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木皿 泉『さざなみのよる』の一文に救われる

約3年前、わたしが21歳のとき、突然父が他界した。あの日以降、わたしは父のことを「帰ってこない旅に出たみたいだ」と思っている。

燃えて、消えて、骨になった。
もう父はこの世にはいない。だけど、本当は今もどこかを旅しているんじゃないかと思うことがある。もう二度と、帰ってはこないけれども。

そう思いつづけて約3年。
偶然読んだ、木皿 泉さんの『さざなみのよる』という本に出てきた一文に、わたしはふと救われた。

ずっと同じ場所にいたのに、二人でずっと旅をしてきたような気持ちだった。
木皿 泉『さざなみのよる』120頁

そっか、わたしは父母兄との4人家族で、毎日同じ場所にいたけれど、きっと毎日旅をしていたんだなあ、と。
だけど、旅には別れが付き物なのかな。
兄が一人暮らしをはじめて、父が亡くなって。わたしも一人暮らしをはじめて、残された母も一人暮らしになった。

4人で歩いていた旅が、みんなそれぞれ、一人旅になったんだなあと。
時々寂しいよ、だけど、案外楽しくやってます。

お父さんの旅はどうですか。
どんな景色が見えますか。
いつか、わたしの旅が終わる時には合流してね。

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