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酉(とり)の市にあって、蚤(のみ)の市にないもの

それは、愛犬ではない。今日のトップ画像は、本題とは全く関係のない、ただの愛犬自慢であるので、許してほしい。名前は”むぎ”です。かわいいでしょ。


最近の蚤の市は、ある種のフェスのようなお祭りムードだと思う。

確かにかわいいものがたくさんあって目がハートになってしまうのだけれど、あまりにも人気すぎて、天邪鬼な私はちょっと距離を置いてしまう。


そういえば、私の実家は母が自営業をしているので、昔からよく酉の市に行った。蚤の市よりもずっと頻繁に、毎年欠かさず行っていた。

小さい時の私にとって、冬のさむ〜い時期に家族揃ってするお出かけは、毎年楽しみにしているイベントだった。

大勢の人で溢れる境内、
会社の人間たちの活気溢れる空気、
境内のどこからともなく聞こえる三本締めの音。

その全部を、なぜだか鮮明に覚えている。

「今年もこうやって、3人で来られてよかったね。」
その言葉は、初詣とかの”健康で”という意味より、”仕事があって”という意味で、母の大変さが身にしみた。

決まって私たち家族は、人形カステラを買った。その記憶の中で人形カステラを売ってくれるのは、いつもは出会わないような、奇抜な大人たちなのだ。

金髪のお姉さん、刺青の入ったお兄さん。
お祭りって、不思議だなあと思っていた。


夜の食卓で、矢島さんが聞いた。
「お祭りの屋台の人って、何している人なんだろう。」

「お父さんが、ヤクザ系の人とかもやってるって言ってたよ。ほら、酉の市でも入れ墨がある人もいるじゃん?」
私は、思い出を遡りながら答えた。

「え、、、蚤の市にいるの?」

「いや、酉の市な。」


蚤の市に、あの人形カステラ屋さんがいたら。

それはそれで、ちょっとおもしろくなるだろうな。







言葉で、日々に小さな実りを。そんな気持ちで文章を綴っています。