パリ、東京、行った来たり。(5)フランス語とか
無事にF氏と仲直りして、私のパリライフも復活しました。それからは、だいたい年に2回か多いときは3回パリ(正確にいうとパリ郊外、東京でいうと山手線の外側といった感じのところ)に滞在しました。この後のお話は、ほとんど時系列はめちゃくちゃになりますが、思い出しながら書いていきます。
F氏が仕事のときは、私はひとりで街を散策したり、買い物したり、カフェでお茶をしたりして過ごしました。
パリで買い物したりするときに、英語で話すと早口のフランス語で返事されるとか、通じないふりをされるとかいう話を何度も聞いたことがあります。それはたいてい、フランス旅行のネガティブな思い出として語りつがれているように思われます。私は、といえば、そのようなことで嫌な思いをしたことは実は一度もないのです。それはフランス語がペラペラだからというではないことは、未だ仏検4級ということからもあきらかです。私が直接話を聞いた人で会話で嫌な思いをした人は、ほとんどの英語がふつうに話せる人でした。フランス語は話せないけど英語が話せる人は、多分なんの迷いもなく最初から英語で話してしまうようです。もちろんデパートとかホテルとかだったら全然大丈夫。嫌な思いをすることもないでしょう。問題は小さなお店(よくある話ではなぜかパン屋さん)とか、道をきくとかそんな時です。私が嫌な思いをしたことがないのは、多分英語もフランス語も同じくらい出来なかったので、最初にフランス語で挨拶してたからだと思われます。例えば、日本で外国人に話しかけられた時、カタコトでも日本語で話しかけてくれたら好印象だと思うのです。英語ネイティブではなさそうな人がいきなり英語で話してくるよりカタコトで「こんにちは」とか言われたほうが絶対いい気分になると思います。とくに、フランス人はフランス語に対してプライドを持ってるような気がします。一生懸命フランス語を使って話そうとしているとますます親切にしてくれて、こちらのゆっくりペースに合わせてくれたりします。「英語は話せる?」と聞いてくれたりもします。
一度道を聞いた時、相手の人がこんなことを嬉しそうに言っていました。「あなた、日本から来たの?私は先週ベトナムに行ったの!すごくない?あなたは今フランス、私は先週ベトナムって!」(ポピー訳)
一瞬、どういう意味?と思いました。私はベトナムに行ったことがないし、最初なんのつながりかわからなかったのですが、だぶんフランス人から見たら、アジアというくくりで、一緒だったのでしょうね。ちなみに、中華街のベトナム料理店でも新年には、アオザイをきた美しいベトナム人のカレンダーをもらえたこともありました。パリはベトナム移民も多かったので、おいしいベトナム料理店が多いです。
カフェとかレストランでF氏と日本語でおしゃべりしていると、時々日本やアニメが好きな人から声をかけられたり、「何語で話してるの?」と聞かれたりします。日本人でいることで差別をされたり、いやな思いをしたことはほとんどありません。一度だけ覚えているのは、観光バスに乗ったときにひとつだけ空いている席に座ったら、となりに座っていた観光客の10代くらいの女の子が露骨に顔を背けて嫌な表情をしたのです。あれは明らかにアジア人に対する差別だったと思いますが、その子は観光客だったので、またちがう話かなと思います。日本人としては嫌な思いはしていないけれど、アジア人としてはあったなと思います。とくに、10年前くらいからか、パリにいるアジア人観光客で日本人はとても少なくなったと思います。私が初めてい行った頃は、アジア人観光客といえば日本人が多かったと思うので、たいていは「こんにちは」と声をかけられましたが、そのうちに「ニイハオ」や「アンニョンハセヨ」になりました。飛行機の中で見る映画の字幕も、日系の航空会社以外だと日本語字幕の映画がすごく少なくなりました。そういうことがあると、日本という国が国際的に力を失っていくのを年々実感していたような気がします。そんな中でも、私は毎年、たんたんとパリと東京を行き来していました。(つづく)
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