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ヒナドレミのコーヒーブレイク    ぶらり途中下車の旅

  こんにちは、ヒナドレミです。夏は駆け足で過ぎ、まもなく秋がやってきます。こうして季節は巡っていくのですね。今回は『ぶらり途中下車の旅 』です。

             ぶらり途中下車の旅

 その時私は、列車に乗っていた。普段は乗ることのない、車両が2両しかないローカル線だ。私の乗っている車両には、背中に大きな荷物を背負った年配の女性の他、女子高生、地元のおばさまたちなどが乗っていて、乗車率は5割ほどだった。

 目的地を決めずに、私はこの列車に乗った。空席もあったが、私はドアの前に立ち、ドアの窓から見える景色に目を凝らしていた、進行方向に向かって右側の景色に。そして気になるモノがあったらその次の駅で降りようと思っていた。

 始発の駅から4つ目の駅を過ぎ、5つ目の駅に着く直前にそれはあった。(あれは何だろう?)赤い小さな、見逃してしまいそうな橋の先に白っぽい色の何かがあった。(建物だろうか?)私は次の駅で降りた。

 駅前の周辺案内図を見るとそこは『○○採石場跡』となっていた。『○○跡』に目がない私は「これはもう、行くしかない!」採石場跡を目指して歩き出した。

 今、私の目の前には採石場跡がある。これ以上ないような青空と緑の森をバックに、グレーがかった白い巨岩が建築物のように建っていた。その迫力に、私は一瞬 飲み込まれそうになった。ここで大量の鉱物が採掘されていたのかと思うと、不思議な気がした。そして今その場所に自分がいることに感動を覚えた。

 近づいて、岩にそっと触れる。太陽の日差しで、外側の岩は熱を帯びていた。巨岩は、硬く荒々しいたたずまいで、時を超えてその場所にあった。採石場だった頃の背景、跡となって廃れてしまった今現在を思うと、やりきれない心境になる。時を経た岩は、ほのかに歴史の香りがした。                                            

                                完

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