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失敗、万歳!利用者の失敗を支援する仕事

社会福祉士、精神保健福祉士のぽこです。
「もっと気持ちよく働いて、明日の自分にワクワクしよう!」
をコンセプトに、自分で稼ぎを作れる福祉職を目指しています。

毎日一つ、明日の自分の人生にワクワクできるようなトピックを発信しています。

◇剣士の傷は勲章

突然ですが、ワンピース読んだことありますか?
「海賊王に、俺はなる!!」
その言葉を聞けばピンとくるものでしょうか。
4歳上の兄の影響で、少年漫画ばかり読んでいた私は、ワンピースも大好きでした。
その中、ゾロという剣士が登場します。
ゾロのセリフで、私が好きな言葉。
「背中の傷は剣士の恥だ」
という言葉です。
負けそうになった時、背中を向けて逃げることより、真っ向から敵を迎え撃つゾロ。
体の前側には傷がたくさんです。
剣士は、戦ってきた分だけ傷がある。
その傷が、今までの闘いぶりを物語っている。
そんなことを感じたのを覚えています。

◇障害者支援での話

また突然話が変わります。
今度は、私が働く救護施設での出来事です。

私が日々関わる利用者は、地域での生活が難しくなった人たちです。
金銭面での破綻、自己破産、ホームレス、ゴミ屋敷、DV、家族との離縁・・・
色々な理由で入所している彼らは、いずれまた地域に戻るために日々訓練をしています。
朝起きてご飯を食べること。
日中は起きて活動すること。
理想は園内作業をして過ごすこと。
夕食を食べ、眠ること。
日常の動作一つ一つできるようになるために、毎日職員とあーでもないこーでもないと話し合い(喧嘩になることも。笑)をして訓練しています。

彼らは知的障害も相まって、自分の現状と理想のギャップを受け入れることができないことがあります。
その結果、現実とはかけ離れた要望を訴えてきます。

気に食わないことが一つでもあると感情コントロールができなくなって怒鳴り散らかしてしまう人が
「私働きたいの」と就職を希望したり。

1週間のうち合計30分も作業に参加できていない人が
「地域で一人暮らししたい」と不動産会社に連れて行くよう言ってきたり。

そんな彼らに私たち職員がよく言うのは
「そんなに言うなら、やってみな」
です。

・全くうまくいかない

もちろん、職員から事前に助言します。
今の状態を一緒に確認したり、理想とのギャップについてわかりやすく伝えたり。
それをしても尚、「それでもやりたいの!!!」と怒鳴り散らかされます。笑
彼ら自身、言葉で説明されてもわからないと言う側面もあるでしょう。
でもそれ以上に彼らを突き進めるのは、「やったことがない状態」への拒否感なのではないでしょうか。

うまくいかないかもしれない。
でも、やりたい。
それが本当の心の声なんだと思っています。
理想に対する現実理解が追いついていない部分もありますが、それ以上に自分が求めることに向かえないもどかしさがモヤモヤするんだろうな。
支援者として、そう感じています。

でも明らかにうまくいきそうにありません。
就職を希望した人は、ハローワークで紹介された職場全てに断られたと泣いていました。
一人暮らしをしたいと言っていた人は、アパートの賃料を見て愕然としています。

全くうまくいかない。
でも、私たち支援者はそれを前進だと捉えています。

・みんなで失敗する

私の施設に入所している人たちは、色々なことに失敗してきている人です。
仕事をクビになったり、家を追い出されたり、家族に出て行かれたり。
そんな失敗を、自分一人で請け負ってきました。
しかし今は私たち支援者がいます。
一人で失敗するのは怖くても、支援者がいるところでなら失敗できる。
私は、これこそが支援のあり方だと思っています。

利用者が危ない目に遭わないよう、事前に小さな石を取り除くこと。
確かに転ぶことなく生きることができますが、石を取り除いてくれる人がいなくなった時、生きていけなくなります。
その人は起き上がり方を知らないからです。
傷の手当も知りません。
転ばないように生きる方法も、学んできていません。

ここで、剣士の話と繋がります。
自分の傷=失敗経験を、勲章として捉えることができるかどうか。
これは、支援者の手腕にかかっているのではないかと思うのです。

背中に傷はつけないゾロは、敵を真正面から受け止め続けます。
だから、傷がつくのです。
背中に逃げ傷がないのは、たくさん戦ってたくさん傷を受けつつも、絶対に逃げなかったから。

利用者の失敗経験を恐れずに、真正面から受け止める支援。
失敗を支援する、とでも表してみます。
失敗した時、「また仕事ダメだった」と一人で泣くよりも、支援者がいる環境で「何が原因だったかな?今回は何を工夫したの?どんな理由でこの職場を選んだの?」と壁打ち振り返りをする。

失敗しないように支援するのではなく、安心して失敗できる環境を整えること。
それが、入所施設でできる支援の強みだと思います。

◇自分で試したい

最後に、自分の気持ちを少し。
例えば、足元がガタガタで「このまま歩いていたら絶対転ぶよな」と思って道を避ける。
その避けた道で、転んでいる人を見るとします。

「いてー!!」と転んでいるその人を見て、私の中には二つの感情が芽生えます。
「やっぱりな。行かなくて良かった。」と自分の選択を肯定する感情。
もう一つは、「本当に痛かったんだ。」と自分の予想が本当だったと確かめるような感情。
そして、後者の感情には決まって「どのくらい痛かったんだろう」と興味がセットでついてきます。
例えば何と比べてどのくらい痛かったんだろう?
その道で転ぶことを避けた私には、その痛みを理解することはできません。
そして、転んだ人は次同じ痛みに遭った時耐えられるだろうに、私はその未経験の痛みに耐えられる自信がない。

やはり、自分で転んでみた人の方が逞しいのだと思います。

自分で戦って傷をいっぱいつけて強くなる剣士のように
自分で失敗して痛みや起き上がり方をまなぶ利用者のように
私自身もまた、知らぬ間に取り除いていた石ころと向き合う必要があるのかもしれません。

ということで、今日は失敗体験について考えてみました。
失敗、万歳🙌
そんなフランクな言葉で書き終えたいと思います。
今日も記事を読んでくださり、ありがとうございました💐


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