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【無名人インタビュー】初めてインタビューを受けた音楽プロデューサー

「無名人インタビュー」マガジンで過去インタビューも読めますよ!

今回ご参加いただいたのは 五十嵐健太郎 さんです!
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▷イントロ

今回の参加者である五十嵐さんと初めてお話したのは、Clubhouseというアプリの中でした。
音楽プロデューサーである五十嵐健太郎さんは、いったいどんな方なのか。
お楽しみください。

1、インタビューに参加した理由

有島:どんなインタビューにしましょうか。

五十嵐:自分の個人名がすごい知られたい人ではないので、普通で良いのかなと思うんです。経歴とか趣味とかを話すのがめんどくさいというか。いろんなことをやってるんで、そういうのがまとまると、楽かな。(笑)

2、二足の草鞋

有島:今、何をやっていらっしゃるんでしょう。

五十嵐:お仕事だと、自動車の販売卸、プラス、音楽プロデューサーですね。音楽プロデューサーは、若い人たちのスタートアップというか。音源制作のお手伝いとか、若い作家さんと若いアーティストさんの中継ぎみたいなこと。自分自身も曲を書いたりします

有島:自動車のほうは、仕入れからみたいな感じで

五十嵐:自分自身がサラリーマン時代に自動車メーカーにいたので。会社を辞めたときに技術的なことに関しても、商売的なことに関しても、スキルがあったんです。

有島:自動車の販売と音楽プロデューサーとしての活動について、どちらに比重がありますか。やっぱり音楽プロデューサーとして?

五十嵐:気持ち的には音楽のほう。自動車って、車を買うっていう話がそんなにしょっちゅう出てくるわけでもないし、車種や仕様がもし決まってたとすると、その球が出てくるまで待ってなきゃいけない。音楽っていうのは、決まった仕事とかじゃなくても常に追求をしたりするので、時間的はそれなりにかけるというか。

有島:なるほど。

五十嵐:あと、今は車の取引自体もオンラインでできてしまうんで。今、パソコンをデスクに2台並べてるんですけど、音楽と同時にできてしまう。車の場合、待ってなきゃいけないんで、その間は何もやることがないんです

有島:車は要望が出てきてからはじまる

五十嵐:そうですね。音楽の場合、要望が出てくる前に、こういう曲あるんだけどどうかなとか、こちらから提案していくことが多い。そこら辺の仕事へのスタンスが逆軸です。

有島:なるほど。

五十嵐:車ってけっこう機械物だから壊れたりするんで、アフターフォローみたいなものが必要な場合もあります。体力を使うので、年齢もあって大変なことがあったり。

有島:具体的には、修理とかをされてるわけではない?

五十嵐:簡単な修理ならできちゃうし、深刻な修理だと、たとえば引っ張りに行ったりだとか。応急的にどこかの工場へ入れたりとか、そういう手配もしてあげなきゃいけない人も中にはいます。

有島:手配までやるんですね。

3、シンプルな音楽を好む

有島:音楽は、最初の記憶でどの辺からはじまっていますか。

五十嵐:思い起こすと、当時、おっきなステレオがあったんですよ。レコードがあって、おっきなスピーカーがあって。そこで「およげ!たいやきくん」が流れていた記憶はあるんですよね。

有島:そのあとは。

五十嵐:小学校に上がる前とかに、ピアノを習わされたんですよ。まだ子どもだったんで、バイエルとかやった記憶が薄々あります。でもピアノは、ほぼ弾けない。

有島:どれくらいやってらっしゃったんですか?

五十嵐:たぶん、一年ぐらいで辞めちゃったような気がするんですよね。そのとき船橋市(千葉県)に住んでたんですけど、小学校2年ぐらいで八千代市(千葉県)に引っ越したんですよ。そこら辺で、やってたことっていったんリセットされちゃってるから。

有島:環境が変わってっていうことですかね。それが最初のころ、お子さんのころの音楽体験。

五十嵐:そうですね。そのあと、CDじゃなくて僕らの時代はまだレコードだったんですけど、初めて買ったのはレベッカだった記憶があります。その当時は、カセットテープでラジオから流れてる曲とか、テレビから流れてる曲を録音して聞く、みたいな風潮はあって。

有島:歌番組、あのころいっぱいありましたよね。

五十嵐:僕の世代は、みんな「ザ・ベストテン」とか見てたんじゃないですかね。
好きな曲が流れてるときにカセットテープで録音して。(録音の)スイッチを押さなきゃいけないから、ガチャって。あ、タイミング逃したみたいな。

有島:うんうん。

五十嵐:あんまり音楽の種類はなかったですよね。バンドって言っても、サザンとかゴダイゴぐらいしかなかったし。それぐらいしか有名なバンドっていなかったような気がして。その当時はまだ、演歌とかの歌謡曲とか主流だったし、今みたいに情報が多いわけではなくて、本当にテレビに出る人たちが全てだった

有島:そうですね。

五十嵐:中学ぐらいになるとラジオに目覚めて、すごい好きになりました。その当時、確かJ-WAVEができたのが89年とかでしたっけ。FM局を聞くとおしゃれな洋楽が聞ける。ませガキ独特の考え方で、君らと違ってイケてる音楽を聞いてるんだぜっていう感覚で聞いてました。(笑)

有島:その話を誰かとしてたんです? 昨日、こんなのかかってたよとか。

五十嵐:音楽意識高い系の子とかは、確か何人かいたりとかして。これ聞いた? というような話はした記憶があります。中高ぐらいはそういう感じで、ラジオで ディグる みたいなのは、あったかもしれないですね

有島:なるほど。

五十嵐:中学の途中ぐらいで、ちょうどCDというメディアが出はじめて、オーディオがブームになりました。貸しCD屋さんみたいなのができて、いろいろ借りてくるのが楽しみになってた時期がありましたね。

有島:どこで借りていたんですか。

五十嵐:確か、学習塾に行ってて、そこの近所にありました。昔、TSUTAYAとかのチェーン店がなくて、個人商売のレンタル屋が多かったんです。すごいちっちゃいところで1枚1枚見て、これ良いかな、あれ良いかなってやってるのが楽しみでもあって

有島:それも洋楽ですか。

五十嵐:比較的洋楽が多かった気がします。ちょっと変わってるんですけど、子どものくせにクラシックとかもそこそこ好きだったんですよ。バッハやベートーベン、古典派とか言われるあたりでしたね。

有島:バッハはどのあたりがお好きだったんですか。

五十嵐:「G線上のアリア」ってあるじゃないですか。あそこら辺がすごく好きでしたね。バッハの曲ってかなり和声的というか、あんまり変なことやってなくて、聞きやすい音楽。ベートーベンの初期の音楽とかも通ずると思うんですけど。当時は何々派とかってあるのも全然知らなかったし。今、分析してわかるのは、古めといわれるクラシックが好きだったんだなと思います。

有島:なるほど。

五十嵐:新しいものでも、20世紀の作曲家のラフマニノフとかみたいに、古典派とかバロック時代のものをやってるのが好きだったし。

有島:さっき仰った、聞きやすいとか。

五十嵐:そうですね。「G線上のアリア」は比較的テレビとかのBGMで使われる曲だから、これは何て曲なんだろうっていうところですよね。今、スマホでメロディを聞かせて検索できる機能があるじゃないですか。当時そういう機能があったら、そればっかりやってたと思う。

有島:テレビを見ている中で、そういったBGMに使われている曲を、これ良いな、みたいなところから

五十嵐:いろんなことに興味があって、気になったことは詳しく知りたいみたいな癖が、小さいころからあったんだと思います

有島:それで調べていったら、バッハとかベートーベンだったんですね。ベートーベンだと、どういう曲がお好きなんですか。

五十嵐:「悲愴」。「G線上のアリア」も似てるかと思うんですけど、ちょっとシンプルな感じが好きですかね。

有島:五十嵐さんの中のシンプルってどんな?

五十嵐:ひとことで言うと、複雑なコードを使ってなくて不協和音も少ない。今にも通じるんですけど、僕、不協和音苦手なんですよ。ジャズとかって不協和音多いから、あんまり好きじゃないんです

有島:そうなんですね。

五十嵐:聞くときもあるんですけど、あれは聞く音楽じゃなくて演奏する音楽だって、僕、言ってるんです。半音でぶつかってるところがけっこうありますけど、そういうのが苦手、気になるっていう、耳が痛いってなりがちです。

有島:へえー。

五十嵐:ピアノが発明されるまでは、音楽史において不協和音っていうのはあんまり出てこないんです。ピアノが発明されて、一人で全音域を弾けるような時代が来たことによって、不協和音がかなり一般的になった。

有島:なるほど。

五十嵐:ベートーベンの時代ってピアノが発明されたばっかりだったから、まだ古典的と言われるようなクラシックが多かったんだと思うんです。それ以降のショパンだとかになってくると、全然波が変わってくる。ショパンとか好きな人は多いですけど、僕は全然なんです。

有島:不協和音が苦手っていうのは、どういうところから来てると思われます?

五十嵐:いや単純に、聞いて心地が悪いから。名前の通り不協和音ですから、それは気持ち悪く感じるコードなんで。意図的に作られた不協和音もあるし、偶然、他の楽器との兼ね合いでぶつかってることもあるし、そこは難しい解釈ですけど。単純に心地悪いって思っちゃうんです。

有島:テレビで音楽を見ていた小学生時代とかも、不協和音ってもうすでに苦手だったんですか。

五十嵐:たぶん小学生ぐらいのころはわかんなかったと思うんです。
洋楽も、70年代、80年代ぐらいまでは、比較的不協和音が少ない気がするんです。単純な三和音の曲とかが多い。今みたいに、ジャズとかでなければ、ディミニッシュとかそういう、ヒヤッとするような和音ってあんまり使うことがなかったと思うから。

有島:それが気になりはじめたのが中学ぐらい。

五十嵐:自然に避けてたんでしょうね。そういう理論的なこと覚えたのは大人になってからですから。聞いても、ちょっと違うなって思ってた感じです。

有島:さっきのクラシック以外だと、やっぱり洋楽が好きだったんですか?

五十嵐:あと映画の劇伴とか好きでしたね。クラシックっぽい、のろりとした音楽のほうが聞き心地が良いというか。
音楽って、歌ものばっかりじゃないっていうところで、作るほうでは、いまだに歌詞が苦手っていうところもある

有島:そうなんですか。

五十嵐:ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年)の音楽、すごい好きでしたね。大人の人が子どものころを思い出して、みたいな映画だったんですけど、当時は郷愁感みたいなのがわからなかったんですよ。でも音楽だけは、ものすごい良かった

有島:そういうところなんですね。

五十嵐:あれは作曲者がモリコーネさんっていう巨匠で、去年お亡くなりになった方なんですけど。昔ながらの手法の、すごくクラシカルな感じの劇伴。それこそスキャットさんと逆軸みたいな、そういうやさしい感じの音楽だったので、すごい好きでしたね。不協和音じゃない、あるいは少ないっていうのが好きですね

スキャットさんとは、五十嵐さんと有島の共通の知り合いであるスキャット後藤さん(音楽家)のことです。

有島:「ニュー・シネマ・パラダイス」をご覧になったのは、おいくつぐらいのときですか。

五十嵐:覚えてないですが、中学生ぐらいだったと思います。「スター・ウォーズ」のテーマだとか、クラシックとかオーケストラも好きでした
逆に、流行りものに関しては正直、あんまり覚えてないです。有名なバンドとかは覚えてるんですけど、どの時期だったかっていうのは思い出せないです。

有島:そうなんですね。

五十嵐:大人になって知ったんですけど、中高ぐらいのころは、AORっていうのがすごく流行った時期があって、そういうジャンルが好きでした。聞きやすいロックみたいな、R&Bテイスト。バンドサウンドなんだけど、ちょっとブラックミュージックも入っているよ、みたいな音楽。派手なサウンドじゃないっていうのが、クラシックも含めて一貫してるかもしれない

有島:なるほど。

五十嵐:高校ぐらいになってたかな、AORとかが好きだったから、軽音部とか興味なかったんですよね。エレキギターとかが前に出てきてジャラーンていう感じではない音楽だから。
シンセサイザーとかをけっこう使ってたりとかしてたんで、当時の日本のコピーバンドをしてる人とかは、プロの機材じゃないと不可能だったと思うんです。そういう意味では、やる側(演奏する側)になろうと思うと、ちょっと金銭的に不可能というか。当時、音楽系の教育とかもピアノ教室ぐらいしかなかったから、習いに行くところもなくて。

有島:作るほうっていうのは、高校生ぐらい?

五十嵐:いえ。そういう機材は高校生だとバイトとかしないと買えないから、持ってなかったですよね。だから、大学生とかで遊び程度で。ちゃんとやりはじめたのは、35歳以降です

有島:なるほど。

五十嵐:当時はソフトとかが今のようにないから、僕らの高校時代だと、完全に譜面で作曲するしかなかった。技術的に不可能でしたね。

有島:機材を揃えたりしてから、本格的に。

五十嵐:でも作曲っていうよりかは楽器好きだから。作曲したいってすごい意識したことは、そんなにないです。
楽器は、30過ぎだったんでピアノよりかはギターのほうが良かろうって感じで。

有島:なるほど。

五十嵐:シンセサイザーとかは、ちょっと趣味でいじってたんですけど、作曲はちょっと。サラリーマンだとか子育てだとか、そういうのがあったから、そんなに音楽はしてなかったですよ。

有島:趣味の感じで、シンセを触ったりとか、音楽をお聞きになったりとか。

五十嵐:自動車関連だったので、移動中は音しか聞けないわけですよ。車を運転している時間が仕事の中でも多かったから、聞く量っていうのは、普通の生活してる人より圧倒的に多い。そういう意味で、音楽自体は、やってなくてもすごい身近だったんです。あと、一時期、カー用品をやってた時期があって、カーオーディオの取り付けとかもやってたんですよ。

有島:そうなんですね。

五十嵐:カーオーディオは、販売するにも取り付けするにも知識や技量が必要なので、できる人ってあんなりいなかったんですよ。オーディオ周りの知識がけっこうあったっていうのも音楽と密着していました。来る営業マンも、音響機器メーカーみたいな人が多かったから、レコード会社の親会社的なところと取引してることが多かったです。

有島:なるほど。

五十嵐:そういった意味では、プレイヤーではなかったけど、近いところにいました

4、音楽を作る 〜プロデューサーへ〜

有島:サラリーマンをそれなりの時間なさっていて、35歳以降に音楽を本格的にという。外から見ると、すごい大転換みたいに見えちゃうと思いますけど、どういうきっかけで。

五十嵐:35の時点ではちょっと趣味で、ギターやいろんな楽器をやろうぐらいな感覚だったんです。当時、僕が35ぐらいになると、打ち込みっていうのが音楽では一般的になってて。シュワンとかホワンとかボワンとかそういう音って何で出るのかなと思ってたら、Cubaseというソフトでやってるらしいと。

有島:なるほど。

五十嵐:僕がそのCubaseを知ったときは、まだ10万ぐらいしてけっこう高かったんですけど、何年かしたら7、8万で買えるようになったんです。Cubaseって作曲をするソフトではあるんですけど、僕、間違って買ったんですよ。

有島:えっ、最初は何の?

五十嵐:Cubaseっていうのは、よく説明として「シーケンサー」と書かれているんです。シーケンサーっていうものが自動演奏の装置っていうのは知ってたんですけど、その用法の一つとして、シュワンとかホワンとかボワンとか、いろいろ変な音を鳴らせる。どうやらこのソフトを入れれば、楽器を鳴らした音を変化させることができる機械なんだと勘違いして

有島:なるほど。

五十嵐:作曲ソフトを勘違いして買うという感じですね
それを買ってきてとてもびっくりしたのが、滅茶苦茶簡単に作曲ができることに気がついてしまって。楽器経験とか音感とかが若干あれば、誰でも簡単に作れる。それを買った楽器屋さんに「何これ」って言ったんです。そしたら、楽器屋さんとか知ってるわけだから、何を言ってるんですか五十嵐さんって。(笑)

有島:逆に言われちゃったっていう

五十嵐:作曲、誰でも簡単にできますよって言われて。え? って。特殊技能でも何でもないんだと思って
楽器屋さんは楽器屋さんでびっくりしてるんだよ。けっこう楽器を買ってたんで、五十嵐さんほどの人が知らないなんて思いもしなかったですって言ってて。(笑)

有島:そうだったんですか。

五十嵐:でも、簡単すぎるがゆえに、音楽制作はつまんねえぞってなっちゃったんです
買って1年2年は面白がってたんですけど、だんだん飽きてきちゃって。そういうのは今、新しいことやってる人はいくらでもいるから。

有島:なるほど。

五十嵐:むしろ余計、楽器への愛が深まったんですよね。音楽自体が生の演奏でっていうのが、割合的にはもう少ないから、そっちのほうがより好きになったり。打ち込みだと、どうしても派手なサウンドが多いじゃないですか。歳とってくると、だんだん弾き語りとかでいいんじゃんってなって、音楽の趣味が変わってきましたね。

有島:今、作曲はソフトじゃなくてギターで?

五十嵐:ソフトでやってます
若い人とかでも理解されなくて困ることが多いんですけど。今は、生楽器を録音するにも、打ち込みのソフトを使ってやるんですよ。打ち込みとオーディオ、MIDIとオーディオっていう言い方をするんですけど。DTMのソフトっていうのは、生の録音もできるんですよ。

有島:なるほど。

五十嵐:弾き語りの人もソフトを使うわけです。そのソフトを持ってるのが(作曲を)やるやらないの大前提みたいなところがあるし。たとえばアカペラで録音するのも、DAWのソフトを使うのが一般的なんですよ。お仕事的には、ソフトを使える人と使えない人をくっつけるみたいなことがすごく多いですね

有島:プロデューサーとしてはそういう側面もあるんですね。

五十嵐:(ソフトを)使えない人っていうのは、ただ弾き語って、自分で作ったオリジナル曲が、弾いて歌って終わりな状況になってるか。あるいはスタジオとかにわざわざ行って、高いお金払って、エンジニアとかに作ってもらうしかないわけです。実は自分でできるんだよって。あとは若い人にギャラを払えば格安でできるんだよ、みたいなことはお伝えしてます

5、不協和音について

有島:今、音楽を作ってらっしゃる方って、お仕事だから好き嫌いは別にあるのかもしれないけど、なかなか不協和音苦手って仰るのって聞かないような気がします。お立場上、言えない方もいらっしゃるのかもしれないですけど。

五十嵐:不協和音って、さっきの話と似てるんですけど、好き嫌いとはまた違う基準になって。不協和音だから、うわって反射で反応してしまう。通常で言う好き嫌いとは別軸だと思うんですよね

有島:なるほど。

五十嵐:それこそスキャットさんみたいな劇伴作家さんだと、不協和音の効果みたいなのはすごくご存知だと思うんです。こういうコードが鳴ると不穏であるとか、緊張感であるとかって。コードとしての名前が認められているものでも、不協和音ってあるんですよ。どこからが不協和音なのかっていうところもまた、解釈が難しいところで。本来であれば三和音って言われる和音以外は、不協和音なんです

有島:そうですね。

五十嵐:普通にメジャーセブンスとか聞く限りは別に、それぐらいなら良いかなってなるんですけど。
新人さんとか、はじめたばっかりの方って、発明をしたがるから、人とおんなじことやっちゃダメだって意識が働きすぎちゃって。これ、なんでディミニッシュばっかりあるの、みたいなコード送ってきて。これ、気持ち悪くって誰も聞かない。面白いですよ。

有島:そういう方もいるんですね。

五十嵐:コードとメロディですけど、ギターってコードだけで弾くからコード進行、ギターを弾く人は気にしすぎちゃう。ディミニッシュからのマイナーセブンスからのマイナスファイブ(マイナーセブンスマイナスファイブ)とかやられると。それ、この遅いテンポでこれやったら、気持ち悪いだけだよって。
明らかに誰が聞いても気持ち悪くなってるから、それって感性の問題なんですよね。感性として才能がないっていう

有島:なるほど。

五十嵐:音が少ない音楽をより聞くようになってから、楽器が少ない分、余計によく聞こえるようになったんですよね。不協和音、若いときはそんな嫌いじゃなかったです。

有島:そうなんですね。

6、これからのこと 〜野心〜

有島:今後は、たとえばプロデューサーとしてこういうことやっていきたいとか、車のほうのお仕事は、こんなふうに持っていきたいとかってございますか。

五十嵐:音楽にしても車にしてもそうなんですけど、今はネットである程度完結できてしまう時代がゆえに、専門性はもたせていきたいなと。車に関しては、介護車両にすごい興味を持っています。でも、正直今の時代、車なくても生きていけるじゃんっていう人、すごい増えちゃってるから。

有島:そうですね。

五十嵐:僕が若いころに比べると、車の重要度がものすごく社会的に減ってるので。
あと、人生のバランスで、より好きなのは音楽だから。子どもも来年二十歳だし、家もあるしという中で、人生の中での大きな出来事はもう終わってるがゆえに、好きな音楽をもっとやりたいなっていう思いは強いですかね

有島:これからもどんどん音楽のほうで

五十嵐:ただ、自分が思ってるのは、さっき言ったソフトの出現によって作曲がすごく簡単になってる。今やもう、スマホにすらそういうソフトが付いてますから、作曲って、もうやるかやらないかだけなんですよね。難しい技術は何も必要がない時代です。

有島:なるほど。

五十嵐:誰でもできるがゆえに、付加価値のある音楽と、そうでないものっていうのの差別化っていうのには力を入れていきたいです。そういったソフトがあるんだよっていうのを、デジタルに弱い人が多いので支援をしていきたいなって。どちらかというと、裏方志向が強いですね

有島:さっき仰った差別化のための付加価値っていうのは、五十嵐さんの中では、具体的にどういったことなんですか。

五十嵐:実は見えてないんですね
っていうのは、さっきのソフトの話とかあったと思うんですけど、テクノロジーの進化。音楽売るときの低価格化だけじゃなくて、作るのも低価格化されてる。急にこの2、3年ぐらいの風向きとして、さっぱりわからないっていうふうになってきちゃってるから。

有島:なるほど。

五十嵐:昔だと成功するにはこういう順番があってっていうのが、通用しなくなってきてるのでわからないです。たとえばTikTokとかに10秒ぐらいの弾き語りだけのちょっとした動画を上げただけで、すごく大ヒットしたりとかしてるぐらいだから。

有島:そうですね。

五十嵐:音楽のクオリティが高いから売れるとかそういうのは、まったく今ないので。
音楽の良心というか秩序というか、伝統を守ったり伝えていきたいみたいな野心はあります

有島:野心。

五十嵐:今、それこそスマホとかパソコンとかに付いてるんですけど。自分でレコーディングして自分で売るっていうところを全部一人でできるから、自己満足のものがすごく多いわけです。それに対して外からの意見、大人の意見っていうのが必要になる場合もあるから、そういうとこに市場の隙間があるのかなと

有島:なるほど。

五十嵐:歌いたいとか演奏したいとか、そういうミュージシャンやプレーヤー、アーティストはけっこういるんですよ。その一方で、作曲したいっていうクリエイターもいっぱいいる。そうすると、中間でつなぐ役とか、マネージメントとか、プロデュースだとか、販売の専門家みたいなのって全然いないわけですよ。その辺は自分がサラリーマン経験があったせいで、そこの部分が生かせるかなと思って。そこを重点的にやっていこうかな、とは思ってます

有島:そこをやるときに、さっきの野心みたいな

五十嵐:そういう、ただ新しいだけじゃなくて、きちんとしたものがわかるかどうか、わかってやってるアーティストとかを育てていきたいなあと思ってます。今、時代がYoutubeとかありますけど、Youtubeばっかり見てやってっていう人だと、ちょっとそれは違うんじゃない? みたいな意見はしたくなるし。

有島:最後に、今日のインタビューで言い残したことはございますか?

五十嵐:一つ言えるのは、音楽がこれからどうなるかっていうのが、先行きがわからない時代ではあるより音楽の深みみたいなのを知ってほしいなと、若い人には感じます。ただ楽しいだけではないし、仕事と趣味が曖昧になっちゃってる人がすごく多くて。たとえばYoutubeとかで簡単にお金が作れるっていう仕組みがあるから、それで満足しないでほしいなっていうことです。逆に、ある程度技術がある人であれば、プライドとかで今まで通りのやり方をしてると辛くなってくるんではないかなって思います。

有島:五十嵐さんが思う音楽の深みって

五十嵐:ひとことで言うのは難しいんですけど、好き嫌いで良い曲って言う人がいるから、音質が良い悪いみたいなものとか、クオリティの上下がわかるっていうのは大事かなと思います。最終的には各論になるんで好き嫌いで良いんですけれども。ただ、やっぱり質が高い、そうでないっていうのは判断できる能力がないといけないと思って

有島:なるほど。

五十嵐:曲を聞いて、これお金かかってるなって、そういうことに気づくかどうか。今、スマホで聞くのが当たり前になって、音質がどうでも良くなっちゃってるから。自分に都合の良い情報しか入ってこない人が多いかなって思います。クオリティの高低。奥行きっていうか、深みというか、情緒というか、非常にニュアンス的なこと。ニュアンス的とか技術的とか両方になるんで

有島:そうなんですね。

五十嵐:いろんな音楽もあるし、そういうの認めた上で自分がどうありたいかみたいなところ。自分のやってることだけ正義みたいなのもおかしいし、自分が好きなものだけ正義みたいなのもおかしいと思うんです。最終的には個々を尊重した上で、お互い高め合うようなのが必要なのかなと
利己的な人は生き残れないかなと思います。今の話に通じるかどうかはわかんないですけど。

有島:なるほど。
今日はありがとうございました。

五十嵐:インタビューは初めてなので、これも経験の一つだと思って楽しみにしてます。

有島:ありがとうございます。失礼いたします。

▷アウトロ

不協和音が嫌い、シンプルな音楽が好きと静かに話す五十嵐さんの言葉が、とても印象的でした。
記事の中で感じていただたなら、幸いです。

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