猫記録3-② マイクロフト

僕は生まれてからそんなに長い間は生きていない。ようやく目が見えて周りが見えるようになった時、お母さんはいなかった。誰かの家の中で暮らしていた。ごはんももらえたし、トイレですることも覚えた。いつも家にいたその人が急にいなくなった。ごはんももらえなくなり、お腹が空いた。だからその家から飛び出した。

何か食べるものはないかと捜し歩いていたら、なにかベトベトするものにくっついた。一生懸命剥がそうとがんばったけれど、動けば動くほど全身がくっついてしまった。強くひっぱると毛が抜けそうですごく痛い。どれくらいたったのかわからないけれど、もう動く力は無かった。心も体も疲れていたのだ。

だから、目覚めたあといろいろなところでやさしくされたのはうれしかったし、今膝にのせてくれている人もやさしそうだから、又良い人に会えたと思った。相変わらずお腹は痛いけど、ごはんがいつも食べられるのはとても幸せなことだと思った。

僕を白い部屋へ連れて行ってくれた人とこの家の人もそこにいて、僕はみんなにとびきりの笑顔で愛情表現をした。しかし又カバンに入れられたのは面倒くさかったが、その後、その人の車へ乗せられ長い間我慢していたのだけれど、その間ずーっと話しかけてくれていて、その声が心地よくて又寝てしまった。

車が止まりカバンから出されたところは又別の匂いがした。
「どうぞ」
と言ってその人はカバンを開けてくれた。目の前には階段がある。その人が上っていったので、恐る恐るついて行ってみる。意外に上るのは大変で息が切れた。その人もうれしそうなので、僕もなんだかうれしくなった。

たぶん今度はここに落ち着くのではないかと感じていた。実は他の猫の匂いもしたのだけれど、階段はたくさんあるし、冒険しても良いみたいだし、何より好きにしてくつろいでね、という雰囲気が好きだった。

その人はマミーという人らしい。その日の夜もう一人人間が現れて、僕をみるなりahhhhと変な声を出して近づいてきた。変な顔をしているし、変な言葉をしゃべっていたから怖かった。でもやけに近づいてくるので、抱っこしてもらった。その人の手は大きくて、ぼくなんてすっぽり入ってしまう。だからこその安心感もあった。

前の家から持ってきたベットやトイレはそのままだったので、いつもどおり過ごせるのはありがたかったが、お腹が痛いのは解消していなかった。ウンチがちゃんと出すことができなかったからだと思う。

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