ローレン・イロアスの「マ?」はいとをかしではあるよ
ある日YouTubeをつけたら、にじさんじ所属ライバー、ローレン・イロアスさんのライブ配信がトップ表示されていた。
当該配信のタイトルが変わってしまっているので動画は載せないでおく。
そして変わる前のタイトルをあげつらうのは絶対に違うのだが、許してほしい。これのタイトルは
「或世イヌPUBG初見マ?」
だった。
(配信自体は見ていない、ごめんなさい)
それのタイトルをみて私が思ったことはひとつ。
「惜しい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
ローレン字足らずマ〜〜〜〜〜〜〜?!」
途中までほぼ川柳だったのだ。
めちゃくちゃ惜しい。
ところが思ったのだ。
川柳の最後の単語が感情を表す言葉で、
その言葉がバツんと切れているのは結構趣深いのではないかな?と。
いとをかしな言葉遣いについて考えてみたい。
すみません
こういう記事を書くときはありとあらゆるオタクにまずは土下座をします。
まずわたしは英米文学科でアメリカ文学と英語教育を専攻したため、古語の意味や用法についてはガバです。許してください。てかなんかあったら教えてください。(文献とか)
それから、読んでいただければわかると思いますが、本当に悪意はありません。スクリム期間はローレンさんの視点みながら寝落ちするくらいには見てます。
まあ今回のスクリム最終日鬼外出しましたが、、、(説得力に欠けるな〜!)
あとタイトル変更は或世イヌさんに対する気遣いかなと思うんですが、それを掘り起こす気はないです。この前の神域のトップの後のインタビュー、普通に泣きそうになったよ。
まず五七五について聞いてくれ
人工的に考えられたフルネームは、やっぱり言いやすいようにできているのか、5音節か7音節の名前が多い。
という調査は以下で。
1月1日時点のしかもにじさんじオンリーなので、Vtuberというくくりでサンプルを増やせばもっと確率は上がると思う。
ていうか3ksも
或世イヌ ローレンイロアス 英リサ
でまあまあ許せる川柳なんだよな。
花芽すみれ
エクスアルビオ
小森めと
ローレンイロアス
だるまいずごっど
テンパリ、短歌ではあるな。
(脳汁ドバ〜)(こるちごめん)(テンパリWIN)
閑話休題。
マ?!
これは普通に、わたしがJKのころ(10年くらいまえ)から使われているので、決して©︎ローレンではないのだが、前から「趣深い言葉だなあ」とは思っていた。
マ?!は「マジ?!」の略で、そもそも「マジ」は「真面目」の略。だから「マ?!」は「それ真面目に言ってますか?=本当ですか?」という意味になる。
始まりはテキスト入力がめんどくさいことから発生したのではないかなと予測している。
(了解を意味する「りょ」や「り」と同じく)
それが口語にまで浸透してくるのでやっぱりJKの言葉遣いはとても興味深い。
そしてこの「マ?」のなにが「をかし」なのかというと、ほとんど単語として成り立っていないのに、その会話にいる人の中でその感情を共有できる、ということ。
「マ」たった一文字に
「え、まって信じられない、それ本当に言ってる?ありえないんだけど、ウケ」
とか
「なんそれ本当に?信じていいの?」
みたいなのが含まれているのである。
古語の「をかし」や「あはれ」もそうなんだけど、結構コンテクスト依存が激しい。その場にいる人間が、その感覚を強く共有している時だけにつかえる。
だからそのコンテクスト依存の強い単語が、川柳のさいごに、字足らずでついているのは、その衝撃や面白さを伝えるのにとてもとても有効だなあ、と思ったのだ。
やっぱり冒頭の字足らず川柳、めちゃくちゃいいな。
JKの言葉の使い方についてはこちらのwikipediaもご覧ください。言葉がいかに流動性を伴うものなのか、というのがわかって好きです。
このウィキだーいすき。
なんかじゃない?
わたしはこれを発明だと思っている。
この世には「なんかなんだよな〜」と思うことがあまりにもおおい。それをそのまま口に出すというのは発明であり革命だと思った。
ただし、これもかなりコンテクスト依存だ。
その機能と特徴は「あはれ」や「をかし」にめちゃくちゃ近いと思った。
言葉にできない、ただどちらかというとネガティブで、どこか納得できないきもち、みたいなものが全てこもっている。そしてそれを共有している人との間で効果をばつぐんに発揮する。
これはすごい。
個人的には「やばい」と同じくらい、なんかまずい薬でも入っているような、危険な単語だと思う。
使いやすすぎる。
それを、ローレンさんのファンや周囲の配信者が使って、その「なんかじゃない?」という気持ちを強く共有する瞬間はかなり気持ちがいい。そのとき、全員「言語化できないけどちょっと複雑な気持ちになった」のだ。それを「なんかじゃない?」という抽象ワードで強くつなげる。連帯が生まれる。
めっちゃくちゃおもろい。
ローレンは一拍子
話すことが仕事の人の話すテンポは、四拍子か七五調か一拍子の3種類に大別されると思っている。
一拍子という概念はこれまたガバなんだけど。
たとえば、私が大好きなMリーグ公式実況の日吉辰哉さんという人は、体に七五調の血が流れていると思う。
たしかに、麻雀用語自体が、言葉を輸入した際に日本語風の発音になり、日本語話者の口に馴染みやすいように、なんとなく七五調っぽくなった、というのはあるとおもう。
ツモピンフ
嶺上開花
一盃口
役を並べるだけでも川柳できちゃうんだよね。
ただ、その前後まで反射でいっぱい五七調が出てくるのだ。めちゃくちゃおもろい。
最強戦の実況ですね。なんか気持ちいいんだよなあ。
一方で、ローレンさんはマ?をはじめとしてなんというか、ブレイクが多い。会話は流れているのにリズムは止まったり動いたりして、一拍子だなあ、と思っている。早口芸もこの一拍子から生まれていると思う。
体に流れているリズムの話なので、これは才能としか言いようがない。あとから鍛えてつくものかもしれないけど、持って生まれたものを越えることはできないんじゃないかなあ、と思っている。だからこそ、ナチュラルに生まれる五七五や、ナチュラルにリズムがジャムって笑える瞬間が愛おしくて大好きなのです。
ちなみにこの男は流れているリズムが変で一定なのでそれはまたおもろい。
なんかまぁそれだけなんだけどさ
それだけなんだけどさぁ
それが好きなんです。わたしなりの応援などの気持ちで記してみました。
「あはれ」も「をかし」もあいまいで、習ったときは「なんだそれ?」と思ったものだけど、じわじわとその感覚を獲得して、それを紡いだ人と感覚を共有するようになった。
言葉というのはあいまいで、流動的で柔らかくもろく、だからこそ人のことも傷つけるし元気にさせる、面白いツール。
わたしの母語である日本語は、多分だけどコンテクストに依存することが多い。ゆえの難しさがあるんだけど、その特徴を良しととらえて、そしてその短所も的確に捉えて、じょうずな日本語使いになりたいなぁと、今日も配信を見ながら寝落ちするのであった。
いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。