをやってると実感したいのだと思う。
しかし、毎日誰かの曲をカバーして、なんとなくいいねやコメントがついて、そこで承認欲求が満たされてしまうのも考えものだ。プロの世界では“頑張り”だの“努力”だのはカウントされない。
自分がまだ結果を出すための過程段階なのにも関わらず、そこでなんとなく承認を得てしまうと、自分が本来目指していたところになんとしてでも到達したいという気持ちが落ちてしまうのではないか。
誰からも評価されず、『ステージに立って圧巻のパフォーマンスをしたい』『自分の作った曲がそこら中で流れて気に入ってもらいたい』そんな欲望をふつふつと自分の中に溜め込んでおき、来たるべき時に爆発させるという方がいい結果に繋がるのかもしれない。
大事なのは素振りという努力段階を見てもらうことではなく、試合でヒットを見せつけることだ。それ以上もそれ以下もない。素振りを褒められることに味を占めてしまうと、試合でヒットを打って認められたいという欲は少なからず下がるだろう。
『努力を人に見せるな』という言葉の真髄はこれに尽きる。高校野球で全く結果を出せなかったぼくの思うことだ。どれだけ手にマメを作っても、残念なことに結果は出ない。
ネカフェのシャワー上がりになんとなくブログを書き始めたら、こんなことを書いていた。違う、もっとたわいもない日常的なことを書きたかったんだ。
「21時ごろには帰ってくるよー」
と言って家を出た。
22時半まで歌っていた。
ぼくはことごとく時間を守れない。守れないというか、守る気がないというか、自分でもよくわからない。
うちの家族は18時に晩ご飯だとわかっているから、それまでにランニングとシャワーを済ませようと、頭の中では17時に外に出る計画を立てる。
しかし実際外に出るのは17時50分。筋トレしたり、走ったりして帰ってきて、ぼくだけ1人で晩ご飯を食べることになる。なんか、時間が守れない。
フライトを逃した事は数しれず。高校の時は遠征のバスに乗り遅れた。人と会う予定はほぼ確実に遅れる。
「時間守れない奴嫌いなんだよね」という人にはことごとく嫌われるだろう。ごめんなさい。何を変えることができても、これだけは変われません。なんか、守れないんだもの。24年間そうなんだもの。
なんとなく終電が23時だった気がしたので、夜道を熱唱しながら駅へ歩く。23時5分に到着。
【 佐々行き 23:00 】
終電に5分遅れてしまった。東京では0時を過ぎても電車が走っているけれど、ぼくの地元は23時が終電らしい。はぁ。もう商店街で寝るか。
人通りのなくなった商店街に寝そべって、本気で寝ようとしてみるも何故か眠れない。あ、そういえば今日BBクリームを塗ったんだった。これだけは落としたいなと思い、ネットカフェへ。
「あと5分お待ちいただけると、平日料金でご案内できますが、どうされますか?よかったらお掛けになってお待ちください」
と優しい女性のアルバイトさん。『どれだけやっても給料は変わらない』という時給制の環境だからこそ、自分の純粋な優しさや利他的な心で接客と向き合うことができる。かける言葉のいちいちに、下心は一切ない。
完全歩合制の営業職だとそうはいかない。無意識のうちに自分の利益の為に言葉を選び、利益の為に頑張るようになる。どんな給料の貰い方をするかどうかで、人格はコロッと変わってしまう。
そんなことを考えながら受付でドバイの身分証を渡すと、たどたどしている優しい女性アルバイトさんが、「少々お待ちください」と上司に確認をとりにいった。
上司が裏から出てきた。
「いやぁ、UAE(ドバイ)の身分証は初めて見ましたよ。本人確認としては問題ありません。」
もう完全に顔がひろゆき。ひろゆきがネカフェで接客してる。
「あ、よかったです(いやぁ、ひろゆきに似過ぎでしょあんた)」
今にも上がろうしている広角を必死に抑え、本人を見ながら笑うのはアレなので、優しい女性アルバイトさんに目をやって、フッと笑った。
そんな今日の何気ない日記。
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