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パリ、東京、行ったり来たり。(7)メトロ

 パリのメトロの切符が廃止になったとどこかで聞いたか読んだかしてから、まだメトロに乗っていないけれど、次に行くときは切符ではないなにかを私も用意することになるのかなとちょっとドキドキしています。日本のPASMOかSuicaみたいなものなのかなと想像しています。   
 パリのメトロはわかりやすいと言われています。自分が目指す駅の終点の駅の表示がでている方向のホームに降りて電車に乗るのです。フランス語が読めなくても文字を見て選べるのでなんとかなります。ただ、パリ市内を出るときには、その場所までの切符を最初から買わないとならないので、そこは注意が必要です。乗りこし精算というのができないのです。私は市内を出て電車に乗ったのは、一度ヴェルサイユ宮殿に行ったときだけなのですが、そのときは間違わずに行くことができました。 
 メトロの中でのおもしろかった体験は、ある時犬を連れて乗っている人がいて、日本だったら犬は専用のバッグのようなものに入っていてそれを飼い主が運んでいるという感じだと思うのですが、その時は立っている飼い主のそばにちょこんと座っていました。そして、その犬がそばにいた私の足によりかかってきたのです。私はなんか笑いそうになりましたが、その頃はまだパリに行くようになって間もない頃だったので、笑いもせずじっとしていました。今だったら、言葉はわからなくても飼い主とちょっとにっこりしたりとかするかもしれません。知らない人とでもちょっとしたやりとりが、フランスではふつうにあったりします。 
 メトロの中は、つり革とかなかったと思います。座席はボックス席があって、その背もたれのところにちょこっとあるつかまるところ、あとは両脇の扉のまんなかに一本棒があり、そこに何人か一緒につかまります。私はそのときにその棒を片手でつかんで、もう一方の手で自分のショルダーバックをがっしりガードしていました。スリに狙われないようにです。そのとき、ガタンと電車がゆれて私の片手は棒を離してしまい、うしろにひっくり返りそうになりました。そのときに、同じ棒につかまっていた何人かが私の腕をとっさにつかんでくれて、私は倒れずにすみました。びっくりしたけど、とっさのその出来事がおもしろかったので、私は帰国したときに友人にその話をしました。でもその話を聞いた友人は、「ああ・・・」と嘆かわしい顔をしました。なぜかと思ったら、友人は東京の地下鉄の中で私と同じようになったときに、周りはけっこう混んでいたのに、さーっと人が引いて、しりもちをついてしまったそうなのです。たまたま、だと思いたいですが、なんとなくわかる気がするなというような話でした。そんなとき、しりもちつくと起き上がってからもなんとなく気まずいというか、その場にいづらいのですよね。実はその話を聞いたあとすぐに、私も同じようなことがあったのです。その時私は座席に座っていました。ちょっとだけ離れたところにお年寄りが乗ってきたのですが席が空いてなかったので、私はたちあがって譲ろうとしました。そのときガタンと電車が揺れて、なんと私はお年寄りのところにたどり着く一歩手前で盛大に転んでしまったのです。そのときの私の立場のなさといったら!まわりの人は見て見ぬふりどころか、誰もまるでなにも起きていないように、私だけがそこで観客のいない一人芝居をしているようでした。もしこれがパリのメトロの中で起きたことだったら考えたら、絶対に私はこんな恥ずかしい気持ちにはならないで、周りの人が笑ったり声をかけてくれたり、転んだ私の手を引っ張って起こしてくれたりしたのではないかと思うのです。そして、それをまた私は友人や家族に楽しく話したのではないかと思うのです。
 パリと東京と行き来していて、いろいろ違うところを発見して、なんでもフランスのほうがいいだなんて思いません。日本の方がいいと思うところももちろんいっぱいある。だけど、ちょっとした人のあたたかさというところでは、どうしてもちょっと日本はさびしいなと思うことが多いです。日本人のそんなところを、シャイだからとかいう人もいて、たしかにそう思うこともあります。だけどもしそれがほんとだとしても、だったらそのシャイの壁を壊す努力をちょっとだけしたほうが、日本全体が少しずつあたたかくなるのでは?私はと思うのです。


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