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おふくろ(?)の味

「帰国したら何を食べたいか教えてね」
数年前、アメリカ留学から日本へ帰る直前に、母からもらった連絡だ。

何が食べたいだろうか。
アメリカに行く前は、寿司とか肉じゃがとか鍋とか、とにかく「日本の家」でしか食べられないようなものを食べたけれど、約1年間の留学を経て食べたいものはなんなのだろうか。

食を題材にした記事を書いておいてどうかと思うが、食べることにあまり興味がない。だから、アメリカにいても困ることはあまりなかった。加えて、留学先は日本人がたくさん住んでいる街にも近く、食べたいものは時間とお金をかければ食べることができた。
それに、カフェテリアのサラダバーには毎日豆腐がおいてあった。
豆腐はヴィーガンフードの代表だ。

インスタントの味噌汁、豆腐、日本人のルームメイトが家で炊いてきてくれる冷凍の日本米、日本人が経営しているレストランのラーメン、海鮮丼、親子丼、近所のダイソーで買えるインスタントのうどん、隣の街のスーパーで買えるおせんべい・・・・日本食が恋しいことはほとんどなかった。

あれ?!?!?!別に帰国して食べたいものってない・・・・?
そして、一つだけ思いついた。

「あの〜・・・・卵かけご飯がどうしても食べたいです・・・」

いわゆるおふくろの味的なのを言いたかった。
ここで出てくる料理が「おふくろの味」なんだと思っていた。
卵かけご飯かよ!と我ながらずっこけてしまった。

卵を生で食べることができる国は限られているらしい。
人によっては、欧米諸国でも生食が可能だと言っているが、あまり推奨されていない。というかスーパーでの様子を見て、生食しようとは思えなかった。

自分が生まれた国では、安心して生で卵を食べられる。
炊きたてのご飯に卵をかけて、おいしい醤油で味付けして食べられることがどれだけ幸せなのか、思い知った。

帰国後、家で本当に卵かけご飯を食べた。
本当に美味しかった。
お茶碗の小ささにはたいそう驚いたが、1年間我慢した卵かけご飯は美味しかった。

「お母さんが作るアレが食べたい」とか言いたい人生だったけど、
卵かけご飯だって、立派な、誇れる故郷の味なんじゃないかな、と思っている。


#元気をもらったあの食事

いただいたサポートでココアを飲みながら、また新しい文章を書きたいと思います。