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チャリで名古屋を目指して ~箱根越え〜

最近、2回目の休学を決断した。

理由は「就職活動のため」

今回の決断は相当悩んだ。
そして、その悩みを機に少し大学時代を振り返ってみた。

地方暮らし、学園祭、自転車での日本縦断、シリコンバレーのインターン…色んなことがあった大学時代。

地方も、学校行事も、海外だって、全く興味のなかった高校時代
なんで大学生になった瞬間、そんなことをしたんだろう。

多分全てのきっかけは、大学1年の7月。

35度を毎日超える猛暑の中、チャリで千葉から名古屋に旅立った。

VS 箱根の山

2018年7月。
名古屋を目指す自転車旅2日目 神奈川県 厚木市スタート
天気は晴れ。気温は多分38度くらい。

1日目と同じく暑かったが、その日の午前は順調に進んだ。

海岸線に出て、海を横目に西に走る。
途中、小田原城に寄ったりと、観光とのバランスも取れた理想的なチャリ旅だった。

昼には箱根到着。
静岡で美味しい魚を食べるためにここでは節約して、コンビニ飯。

すると停めてあったチャリを見て、ひとりのおじさんが話しかけてきた。

「お兄ちゃん、どこまでいくの?へぇ名古屋まで…」
「遠いね…こんな暑い中。それは親御さんは心配だ…」

見た目は60歳くらいだった。
心配してるかどうかなんて気にしていなかったけど、親を経験した人からするとその気持ちがわかるのかもしれない。

でも、まだ出発して2日目。
「何があっても行く」という強気でいっぱいだったので、どんなことが怒っても大丈夫、だから心配なんてされる必要もない、と思っていた。

そんな内面を見透かしたのか、おじさんは最後にこんなことを言った。

「気をつけて行きなさい。行くのも勇気だが、辞めるのも勇気だ」

もうこれも4年前の話。
おじさんの顔も声も覚えていないが、この言葉ははっきり覚えている。

そして、去り際に2Lの水のペットボトルをくれた。
ありがたいけどこれからの山越えには重いなぁ、とこの時は思っていた。

コンビニを出て箱根の山に入る。
芦ノ湖までは国道1号で1本。
車がいっぱい向かいう方に行けば着くだろう。

上り坂は順調だった。
道が狭く、すぐ隣を乗用車やトラックが通り過ぎていくのは怖い。
でも地道にゆるゆる登っていけば、そのうち越えられそうだ。

地元の松戸はかなり坂が多い。
そんな街を普段から自転車で駆け回ってるのだから、そこら辺の人よりかは坂に耐性があると思う。

ただ気温は40度。さすがに体力は消耗する。

登り始めて30分、下り坂が見えてきた。
早くも山を越えたらしい。下り坂に差し掛かる。
漕ぐのをやめて、坂の傾斜に自転車を任せた。


自転車はゆっくりとその場に停止した。
ちょっと下りが緩すぎたか。もう一度ペダルで前に進める。


ペダルが重い。下り坂なはずなのに全く進まない。
おかしい。

自転車から手を離すと、自転車は後ろに動き始めた。

目で見た光景と起きている事象が全く逆だった。
見えているのは下り坂、でも実際は上り坂。

一気に感覚が狂い始める。
初のチャリの山登り。景色がずっと森の中だからおかしくなったのか。

そしてそこからが地獄だった。



1時間、2時間…今、上りか下りかわからない。
荷物を括り付けたチャリは全然進まない。
ふらふらの自転車のすぐ横をトラックがハイスピードで通り過ぎていく。


気温は40度近い。
気づけば、水分もおじちゃんにもらったペットボトル一本だけ。
坂の終わりがわからない。夜になっても登りきれないかもしれない。

物資が切れたらどうしよう。

夕方5時過ぎ。看板が見えてきた。


きた。

登り始めたのが12時過ぎ。
ということは5時間くらい登っていた。

一気に坂を下って、芦ノ湖に到着する。
適当に風呂を探して入って、生きていることを実感する。

水分は最後の2Lペットボトルも使い切っていた。
あの時おじちゃんが水を買ってくれてなかったら、途中で倒れていたのか、登り始めまで引き返していたのか。

でも、日が暮れる前に登り切れて本当によかった。

そんなことを考えながら湯船に浸かった。

いい野宿場所を探す気力もない。

観光用の駐車場の歩道にマットを広げて寝た。

朝起きたら、掛け布団がわりのシュラフカバーが濡れていた。
どうやら少し雨が降ったらしい。

テントも立てずに雨晒しのまま寝ていても気づかないほど疲れ果てていた。

箱根の山。
自転車を初めて2日目の初心者が、真夏に来るような場所ではない。










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