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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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#あの恋

ラブホテルに愛なんてないよ

相方は眠ってしまった。コンビニで買った、小さな日本酒の瓶を抱えて。ここら辺の相場よりちょっと高いよ、と言っていたラブホテルの一室。換気扇の音がうるさくて、スイッチを探した。 ラブホテルは、とても素晴らしいと思う。ラブホテル、という響きに、人々はあまりいい顔をしないけれど、今まで彼氏との貧乏旅行で泊まってきたホテルを思い出すと、あれならラブホテルの方がよかったな、と思ってしまうことが多々。ちなみに、彼氏と泊まった部屋のことは全く覚えていないくせに、毎回違うラブホテルの場所も、

タバコと万華鏡

我々は、心の通った人たちの落とした欠片を拾い集めた集合体に過ぎない。 元恋人が貸したまま譲ってくれた部屋着のパーカーを今も着ている。 ウォークマンに入れられた、自分では聞かないようなロックを今も口ずさんでいる。 使っていたいい匂いのする柔軟剤。ピアス。電話ぐせ。思いの伝え方。 上手な別れ方。 人は裏切るということ。 小さなころは世の中の嫌なことに逐一傷ついていた。 人は生まれながらにして、誰かに教わるでもなく裏切り方を知っているが、裏切られることに対して我々はあまりに

クリスマスが近づくといつも

好きかどうかわからない時、たいていの場合好きじゃない。好きじゃないことを受け入れたくなくて、わからないとかいってるだけだ。 はじめて人を好きになったのは、中学3年生のころ。15歳だったけど、ちゃんとこれはほんものだってわかった。クリスマスが近づいて、毎年思い出す。 * * * 塾が終わって、駅からバスに乗った。一番後ろのはじっこの席に座って、大きな公園のそばの終点まで。イルミネーションなんてない街を眺める。ダッフルコートのトグルを上まで留めて、フードまでかぶって、バス停

恋の証人。

これは本当に起こったことかもしれないし、そうじゃないかもしれません。 「俺、宏美とも寝てるよ」 男が口にしたのは、わたしの憧れの女性の名前だった。 ちょっとだけ虚をつかれて、眠気がとんだ。 深夜3時までだらだらと抱きあって、わたしたちはまだ裸でベッドに寝そべっていた。さっきまで繋いでいたその手が、あの優しい女性の体にも触れていたなんて。 バイト先のバーで、わたしが働き始めるよりもずぅっと昔に働いていた男とその女性、宏美さんは、いまでもそのバーにそれぞれ飲みにきていた。

エイトビートの恋人

「この小説の主人公が君にすごく似ているんだよね」 あのひとにそう言われて、学校が終わったあとすぐにJR名古屋高島屋の8階にある三省堂へと走った。愛知の田舎町から電車で1時間かけて名古屋の私立高校へ通っていたわたしにとって、こことタワーレコード近鉄パッセ店は心のオアシスのような場所だった。 真っ先に文庫本コーナーへと向かい、食わず嫌いしていた大人気作家の名前を探す。出版社ごとに分けられ、所狭しと並んだ背表紙を目で追う。 ここじゃない、ここでもない、置いてないかもしれないな…

わたしがあなたのペットだった頃。

「君は年が離れているから、恋人って感じがしないね。セフレってほどドライでもないし。なんだろうね」 ストーブの灯りで橙色に染まったその人の肌に触れながら、すこしだけ考えて「それならペットでいいですよ」と答えた。 男は肩まである自分の髪を邪魔くさそうに束ねて、いいねそれと笑った。 恋人ではない男のベッドで寝るなんてはじめてだった。 意外と平気。わたし、なんにも傷ついてない。 ベッドで過ごした数十分は、過去の恋人たちとしてきたのと変わらない、ただのセックスだった。 窓の外は雪

それはもう、ただの好きな人だよ

そんなことない。そんなことないと何度も何度も自分の中で答えを探す。けれども、私が欲しい答えは見つからなくて、ただただどろっとした黒いかたまりが心から漏れ出ているだけだった。ぐるぐると回る回る回る… そうやって考えている時点で答えは出てるじゃんか、と友人は言う。まだ割り切れるもん、と壊れたおもちゃのように繰り返す私に、彼女は何度も食い下がる。 ずっと未読だったLINE。勇気を出して再送した私のメッセージには、仕事が忙しくて返信できないとの返事があった。そうしてそれから、返信

結婚したかったかもしれない幼なじみの近況

が、急にFacebookで流れてきてハッとした。 ワールドワイドなあいつらしく、何度目かの海外旅行に出かけた写真が複数掲載されていた。 ていうか、Facebook開いたつもり、まったくなかったのだけど。 スマートフォンの誤作動でいつのまにかFacebookの新規投稿画面が開いていて、 しかも謎のひらがな呪文が羅列されていて、 あやうく乗っ取りみたいな投稿をしてしまうところで、 やれやれと慌てて投稿画面を閉じたら、 レンの知らない写真が目の前に表示されていた。 幼なじみ

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