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チャー坊のこと

やまちゃんが亡くなってからしばらくは、喪失感と悲しみの日々を送っていた。

猫バカになっていた私たちは、道で猫を見かけると最初のうちはやまちゃんを思い出して悲しくなるものの、どこでどんな猫を見ても「Awww」というような、へんてこりんな反応をして猫に釘付けになるという日々を過ごしていた。

海岸にいる野生ネコたちを去勢し、餌をあげている人たちがいて、そこへ猫飯をもっていって猫注入する日も多くなっていた。野生の猫だから人慣れはそこまでしていないけれど、中には寄ってきてくれる子もいてうれしかった。

一方近くの島では捨て猫問題、連れ去り問題などがあって、保護猫や地域猫への活動をしているグループにも注視していた。何かお手伝いできることがあればと。どんな距離感でやっていけばよいのか模索していたところだった。金銭的なサポート、預かり、など。しかし二人とも仕事で昼間はいないので、無責任に預かりといってもよくない気がしていた。

そんな時、近くの公園でいくつかのグループが集まって譲渡会が開かれる、という広告を目にした。口ではもうしばらく飼う気はないよ、と言っていた二人で散歩がてら行ってみようと思った。

犬も猫いる。猫たちの周りではすでに飼っている猫、しかも血統書付きの○○でねえ、と自慢話をする爺がいて、しかも保護猫をどうこうしようというわけでもない雰囲気にイラっとした。繁殖させられて買うってなんだよ、という怒り。

そこにチャー坊はいた。ケージの中で大きく見えた。のんびり、というか感情をあらわにしないといった印象だった。主催者の人が、
「名前はチャー坊と言います。」
と、紹介してくれた。風貌にあっているな、と思った。他も回って帰ろうというとき、なんとなく二人でもう一度あのトラ猫を見たいと思った。

戻って主催者に尋ねると、すでにトライアルする家族が決まっているという。もう飼わないとか言っていたのにがっかりしている私たち。帰宅後、なんとなくがっかりしながら彼のことが忘れられなかった。そこでとりあえずその団体の方にメールでチャー坊が印象に残っている旨を伝えた。

その後ほどなくして、チャー坊がトライアルへでかけた家で合わなかったという連絡があった。猫アレルギーがひどい人がいたという。そこからはトントン拍子に話が進み、チャー坊は我が家へやってくることになった。

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